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2009年01月14日更新! |

GA Graphicでは、サンライズが提唱する「プロジェクト・スコープドッグ21C」を4回の連載形式で紹介していく。
いわば井上幸一氏の発案に端を発する「スコープドッグ21C プロジェクト」は、やがてサンライズ社内で正式に“活動”として動き出した。会社からすれば、当然「装甲騎兵ボトムズ」という作品に寄与するなんらかの“成果物”ができあがることを期待してのゴーサインである。
その時は、サンライズにしても、井上氏が言い出した「実物大マーキング」であれば、商品として販売することができるだろうぐらいに考えていた。だが、マーキングをデザインするにあたり、内部構造が決まらなければ話にならない、と結論が出たところで、プロジェクトは思いもよらなかった方向へ進み出す。それは当人たちにとっても予想外であり、やがてプロジェクトそのものやファンにとって“嬉しい誤算”となりうる福音をもたらすのだ。
メンバーには、片貝文洋氏と小松原博之氏という2人の人物が加えられた。このプロジェクトが尋常でないのは、通常であればデザイナーが1人ないし2人もいればすむはずのデザインワークに、造型師である小松原氏が参加したことである。だが、小松原氏とともに迎えられたメカデザイナー・片貝氏に求められた役割でさえも、「スコープドッグ21C プロジェクト」はそれまでの常識を覆すものであった。
連載第2回では、メカデザイナー・片貝氏に突きつけられたテーマについてのインタビューを掲載する。その中では、このプロジェクトで井上氏をはじめとするメンバーが、どのようなマインドセットでスコープドッグという存在にメスを入れるに至ったかが明らかになる。
◆ ◆ ◆
──プロジェクトの中で片貝さんに求められたことは、どういったものだったのでしょうか?
私は、この3人の中では最後にプロジェクトに加わっています。本放送を見ていた自分が、プロジェクトに関われたのは幸せでしたけれども、最初の打ち合わせで自分なりのスコープドッグ像の構想を見てもらった時に、「今回のプロジェクトはこういう方向じゃないんだ」とハッキリ言われたのを覚えています。その時、今回の仕事はいわゆる“リファイン”ではないんだ、ということが理解できたんです。
公式を打ち立てる、といった類のものではない、というのは、自分にとっては例のなかったこと。そこからは、アニメのデザインワークや、玩具の開発では絶対にやらないことだけをやろう、という方向に切り替えました。
──その絶対にやらないこと、というのはどういうことでしょうか?
要するに、アニメーターが絵を描きやすいように線を減らしたり、動かしやすい関節を作ったり、玩具の大量生産に向いた単純な構造にしたり、といった制約をまったく気にせずデザインしよう、ということです。後で立体の製品にする前提を、敢えて切り捨てました。
それと、“リアル”“お約束”“定番”といったキーワードを用いないで打ち合わせに参加することを意識しました。「こうした方がリアルだから」「こうなっているのがお約束でしょ」といったような、既にある概念に乗っかるのは非常に楽なことです。しかし、そんな安易な方法をとっていたのでは、このプロジェクトの意味がない。
私たちがやろうとしていたのは、そうした“概念”ができる以前に立ち戻ることでした。考証とか考察とかいう次元でもないし、リアルを“演出”するというのでもない。私たちの合い言葉は「見てきたようにウソをつこうぜ」といったものです。
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──“らしさ”やカッコ良さを演出するのではなく、あくまで実在するものとして扱う、ということですね。
ディテールが少ないから足そう、ということではなくて、あらゆる箇所を“解剖”して、中になにがあるか想像する、ということの繰り返しですね。そこに疑問が生まれたら、立体も作り直すし、それまでに描いた画稿も全部描き直しです。
あと、気を付けたことは、スコープドッグがわれわれの知らない宇宙の産物であるということです。私たちの世界によくあるデザインをそのままの形で取り付けると、違和感が発生することになってしまいます。構造や機材の形1つ1つを、本物のスコープドッグがあったら、という前提で考え抜く、といったことが必要なんです。
──つまり21Cというスコープドッグを“作る”のではなく、こうだろう、と想像の中で探り出していくような感じですね。
マーキングを決めよう、というところからスタートしたこのプロジェクトですが、いろいろと面白いことが出てきました。「ここはフレームがそのまま露出していることにしよう」と決めた部分にやっとマーキングを設定できたのですが、実はまさにその部分に、従来のプラモにも同じようにマーキングがあることが分かったんです。
井上さんの言葉を借りるなら、「鉄のカーテンに隠れた敵国の兵器」をあれこれ勝手に想像していて、いざ実物が手に入ったので調べてみたら、ほとんどその想像通りだった、といった感じでしょうか。ですから、私たちのやっていることというのは、それほど突拍子もないこと、ではないと思うんです。スコープドッグを題材に、戦車に近い兵器であること、大量生産の工業製品であること、という前提で突き詰めていった結果、自然にこのようなものができた、というだけのことなんです。
また、逆にそれだけ大もとの大河原邦男氏のデザインや、アニメでの演出や描写が理に適っていた、ということでもあると思います。
──マーキングのデザインは、片貝さんが担当していたと伺ったのですが。
その通りです。どういった注意書きがどの部分に必要か、といったことが決まってきた段階でデザインに着手しました。ステンシルで描かれる文字の内容に至るまで、私がデザインしています。
──昨今では、CGを使ってこうした検証作業をすることが多いのですが、このプロジェクトではCGは使用していませんよね?
このプロジェクトでは、敢えて手描きの設定画と、造型師の立体物を使ってスコープドッグにアプローチしています。その理由は、そこにモノがあるという感触、つまり現物感を出したかったからなんです。絵や立体という現物が目の前にあると説得力が違うし、無機質なものを見ても手触りが分かりますから。
──確かに、スコープドッグ21Cの画稿と立体の迫力には、思わず引き込まれますよね。
◆ ◆ ◆
スコープドッグ21Cの実在する姿を暴き出すこのプロジェクトにおいて、片貝氏が果たした役割は、メンバーがあれこれと出し合って吟味した内容の“定着”という作業である。
検証の手段として画稿と立体の両面からアプローチしていった21Cプロジェクトでは、この二者は相互補完的な意味合いを持つ。画稿には、敢えて立体では再現しない内部構造などが詳細に描かれ、目の前にある模型を想像力の中で実存のATを表現したものへと昇華させるのだ。
この画稿による説得力は、デザインのプロとして高い専門知識を有する片貝氏の力があってこそといえるだろう。
次回第4回(最終回)は、原型師・小松原博之氏のインタビューを掲載する。
©サンライズ
■関連リンク
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・キリコの巡礼の軌跡「ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」が劇場公開! (08.11.28)
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