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2008年12月29日更新!


連載第2回:プロジェクト21C それはサンライズ・井上氏が提唱する本気の“遊び”



 GA Graphicでは、サンライズが提唱する「プロジェクト・スコープドッグ21C」を4回の連載形式で紹介していく。

 今回の特集にあたり、プロジェクトに関わった人物たちに直接取材を行った。中心となったのは1983年のTVシリーズ「装甲騎兵ボトムズ」において設定や考証を担当していた井上幸一氏(サンライズ)、造型師の小松原博之氏、イラストレーター・メカデザイナーの片貝文洋氏ら3人(当然ながら高橋良輔監督に監修としてご意見番をお願いしている)。

 今回の第2回では、プロジェクト・リーダーでもある井上氏に21Cプロジェクトの持つ意味を聞いた。

◆ ◆ ◆

──何故、今、スコープドッグのデザインを見直すなどの企画が行われたのか? プロジェクトの発端を教えてください。

 もともとは、ボトムズ生誕20周年の頃(2004年頃)、スコープドッグでなにかやりたいね、というところからスタートしました。僕は、スコープドッグのマーキングの実物大ステッカーを作って車に貼ったりしたら面白いかな、と常々思ってたんですが、プラモなどに付いているマーキング類は、実は正式に設定が決まっているものじゃないんです。そこで、「マーキング」を設定しよう、というところがスタート地点でした。

──2004年というと、OVA「ペールゼン・ファイルズ」の企画と連動していたのですか?

 いいえ。OVA企画の遥か前からですね。発端は映像作品のための設定作りではなくて、あくまでも自分たちの興味からスタートしています。それが、今やここまで発展した。こうして拘りを持った人たちが集まってプロジェクトが大きくなっていく過程そのものを、自分たちも楽しんでいます。

写真!
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──マーキングを作る、という発想がどのようにプロジェクトの誕生に結びついたのでしょうか?

 1/1ステッカーを実際に作れる大きさにしたかったのですが、運の良いことにスコープドッグの場合、1つのマーキングの最大サイズはA3までに収まるんです。しかし、いざスコープドッグのマーキングを決めようと思うと、内部構造が分からなけばならない。マーキングは飾りではなくて、コーション(警告)であったり、説明書きであったり、その場所に貼られている意味がはっきり決まっています。だから、これは内部構造をちゃんと決めないとダメだねぇ、ということになったんです。

 ボトムズが好きな人たちって、ものすごく真面目な人たちで、ミリタリー関係に造詣の深い人が多い。だから、コーションシールを作るだけとはいえ、いい加減なものを用意してもきっと見向きもしてくれないだろうと思ったんです。そこで、きっちりと内部構造を考証するために、メンバーを集めました。

──そこで選ばれたのが、小松原氏や片貝氏だったんですね。

 今回のメンバーの選定で時に意識したのは、あまりボトムズに“入り込んで”ない人に声をかける、ということでした。ボトムズに入れ込んでいる人は、自分の中に既にもう“俺タコ”(タコ = スコープドッグのこと)ができあがっているでしょ。だから、できる限りプレーンで、中立の立場で考察できる人が必要だったんです。

──21C型、という設定はどういった経緯から生まれたものなのでしょうか?

「ザ・ラストレッドショルダー」(1985年OVA)主人公のキリコが劇中で、このスコープドッグはタイプ20だ、というようなセリフをいうシーンがあります。その時に、「あ、この世界にはいろいろな型のスコープドッグがあるんだ」ということが分かるわけです。でも、その20型を作ろうとなると、画面の中での描写に縛られてしまう。あくまでもスコープドッグという枠組みを超えない中で、敢えて画面に出ていないものを作りたかった。21型のタイプC、「21C型」というスコープドッグもあったのでは? と想定したのです。

写真!
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──これがサンライズが打ち出した“公式設定”ではないと?

 そうです。今までのデザインやプラモデルにあるデザインを否定するのではなく、あくまでATM-09STスコープドッグの生産バリエーションの1つである21C型を考察したのです。

 戦車や戦闘機など、現実の兵器でも、初期の生産分と後期のものでは全く別もの、ということはよくあります。型番が違っていればかなり分かりやすい方で、中には同じ形式でも中身が少しずつ違ったり、とかね。スコープドッグにも、そういうのがあってもいいし、恐らくあるだろう、と。21Cは、百年戦争の間に数え切れないほど生産されたスコープドッグのうちの、あくまでも1機種についての考察に過ぎないということです。

 遊び方の1つとして、僕たち自ら「本当にあったら?」ということを真面目に突き詰めた、という実践なんですよ。アニメを作るだけなら、外観とか、「ここがこうなる」といった限定された設定がありさえすれば済む。でも今回のプロジェクトでは、必ずしも必要ではないことに対してまで深く考察しています。つまり、スコープドッグという題材を使って、こういう遊び方ができますよ、というファンに対するオフィシャル側からの一種の提案と考えてもらってもいいかもしれません。……ま、ちょっとやりすぎちゃったかな?(笑)
※サンライズスタッフ:こんなに時間がかかるとは思いませんでした

 本当にあったら、という前提で、みんなでそれこそ組み立てはボルトとナットを使っているのか? といった根本的なことまで突き詰めて、時間をかけて検証していきました。そういう検証作業の過程が本当に楽しかったですね。

──プロジェクトメンバーとは、どのように考証作業を進めていったのでしょう?

 毎週のように、ここサンライズに集まって会議です。「こんなんどうよ?」と、それぞれのメンバーが持ち寄ったアイデアを、「ここはそうじゃないんじゃない?」とみんなで徹底的に「叩く」(笑)。とにかく、アイデアを揉んで揉みまくる。その場で出た思いつきを片貝さんがスケッチすると、次の週には実際に小松原さんがそれを元に造型サンプルとして作ってきて、「実際に立体にすると、ここにこういう問題が出る」ということを検証してきてくれたりね。出張先の京都から、電話で東京とやり取りしたり、なんてこともしょっちゅうでした。とにかく、時間はかかりましたね。

(高橋)良輔さん(編集部注:ボトムズ監督の高橋良輔氏)にも事あるごとに進捗を見てもらってました。監修という立場より「面白いんじゃない?」と喜んでくれてましたし、大河原さん(編集部注:スコープドッグをデザインした大河原邦男氏)も「うん。若い人たち、頑張って~」と応援してくれてました。

──高橋監督もプロジェクトのことはご存じだったということは、映像作品へのフィードバックはあったのでしょうか?

「ペールゼン・ファイルズ」の作業に入った頃、監督にニコニコしながら「マーキングできた?」と尋ねられました。その時にはもうだいたいのところはまとまっていたので、フィックスしていないところだけ抜いて、アニメスタッフに渡しています。関節の内部図なんかは、エンディング映像のバラバラの絵などにも反映されていますね。このプロジェクトの産物は、基本的にサンライズ内の“オープンソース”ということでスタッフが自由に見られるようにしています。

 さらに、バンダイさんの1/20 スコープドッグ商品化の際にも基本概念図は提供していて、ヒントとして活用されています。例えば、上半身のフレーム構造といったアイデアなんかがそうですね。つまり、バンダイのプラモにもこのプロジェクトの影響はあるんじゃないでしょうか。

──ここにきて、いろいろな形のスコープドッグが出てきた、という感じですね。

 ペールゼン・ファイルズ版スコープドッグや21Cも、1つのスコープドッグの形です。同じように見えても、部品や構造が違っているかもしれない。どれが本物、ではなくて、全部が本物という解釈ですね。僕らとしては、百年戦争のどこかの時点で、21Cは確かに存在していた、といいたい。

 この21Cを見た人に、もっといろんな“俺タコ”を考えたり、作ったりしてほしいんですよ。この21Cを超えるようなものをね。

──なるほど。21Cのプロジェクトが、ほかのクリエイターやユーザーたちが理想のスコープドッグを考察して楽しめるきっかけになればいいですね。

◆ ◆ ◆

 こうして、プロジェクトは動き出した。戦車や戦闘機など、実際の兵器に造詣の深い井上氏をはじめ、“こだわりのデザイナー”(井上氏談)である片貝氏、そして精巧な造型の技術を持つ小松原氏。この3人が集まり、スコープドッグ21Cという存在に挑む。

 21Cというスコープドッグの1つの形を完全な形で見出していくために、井上氏が選び出した精鋭2人。氏がこの2人をプロジェクトに加えるに至った背景には、通常のアプローチでは恐らく理想のものは成し得ないであろうという予感と、方法論や最終的な「完成すべきモノ」に対しての明確がビジョンがあったに違いない、とわれわれはインタビューをしながら強く感じたのであった。

 そんな井上氏が、デザイナーと造型師に求めたものとはなんだったのか。次回第3回は、メカデザイナー・片貝文洋氏のインタビューを掲載する。

プロジェクト・スコープドッグ21C関連ページ
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立体設定解説(1)

©サンライズ

■関連リンク
・GA Graphic:「プロジェクト スコープドッグ21C」特設ページ
サンライズ
ボトムズWeb
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