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2008年11月21日更新!


汲めど尽きせぬ河森正治監督の創造の源とは?:TIFFトークショーレポ



PHOTO 10月18日~26日まで開催された「第21回東京国際映画祭(TIFF)」において、「ビジョンクリエーター河森正治の世界」が開催された。

 TIFFは初心者からマニアまで、すべての映画ファンが楽しめる“映画のお祭り”だ。「河森正治の世界」は、そのTIFFのアニメーション上映企画の1つ。監督の手がけた作品を上映、その後は監督自らが世界中を回って取材した際の映像を前にトークショーを行った。

 河森正治監督は、1984年に放映されたTV版「超時空要塞マクロス」制作に携わり、その後若くして劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の監督に抜擢されたクリエーター。その後もさまざまな作品のメカデザイナーとして活躍するほか、監督としても「天空のエスカフローネ」「創聖のアクエリオン」といった話題作を世に送り出している。また、その活動の場はアニメ業界だけにとどまらず、大ヒットとなったSONYのAIBO(アイボ)などの工業デザインや、 日産・デュアリスのCMに登場するパワードスーツデザインなども担当している。

 今回はトークショーのレポートとともに、GA Graphicの個別取材も行い、監督のインスピレーションの源や創作の根底にある思想について明らかにする。そこからは、最新話題作「マクロスF」誕生の軌跡や、想像もできない次なる作品への展望が感じ取れるはずだ。


◆ ◆ ◆

「河森正治の世界」第2部として行われたトークショーでは、まず第1部で上映された「イーハトーブ幻想~KENjIの春」にちなみ、監督が実際に取材した際に記録した映像がスクリーンに映し出された。

 この作品は、作家・宮沢賢治の半生を描いた作品。風景や賢治の幻想世界を美しい映像で綴っているが、その本質は賢治の見ていたであろう「現実世界」と「理想世界」の淡々とした描写であり、賢治を深く理解していなければ決して描ける作品ではない。河森監督は、数週間連続で賢治が実際に耕した土地の周辺に滞在したほか、季節を変えて、のべ半年にもわたる取材を行ったという。それは、賢治の足跡の追体験でもあった。

 河森監督は、劇場版マクロスの仕事を終えた後、しばらくの間アメリカへの取材旅行に身を置いた。軍事基地、ロケット打ち上げ、博物館などあらゆるところを回ったのは、監督の中に“本物”への志向があったからだという。監督の作品には、リアルに考証されたメカだけでなく、人物の感性や思想にも“本物”の裏打ちがある。だが、取材体験を積み重ねていく中にも、やがて劇的な変化が訪れた。

 それは、中国に取材へ行った時のことだった。「アメリカをずっと回っているうち、なにを見ても“驚き”がなくなっていくのを感じたんです。同じような刺激に、感覚が慣れてきてしまったというか」と監督は当時を振り返る。そこで、監督は敢えて日本に近い国・中国を訪れた。そこでは、監督の想像を超えるカルチャーショックの連続が待っていたのだ。

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■取材陣に向け、飛行機を飛ばすイメージのポーズ(マクロスプラスでイサムもやっていた)。サービス精神に富む監督の人柄が窺える

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■聞き役のアナウンサーも監督の作品の大ファン。トークも盛り上がる

「本当に“デカルチャー”(笑)な体験だったんですよ。一番ショックだったのは、少数民族の村を訪ねた時。中国奥地へ進むと、どんどん家庭にテレビがなくなっていくんですが、テレビがない村の子どもたちほど、目が生き生きしてくるんですね。テレビというメディアで仕事をしている僕みたいな人間にとっては衝撃です。テレビなんてなくてもいいんじゃないか? 僕たちの仕事って本当に人間にとって必要なのか? っていうところまで考えさせられましたから」

 こうしたショックは、現在でも常に監督の心の中にある。簡単に人に影響を与えることが可能なメディアの仕事に携わっている者の責任について、監督は常に心配しているという。その一方で、自分が体験してきた“本物”の衝撃や感動を作品の中に表現することにも拘っている。その想いは、「自分のカルチャーショック体験を、作品を通じて感じてもらえたら最高だ」という言葉に表れている。

 監督はこれまでに、文字通り世界中に取材旅行している。ネパールの山村での体験は「天空のエスカフローネ」に結びつき、ボルネオのジャングルの取材は「地球少女アルジュナ」を生み出した。また、アマゾンやインド旅行など、各地で出会った(日本人にとって)人智を超えたシャーマン的能力を持った人々との接触は、「創聖のアクエリオン」誕生のきっかけともなった。

PHOTO 米軍の空母に同乗体験した際には、凍り付くような風の吹く冬の海上で、戦闘機のエンジン噴射(の余波)に温められたという。その際の体験が「KENjIの春」での“冷たいけど温かい”のセリフに転化されているなど、予想も付かないところで活かされていたりするという話も興味深い。シーンと直接の繋がりはないが、そのセリフには、監督の実体験による“実感”が込められているがゆえに、リアルな説得力を持つ。

 空母の体験は「マクロスゼロ」の描写に活かされているが、戦争体験が自身にないことから赴いたベトナム戦争の激戦地の1つ・ラオスや、太平洋戦争で戦場となった南国の島々での取材体験の後では、「どうしても戦争をメインにすることに抵抗感が生まれた」というように、逆にあまりにも生々しい感覚を受けたがゆえに、主題として扱えなくなってしまったこともあるという(さらに、「それなら、戦いを“ファンタジー”にしてしまおう」ということで、「アクエリオン」に昇華されたことも付け加えておく)。

 そして今年放映の新作「マクロスF」は、これまでの体験を、敢えて“オーソドックス”な作りの中に内包することで、目から鱗が落ちるような新鮮さ得た。多くのファンの心を掴み、大ヒットとなったことは説明するまでもないだろう。

「実際に自分で体験するのが一番なんです。若い人には、どんどん外に出て行って、いろんなことを体験してほしい。そうすると、僕の作品を見ても、感じ方そのものが変わってくるはずなんです。また、そういう風に設計して作品を作っているつもりです」と監督は語る。

 このトークショーの会場で、監督の撮影した映像や体験談を聞いているだけのわれわれでさえ(実体験したわけではないにも関わらず)、映し出される監督の作品の1シーンを見て、ハッと気付かされることが多かった。そこにどんな意味が込められているかが理解できるということに限らず、描写そのものが「なるほど」と実感として納得できるのには驚く。

 トークショーは、聴衆にとって間違いなく“デカルチャー”を体験できる場だった。河森監督の言葉を、その場で身をもって実感したのだ。

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■河森監督が監修したバンダイ DX超合金VF-25F(12月発売)【紹介ページ

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■同じく、バンダイ 1/72プラモデル VF-25F(発売中)【紹介ページ

 河森監督の作品をさらに深く見るためには、数多くの人生経験があればなお良い、ということだろう。もしかしたら、昔の作品も、久しぶりに見返してみたら感じ方が違うかもしれない。違うものが見えてくるかもしれない。GA読者のみんなにも、監督の作品を通じて外の世界にも積極的に目を向けてほしいものだ、と今回の取材を通して強く感じた。

 さまざまな取材体験を通して生まれてくる河森監督の作品世界。今後行きたい場所は「衛星軌道かな。本当はバンアレン帯の外に行ってみたいけど。あと、深海とか」と尽きることがない。今後も、未知の“デカルチャー”をわれわれに見せてくれるはずだ……と思っていたら、会場では監督の「新作」についての発表があった。

 河森監督の最新作は「BASQUASH(バスカッシュ)」。公式サイトで順次公開中のPVでは、実写映像にバスケットボール、そしてCGによるロボットの姿が見える。詳細はまだ明らかではないが、監督によれば「巨大マシンによるニュースポーツ。ジャンルとしてはスポーツ物だけど、常識を打ち破る描写をどんどん入れ込んでいきたい」とのこと。いったいどんな作品になるのか楽しみだ。

 また、大ヒットのうちに放映を終了した「マクロスF」の劇場公開も決定している。河森監督は、先ほどの「実体験」の話を踏まえた上で、「なるべく大画面で見てほしい」と勧める。旧作「マクロス」の時もそうだったが、劇場版は大画面で観ることを前提とした画面・音響設計がなされる。劇場版作品用に作られた作品を、たとえばネット配信の小画面で見る際には、やはり「別物」になってしまうだろう、と監督はいう。

 本物の「劇場版 マクロスF」を“体感”するために、みんなも是非劇場に足を運ぶべし!!

(C)2007 ビックウエスト/マクロスF制作委員会・MBS
※掲載しました写真は開発中の為、実際の製品と異なる場合がございます。

■関連リンク
サテライト
BASQUASH 公式
東京国際映画祭
東京国際映画祭 ビジョンクリエーター河森正治の世界
河森正治監督も来場!バンダイ完成品「マクロスF」VF-25シリーズ大展開 (08.10.17)



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