ニューフェイス一問一答
第五回 12月15日発売「真田十勇姫!」 著者:馬場卓也さん インタビュー
◆PROFILE◆
大阪在住。
作家業はいまだに裏家業なのですが、ここでこんな事書いていいのだろうか?
『SHUFFULE! アンソロジーノベル』でデビュー。『Schooldays 君といる、空』(ともにJIVE)で初長編。今回が初オリジナル。
――初のオリジナル作品ですが、書き上げてみてどうでしたか?
まずは、俺にも出来た、俺にも書けた、というところでしょうか(笑)。
完成までに時間がかかり、担当様には大変ご迷惑をかけたと思いますが、充実感、のようなものは残りました。
今までと違い、何から何まで自分で考えなければいけないので、それなりのしんどさはありましたが、逆に言えば好き勝手にしていいわけで。そこら辺では大いに遊ばせてもらいました。と言っても、以前の作品でも原作に出ない怪獣出したり、妖怪軍団出したりと好き勝手やりましたが(笑)。
とにかく今回は、いつ、何に使うか分からないけれど書き溜めておいたネタのストックが役に立ちました。
あとがきと被りますが、初オリジナルと言う事で、ラブコメという出汁に、今まで自分の見たもの、聞いたもの、好きなもの、そうでないものをとにかく色々とぶち込んでごった煮にしてみました。果たしてラブコメになりえたでしょうか?
『ラブコメとは、すれ違いと誤解とパンチラである』という持論を実践できたかどうか、甚だ不安ではありますが、何とかできたのでは? と思います。
――十勇士ということで、沢山ヒロインが登場しますが、それぞれの魅力を教えてください。
たくさん出ました? あぁ、いますねえ、ヒロイン。と言うか女キャラ。
まず、最初の段階では普通のラブコメでした。主人公とヒロインが幼馴染で、その周りがすったもんだして……みたいな、ありがちなお話で。で、ヤンキー漫画じゃないのになぜかクライマックスは京都で大乱闘、というのはこの頃からありました。その時は主人公の少年の友人がたくさんで、男キャラの方が多かったのですが、『女キャラをもっと出せ』という天の啓示(?)で、今の形になりました。でも、ただ大勢出すのも芸がないので、例えば、星座とか干支とか、集団ものにしやすそうなモチーフを探している時に、上に書きましたネタストックの中から掘り返したのが『真田十勇士』でした。これならば女の子を十人出せる、ならばタイトルも『真田十勇姫』にしてしまえ、と。安直ですね(笑)。でもこれの前候補は、あとがきにも書きましたが『赤穂浪士』でして、これはちょっと多すぎるな、と。でも、たくさん出したのはいいけど、キャラ分けが結構大変でした。
で、個別の魅力ですね。
主人公のユキオが思いを馳せる羽山マキはもう、本当に、オーソドックスにマドンナ的存在の近付き難いぐらいの美少女と言う事で。
少し暗いところもあって、そこがまた……。元陸上部にしたのは、出てくる人間が全員帰宅部というのもどうかと思ったのと、陸上は団体競技ではない所と、走ってる女の子って絵になるよね、という事で。
十勇士の一人、マシラは猿飛佐助がモデルです。猿と爺さんに育てられた活発な野生児で、天真爛漫というか、世間知らずというか、いうなればアマゾンですね。でもそればかりじゃただのバカだと思われかねないので、女の子ッぽい所も入れて……なかったですか?
武器がブーメランなのは、はじめはでかい手裏剣だったのですが、そりゃあんまり危険だろうという事で変更しました。でもあんな馬鹿でかいブーメランぶつけたら即死ですね、普通。 チビでブーメランというマシラの元イメージは『マッドマックス2』のガキに、白土三平の漫画のサスケやワタリとか、いろんなものが混ざってます。
マシラと同じく忍者で、十勇士のリーダー? の桐野サエは、霧隠才蔵がモデルです。最年長で、スーツ姿の似合うお姉さんタイプで、しかも教師。でもどこか抜けています。これはどのキャラにも言えますが、私の性格からか、完全無欠なタイプはいません。みんなどこか抜けていたり、弱点があったりします。あまりピシッと決まったキャラは好きじゃない、というか書けないからかもしれません。
ライフル魔の椿ミヨは、普段はおっとりとした感じで、何かとぶつかり合うマシラとサエの仲介役、グループのまとめ役ですね。 なぜ温泉の仲居なのか? と言うと、最初はライフル持ったメイドでした。しかしメイドさんはGA文庫では他にも活躍してらっしゃいますので、メイドに変わる何か……。家事手伝いをこなせる人……家政婦は? いや、もっと別の……と、かなりねじくれた連想ゲームの末、温泉宿の仲居に決まりました。温泉宿ならば得物は射的のライフル。そして前述の通り、命中精度は抜群ですが、射程距離を限定した設定になってます。特定のモデルはいませんが、射程距離が限定された手製の鉄砲を使う人と、温泉宿で働く元殺し屋が頭をよぎりました(笑)。
多摩川ツバメは、忍法、鉄砲と来れば、ということで剣客です。それに京都で大立ち回りもありますので、大掃除をしてくれそうな人ということで設定しました。。自分の好きなものばかり先に出したので後が大変です。
これまた特定のモデルはいませんが、自分の中にある虚無的な武士のイメージで書きました。でも男嫌いで、奇声を発しないと斬れません。自分に厳しく、他人にも厳しいタイプだと思います。
サニーは服部半蔵の血を引く伊賀忍者総支配にして、天然入ったメガネの音楽教師という二面性を出してみました。なのになぜ、サニーというカタカナ名前かというと、これは、服部半蔵にゆかりのある俳優さんの海外での呼び名からです。安直ですみません。
実力はサエよりも上かもしれませんが、多分根は天然だと思うので、音楽教師の方が地かもしれません。
最後の最後に登場の……、あ、これは読んでいただかないと(笑)。
こうして一人一人紹介してみると、現代劇なのに洋服を着たキャラはほとんど居ないことに気付きました(笑)。
――作品の見所・アピールポイント・こだわった点などを教えてください。
ラブコメとはいえ、ドタバタしたり、かなり非現実な描写が多いと思います。
これは『よし、活字で漫画をやろう』と思った作者のせいですが(笑)。
珍妙なキャラが多数登場しますが、そんな中での平凡な男、主人公の真田ユキオ君の頑張りを見ていただければ、と思います。特に何も頑張ってませんが(笑)。でも、そこに共感していただければ幸いです。
ドタバタの合間の、川原を二人で歩いたりするところが切なくて、やるせなくて、いいと思います。
――最後に読者のみなさんに一言お願いします。
がむしゃらに何とかやってみました。
物騒で悲しい出来事の多い今日この頃です。少しでも、そんな浮世の憂さを忘れていただければ、そして『ラブコメ』なので、泣ける作品じゃありませんが、クスリとでも笑っていただければ何よりです。
今後とも、十勇姫達をよろしく応援お願いします。って選挙演説みたいですね(笑)。
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