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2009年02月05日更新! |

GA Graphicでは、サンライズが提唱する「プロジェクト・スコープドッグ21C」を4回の連載形式で紹介していく。
「スコープドッグ21C プロジェクト」は、その事実上のスタートと同時に、既に1つの“成果物”を約束するものであった。それは、造型師・小松原博之氏が参加したことにより、スコープドッグ21Cがスケールモデルという“形”に確実に成立することを意味した。
完成したこのスコープドッグ21Cは、単なる結果としての成果物ではない。原型師は、通常であればメカデザイナーが紙の上に表現した設定画や、アニメーションの画面内に描かれたものを基準として立体物を作成する。そこに造型師の個性やアレンジメントが加わり、独自の立体が形作られることはあっても、完成した立体物がオフィシャルとなることはまずあり得ない。当然、設定が完成する途上に出現するものでもないわけだ。
だが、この21C型というスコープドッグは、これそのものが「立体設定」とでもいうべき存在である。画稿と同等の“設定”を表現したものでありながら、画稿が描き切れない無数のアングルを厳然と目の前に提示する。
小松原氏の立体はそもそも“検証”のサンプルである。頭の中で想像したものが実際に立体になった時、矛盾が発生しないか? 装甲の裏側にある機構の実際の容積はどれほどになるのか? それはCGという昨今の便利な道具であってすら感覚的に掴みにくい、実存による説得力を持ち得る新たなアプローチであった。
そして小松原氏は、21C型を解析していく中で、ほかのプロジェクトメンバーと同じかそれ以上に真摯にスコープドッグと向き合い、確かに存在する21C型の解像度を高めることに尽くした。
最終回となる連載第4回では、原型師・小松原博之によってどのようにスコープドッグが掘り下げられていったかを、インタビューにより明らかにする。
◆ ◆ ◆
──小松原さんの立体は、そもそも検証のためのモデルということですが。
まず、材質や中にどういった部品があるか、ということを設定するには、スコープドッグが兵器として“運用されている”という前提を念頭に置くことがまず必要でした。スコープドッグも、壊れたら当然修理するでしょうし、フレームが限界を超えて歪んだら廃棄処分にもなるでしょう。そうすると、ボディの骨組みや剛性といったところまで考え始めるわけです。
最初に井上さんに渡された既存商品の完成品スコープドッグをサンプルとしていただいて、それこそバラバラになるまで切り刻んで(笑)、内部のクリアランスとか、構造を自分なりに分析しました。その時にはもう、上半身はフレームに装甲を組み付ける構造になっているだろうとか、コクピットのハッチを閉めて初めてボディの剛性が成立する、といった仮説にもたどり着いていました。
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──実際にはどういった方法で検証をされたんですか?
スコープドッグの元々の設定画にあるディテールは、そのまま存在するものとして肯定し、「じゃあどうしてそこにそういうモールドがあるの? 中にはなにがあるの?」ということを1つ1つ検証していった、という感じです。
例えば、首にあるスリットの意味とか。本来であれば装甲にあんな穴が開いているのはおかしいはずなんです。それに、その首の内側のツルツル具合とかも気になって……。実際にフィギュアをコクピットに座らせると、ちょうど上半身を傾けてパイロットの額が当たる部分に、首の輪っかがあるわけですよ。設定上、スコープドッグにはシートベルトがないみたいだし、そしたらそこには顔面保護用のパッドくらい付いててもいいんじゃないだろうか、と考えて追加しています。
──立体を作ることで見えてくるものがある、ということですね。
シートの形状にしても、人が座って長時間作戦行動をするわけだから、さすがに真っ平らということはないだろう、ということで形状を見直したりもしています。井上さんからは、さっきの話の保護用パッドなんかも含めて、「21Cの“パイロットに優しい部分”は、ほとんど小松原さんのアイデアだよね」なんてことを言われますが(笑)。
パイロットの体格も千差万別だから、あんな狭いコクピットでも多少の前後位置や高さの調節は可能なんじゃないかと考えたり、シートを床や背板にベタ付けとかはあり得ないだろうということで、シートフレームを作って本体のフレームに固定する方法をとったりと、立体物を作っている中で見えてくる“隙”を徹底的に検証し、みんなでアイデアを出して細部を詰めていきました。
降着ポーズも、実際に脚部のフレーム構造を作ってみると、内側にいろんな隙間が見えてくる。そういうところを全部洗い出して立体に起こし、それを今度は逆に片貝さんの絵の方に反映させる作業を行い、“設定”として徐々に固めていったわけです。
今回のスコープドッグ21Cには、こうしたスタッフみんなの意見がいろいろ反映されていますが、「ここ、こうしてみたんですよ」と僕が持っていったアイディアを、「お、いいじゃない」とかなり採用してもらえたのは嬉しかったですね。
──それは、小松原さんの出されるアイデアがプロジェクトの思想に沿ったものであった、ということでしょうね。
本物があるとしたら、例えほかの宇宙の人間が作るものだとしても、同じヒト型生物なんだからある程度は設計時に考慮するポイントが似通ってくるはずです。ただ、井上さんには「スコープドッグはジープだ」と言われてましたから、軍用のものであることと、安くて頑丈な大量生産の兵器であることは忘れずに考証するよう心がけました。例えば同じ車でも、自家用車や趣味のスーパーカー、トラックなどを見れば分かる通り、目的や用途によってお金をかけるポイントが違うでしょう。
スコープドッグが高価なワンオフ兵器ではない、というのは大前提で、最低限のどんな装備が積まれているのかを、価格から逆算しようと試みたりもしました。井上さんに「スコープドッグって、今の日本円にすると幾らぐらいなんですか?」と聞いたら、「数百万くらいかなぁ?」っていうから、さすがにそれは安すぎじゃないですか(笑)?」 ってツッコんで。「1800万くらいはするんじゃないですか?」「そりゃ高いな」「え、だってロボットですよ?」というやり取りもありましたね。
ジープまで安価じゃないとしても、じゃあハマーくらいしっかりしたものなのか? お金をかけているのか? ということを考えると、自ずと見えてくるものがある。だから、それこそメルキア星の生活レベルとか、そんなことまでみんなで真面目に考えました。
後は、メンテナンスでボディの一部を開くとしたらどこだろう、とか、強度的に考えて溶接でガッチリ組み付けてあるだろうという箇所を決め、装甲を留めるためのボルトの種類、位置、本数も構造や用途、強度といった要素を考えながら決定していっています。
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──実際の作業時間はどれくらいになりましたか?
このプロジェクトのスタートは2006年9月ですが、実際に手を動かしてこの試作モデルそのものの製作に取りかかったのは2007年2月からです。そしてその年の2007年11月21日に完成しました。長くかかっているようですが、実作業時間でいうと2016時間。2.8カ月くらいなんです。ちゃんと記録取っていたんです(笑)。
実作業時間はいつも作る立体と大差ないんですが、何度も言っている通り、立体のパートだけドンドン勝手に進めていくような形式ではなく、入念な検証と造型作業の繰り返しで進めていったので完成までに時間がかかったという感じでしょうか。
◆ ◆ ◆
あくまでも、この立体は21Cプロジェクトが「本当にスコープドッグが存在したら」という前提のもと、全力でその実体を作ろうと画策した“大人の本気の遊び”である。
「スコープドッグ21C プロジェクト」では、画稿と立体物を同時進行で作るという手法で、21C型の設定を固めていった。メインのプロジェクトメンバーや、そのほかのさまざまなサンライズスタッフなどからそれこそ無数のアイデアが提示され、その1つ1つを検証していく地道かつ根気のいる作業であったという。
中には、ターレットレンズの汚れを洗うレンズウォッシャーなど、プロジェクトメンバーだけでなく高橋監督らアニメスタッフたちが同時に同じアイデアを考えついていたり、などといったこともあったようだ。
いずれにせよ、今回のようなプロセスを踏むことで生み出された立体は、設定と乖離しないことになる。この意味するところは大きい。「スコープドッグ21C プロジェクト」が提示した方法論は、歴史あるアニメ業界、模型業界の中でも類を見ない試みであったといえるのではないか。
圧倒的なまでに精緻な画稿、そしてこれに添えられた細かい設定考証の数々。そして厚みの感触や構造を瞬時に把握できる精巧な立体サンプル。さらに、プロジェクトの大もとにあった「マーキング」を作るという目標も、無事にこの設定の中に組み入れられた。マークのラインや色、書かれている文言の1つ1つに意味と説得力が与えられたことに、素直に感動を覚える。
われわれファンが心の内に持つスコープドッグの形の中にきちんと収まりながら、フタを開けてみるとどれだけ新鮮な驚きに満ちているかが体感できる。これは実に凄いことだ。
それはそれとして、井上氏たちメンバーは、ファンへのメッセージとして1つの共通した思いを抱いていることを最後に述べておきたい。この21Cの立体、そして設定画稿を目にした人に、「これがスコープドッグの正式な設定=公式なんだ」と思い込むことはしてほしくない、と。
「ボトムズに公式はない」と宣言する井上氏らしさの滲むこの言葉の意味は、ファンへの期待が含まれていることを忘れてはならない。「なるほど、21Cの設定はそうなのかもしれない。でも、自分はこう思う」──。そのように、思考を停止することなく、自分たちの愛するものに向き合ってほしい、ということなのだ。
この「プロジェクト・スコープドッグ21C」の真のテーマとは、オフィシャル側からの作品の楽しみ方の提案であり、まさにその1つの実践である。専門家たちの壮大かつ本気のぶつかり合い。その根源にあるものは、創作物をとことんまで楽しむ、ある意味優雅にして贅沢な“大人の遊び”の精神なのだ。
©サンライズ
■関連リンク
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・キリコの巡礼の軌跡「ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」が劇場公開! (08.11.28)
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