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2011年08月04日更新! |

現在の世の中にはさまざまなアイテムが溢れている。GA Graphicで主として紹介しているホビーグッズにしても、毎日のように新しいものが登場し、売り場はユーザーが目移りしてしまうほどの盛況ぶりだ。
そんな氾濫する多数のグッズの中で、最近一風変わったものがあるのを見つけた。“それ”が珍しい、と感じさせたのはアニメショップや量販店のホビーコーナーといった専門の売り場だけでなく、一般的な雑貨を扱うお店に普通に並べられている点だった。
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そのグッズとは「お箸」である。
今日初めてこれを目にするという人は、写真をじっくりと見てほしい。説明するまでもないと思うが、映画「スターウォーズ」シリーズに登場する“ライトセーバー”だ。一見して普通のミニチュアのように思うかもしれないが、紛れもなくお箸であり、これを使って実際に食事をとることが可能だ。
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何を隠そう、このアイテムを開発したのはコトブキヤだ。箸、といえば日本ではごくごくありきたりの日用品である。コンビニやその辺のスーパーでも売っている。キャラクターグッズ、という捉え方をするにしても、アニメキャラクターの柄がプリントされたアイテムなどは昔から存在する。子どもの頃にそういった箸でお弁当を食べた思い出を持つ人も多いだろう。
ところが、この箸は見た目にも「おっ」と思わせる目新しさがあった。確かに作品世界を表現する意匠を持ってはいるが、単に箸にキャラクター柄をあしらった従来のものとは明らかに一線を画す。実際に売り場で目にすると、たいていの人が「へえ!」と軽い感嘆の声を洩らすことだろう。
箸本体をクリアの素材で成形し、ライトセーバーの光る刀身を表現。柄の部分もまるで本物を縮小したかのようなリアルさで、立体的表現が施されている。よく出来ている、と素直に感心すると同時に、「これが箸なのか!」という新鮮な驚きに包まれ、思わず笑みがこぼれてくるのである。
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今や、このアイテムは東急ハンズなどの有名雑貨ショップでも扱われるほどの人気商品に成長した。人の興味を惹くだけではここまで売れるものにはならないはずだ。
この“キャラクターお箸”に秘められたヒットの秘密とはなにか? 今回は、コトブキヤの若き女性商品企画担当・高城里佳さんにお話を聞いてみた。
──この“お箸”の企画に至ったきっかけを教えてください
高城:私のいる部署は、新しいグッズの企画が仕事です。ストラップなどはそれまでにも幾つか作っていましたが、そこから派生した何かを作れないか、とずっと考えていたんです。
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──でも、当然何でも良かったわけではありませんよね?
高城:どんな素晴らしい思いつきでも、フィギュアなど“造形”を得意とするコトブキヤの持つ技術や開発ノウハウを生かせないのでは良い企画とはいえません。また新アイテムには、見た目のインパクトだけではなく、より幅広い購買層に向けてアピールできる何かが必要だと思っていました。
──ストラップなどでも、素晴らしい造形を実現できるコトブキヤならではのアドバンテージはあったと思いますが、既存ライン以外も検討されたということですね。
高城:もちろん個々の商品については自信がありましたが、流通上の問題がありました。例えばアイテムの発売ペースですね。せっかく店舗さんにコトブキヤ商品を置くコーナーを作ってもらっても、定期的にアイテムが発売できないのでは効果も半減します。また、キャラクターグッズを置いてもらえる店舗さん自体も限られてしまい、広がりがないんです。
──やはり会社のためにも販路そのものの拡大が必要だったわけですね
高城:きっかけの1つには、数年前から秋葉原の駅前で展開しているコトブキヤ ラジオ会館店の存在がありました。今では、1階に観光客など一般のお客さんが立ち寄られることが多くなっています。フィギュアなどの専門グッズは2階フロアに集めているのですが、1階とは客層がまったく異なっているんですね。1階ではマグカップや日用品のキャラクターグッズなどを扱っていますが、困ったことに自社のアイテムがほとんどなかったんです。せっかくだから、自社のアイテムも置こうよ、というのが企画に求められていた命題でもあったわけです」
──そして最終的にお箸に行き着いた、と
高城:じゃあ普通の商品ってなんだろう、って考えたときに、実用的なもの、具体的には日用品が良いんじゃないか、と思ったわけです。でも、先ほど言ったようにコトブキヤらしさを出せるものとなると、なかなかアイデアが出てこないんです。見るだけじゃなくて、使えるもの。それで色々と考えていた時に、会社の仕事の関係で見かけた「スターウォーズ」のライトセーバーが「お箸に似てるかも……」と、思えて。
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──それを思いついてからは、早かったんですか?
高城:それが、実際は発売までは1年くらいかかってますね。私は入社してからすぐ新規に作られた事業部に配属されて企画をやり始めたんですが、なにせ少し前までは学生だったものですから、いきなり『何でもやっていいよ』と言われてもノウハウがなく、やっぱりすぐには難しかったですね。特に“お箸”については私自身もそうですし、社内のセンパイのだれも作り方なんて知らないし。
──お箸、と聞くとそれほど難しいイメージもないですが……。
高城:形を作るのも、割り箸みたいなのなら削るだけでできそうですが、ライトセーバーの場合は刀身部分に透明の素材を使いたいというのがそもそもの発想ですから、ここでも考えもしなかった色々な問題があることが分かったんです。
──問題、というと?
高城:一番大きいのは強度や安全性ですね。やはり食品を扱う道具ですから、玩具とはまったく別の審査基準があったりするんです。その検査は公共機関に依頼するのですが、開発中のアイテムといえど、パッケージを含めて発売される商品とまったく同じ仕様のものを提出しないと意味がありません。つまり、審査に通らず発売できなかったとしても、アイテムとして完成していないといけないわけです。
──フィギュアの監修、といったものとはまた全然違いますね。
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高城:安全かつ実用的なものを作るために、様々なプラスチック素材のサンプルをテストしました。私自身も試作品を持ち歩いて、実際にお店でラーメンを食べたりしましたよ(笑)。
──“マイ箸”ですか(笑)
高城:それに、売り場の色んなタイプのお箸を買って研究しましたね。最初は、一般的な塗り箸と同じように木で作ったサンプルに色を付けたものを作ったりもしましたが、やっぱり透明の方が本物のライトセーバーのイメージに近いですし、これで行こうということになりました。ただ、クリア素材は成形時にわずかでも気泡が入ってしまったらアウトですから、これはこれで技術がいるんです。
──柄(グリップ)の部分も細かい造形ですね。この部分は、コトブキヤだったからこそ可能な造形だと思います。
高城:はい。原型師の人に企画を伝えて理解してもらい、重さや長さ、見た目など全体のバランスを考慮し、かつイメージを壊さないようにアレンジして作ってもらっています。お箸という性格上、先をある程度細くしないと使いづらいですが、あまり極端にやり過ぎるとライトセーバーに見えなくなってしまいますから。
──ユーザー側からすれば、完成したものを見て「なるほど」と一瞬で受け入れてしまうアイテムも、そこに開発者の色々な工夫や試行錯誤があるんですね。版権元の反応はどうでしたか?
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高城:版権元のルーカス・フィルムには、まずコンセプトを説明するところから始まりました。もともとコトブキヤが「スターウォーズ」関連のアイテムで良い関係を築いていたのが大きかったですし、なにより作品そのものが日本の文化に影響を受けているということもあってか、幸いにも趣旨を理解していただけました。
──ジョージ・ルーカス監督も日本びいきで知られていますから、これを見たら喜ばれるんじゃないですか?
高城:個人的にはルーカス監督がこのお箸を使って食事している写真をもらえたらなあ、と思います(笑)。それを会社に額に入れて飾るのが夢です! 以前に海外でイベントに出展したときに、たまたまヨーダの声優さんがブースに来てくださって、あのしわがれた声で「ヨーダはこの箸しか使わない……!」って言ってくれたんです。あれは嬉しかったですね。開発者冥利に尽きるというか。
──発売後の反響はどうでしたか?
高城:実際に購入してくださった方の声が届くようになって改めて気づいたのは、普段の生活の中でもキャラクターや作品に触れ、楽しみたいと思っている人がたくさんいるんだな、ということでした。このお箸は、そういう人たちに喜んでもらえているみたいです。
──特別なものじゃなく、お箸というさりげない日常品だからこその良さですね。
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高城:コトブキヤの主力であるフィギュアやプラモデルとは、明らかに購入層が違いますね。例えば、「実はあたしダースベーダー好きなのよね」っていう女子高生とか。
また、家族を持つサラリーマンもホビーになかなかお小遣いを回せないとよくお話をうかがいますが、このアイテムなら「これはお箸だから、使えるものでしょ」って購入の理由にできるのも嬉しいというケースもあるようです。そういうところもウケているんじゃないでしょうか。自分で買うのでなくても、「スターウォーズ」好きのお父さんへ奥さんや子どもさんがプレゼントとして選ぶというパターンもあるみたいですよ。
──最初の目標通り、見事に購買層を広げることに成功したわけですね。
高城:先ほどお話ししたラジオ会館店でも、外国人や一般の観光客の方が手頃な“おみやげ”として買ってくださるケースも多いです。外国人の間でも、お箸で食事する文化が徐々に広まっているようですし、箸とは全く別の使い方もされているという話も聞きます。かんざし風に髪の毛に刺してアクセサリーにしているそうですよ。
──それは思いもしなかった使い途ですね。ユーザー側で色んな受け入れ方をされているというのは興味深いで。
高城:ウチの専務が言っていたことなんですが、おみやげや話のネタ、プレゼントって購入動機は一種の“コミュニケーション”なんですよね。このアイテムがそういうツールになるとは、作っているときは想像もしませんでした。
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──さまざまな要素が詰まっている理想的なキャラクターグッズですね。これは私見ですが、女性ならではの発想なんじゃないかと思います。男性の企画者はとかく専門的になりがちです。
高城:ありがとうございます。でももちろん1人の力ではなくて、私の場合、アイデアを思い付いたらまず社内の人に話して客観的な反応や意見をもらいます。右も左も分からない新人の頃に、勉強しながら積極的にそういうことをやっていたおかげで、最近では逆に周りからもアイデアをもらえるようになりました。そうして1つのアイデアを揉んで揉んで揉みまくって、形にしていくんです。
──そういう意味でも“コトブキヤらしさ”が表れたアイテムといえそうですね。他社さんからも同様のアイテムが発売されるほど市民権を得たのはスゴいと思います
高城:真似されるようになれば一人前、という気はしますよ。ウチだけじゃなく“キャラクターお箸”のアイテムがたくさん作られて、1つのジャンルとしてお店の大きな専門コーナーで盛り上がるようになると素敵ですね。
──今日はありがとうございました!
ヒットする優れたアイテムが持つ条件の1つに、世の中に“ありそうでなかった”ものを提供する、といったことが挙げられる。だが、商品を開発する上ではいかにも簡単そうに見えるこの発想が、なかなか出てこないものだ。また、世間には仮に思いついても技術上の問題や様々な要因で実現に至らなかったアイテムも多々あっただろう。コトブキヤにしても、実際に初の試みである“箸”の開発には、色々な困難があったのだ。
だれもが見た瞬間に「面白い」と理解できるものは、最も表層にコンセプトの真髄が現れ出ている。そのあまりの明快さに「だれでも思い付きそう」と片付けてしまうこともしばしばだ。だが、これこそ“コロンブスの卵”の例えが示す通り、なかなか簡単には生まれてこないものなのである。
みんなも是非このキャラクターお箸を買って、実際に親しい人の目の前で使って食事をしながら、このインタビューの中で語られた“ウンチク”を披露して楽しいひとときを過ごしてみてはいかがだろうか?
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※製品は箸ですので、実際に魔法はかけられません。
※商品を振り回す等の行為は大変危険ですのでおやめ下さい。
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