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ニューフェイス一問一答
第四回 11月15日発売「クレイジーカンガルーの夏」
著者:誼 阿古さん インタビュー



◆PROFILE◆

年齢・性別不詳。家族は夫一人。阪神圏の無花果畑の横で無垢な幼年期を過ごし、隣の市に引っ越して植木畑の横で多感な学生時代を過ごし、今は同じ市の山中に住む。
趣味はパソコンの壁紙製作。

――1979年という、いわゆる昭和の時代のお話がメインとなっていますが、まずはこうした時代背景を舞台に物語を書こうとしたきっかけを教えてください。

 たまたま、なんです、すいません(笑)。

 ただ、この79年というのは、音楽ではかなり面白い年で、音楽だけじゃなく、映画でもアニメでも、今にまで続くデフォルトができあがっていく時代だというのがあって、前から興味があったんです。

 音楽では、パンク、ニューウェイヴが一瞬ながら天下を取った時代でYMOのブレイクもあります。映画ならルーカス、スピルバーグ時代の始まりで、邦画でも、青春映画のクラッシックは何故かこの時期に固まっています。そして、アニメでは「ガンダム」が出た年です。本にもなっていますが、政治や経済でもエポックの年代だったようです。

 じゃあ、そういう空気が作品に出ているか? という話なら実はあまりナイという(笑)。何せ、13歳が主人公ですし。

 それと、「大都市郊外でも気安く田んぼが広がってた最後の時代」というのは大きいです。かの山で兎は追えずかの川で子ブナは釣れないけど、カブト虫やザリガニは気安く捕れた、という感覚かな。

――思春期ならではのもどかしさや透明感がよく表現された本作ですが、執筆するにあたって、特に気をつけたところなどがありましたら、お聞かせください。

 その当時の13歳が考えそうにないことは考えさせない、13歳が言いそうにないことは言わせない。

 というか、これは書くときにいつも頭に置いていることで、正直、「カンガルー」に関しては、それ以外は何も考えずに書きました(笑)。私の頭の中で、物語とキャラがお手々つないで疾走していったという感じです。年代を特定したので資料集めには手こずりましたし、短時間で上げたので肉体的にはきつかったですが、精神的にはとても楽でした。

――すでに、本作と同じ背景を舞台にした次作も執筆中とおうかがいしましたが、そちらはどういったお話になる予定なのですか?

 じつはもう書き上がってます。登場人物はダブります。まったく同じ時間軸の同じ場所の話で、今回の4人組のうち、二人が重要な脇に回ります。主人公は女の子、中学校生活が舞台です。

 当初は、この「カンガルー」外伝の予定で、誰かに初恋でもさせるかあ、という安直な考えだったんですが、まるで変わっちゃった(笑)。登場人物も増えちゃって、話も長くなっちゃった(笑)。それで編集長さんを思いきり困らせてしまいました。

――最後に読者のみなさんに一言お願いします。

 すいません、魔法とか物の怪とか世界の謎とか、そういうステキなアイテムの出て来る話じゃないんです。あまりに淡々とした中学生の日々と、あまりに地味な冒険の話です。

 今日の目標は? と訊ねられたら、部活が済んだらプールに行く、その後、角店でアイスキャンデーを買って食べて、家でガンダムを見る! それ以外、僕の人生に何の目標が必要だと言うのだ! と力強く言い切ってしまいそうな、そんな中学生の話です。

 だって、私も、ガンダムはオンタイムで見てませんが、13歳の時は似たようなものでした。中学一年は、世界の中でまだ小さな存在です。そんな心と頭で考えたり、望んだりできるものなんてたかが知れてます。たかが知れてるから楽しいんだし、たかが知れてるから苦しいんです。だから、はやく大人になりたいけれど、側に転がってるつまんない大人にはなりたくない。でも、どうしたらいいのかわかんない。そういう話です。

 それでも、読んでいただけるなら、もう何も申し上げることはありません。よろしくお願いいたします。

 

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