ニューフェイス一問一答
第九回 4月15日発売「オルキヌス 稲朽深弦の調停生活」 著者:鳥羽徹さん インタビュー
――まずは、小説を書き始めたきっかけから教えてください。いつごろから書いているのか、投稿歴はどのくらいなんですか?
よくぞ聞いてくれました。僕が小説を書き始めたきっかけはですね、それはもう波乱万丈にして紆余曲折の涙あり笑いあり感動ありでポロリもあるよ! の世界の命運を賭けた壮大、遠大、無限大な物語が
――かいつまんでお願いします。
中学時代にライトノベル業界を知ったのがきっかけです。以上。
――短っ。
まあきっかけなんてそんなものです。そしてそこから思春期特有の「これなら俺もいけるんじゃねえの!?」という根拠の無い自信に突き動かされて書き始めましたわけです。本格的に投稿し始めたのは高校時代からですが。
ちなみにびっくりするほど落選しまくりました。我ながらよく途中で諦めなかったなと思います。
――なるほど、そうすると投稿歴は5~6年というところですか。そうした積み重ねもあって今回奨励賞を受賞された「オルキヌス 稲朽深弦の調停生活」ですが、本作を書こうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
ある日夢枕に土蜘蛛が現れたのがきっかけです。
そして土蜘蛛が「オルキヌスという物語を書いて僕を活躍させるのです…」と告げて来たわけです。残念ながらオルカ語だったので僕には意味が解りませんでしたが。
――ああ、だから土蜘蛛はあんなに作中で存在感が(苦笑)。
(笑)。というのはもちろん冗談なわけですが、以前から戦いの無い物語を書こうと思っていたんです。その戦いというのは現実的な武器に始まり、超能力や魔法などを用いての戦闘なわけですが、どうにかしてそういった戦いの無い物語が作れないかな、と。
そして色々と考えた末に、会話で相手を説き伏せるシーンを思いつきまして。
さらにその時期書き上げた作品に入っていたコメディ要素が、知人の間でなかなか好評だったんです。
そういった要因が重なって、会話で物事を解決するコメディを書こうということになり、完成したのが「オルキヌス 稲朽深弦の調停生活」になります。
――たしかに、選考会でもコメディ調の面白さと、会話と行動で問題を解決していく展開が高く評価されていたと思います。ちなみに実際に書き上げてみて、どうでしたか?
書きあげて三日間ほど「これは間違いなく最高傑作! この作品ならば天下を獲れる! 織田信長なんて目じゃないぜ! ちょっと本能寺行ってくる!」と思いました。その後一ヶ月ほど「やっぱこれ面白くないわ…信長最強…」と陰鬱になりましたが。まあこれはいつものことなんですけれど。
そしてある程度頭が冷えた頃にもう一度見直してみると、やっぱりこれは本当に面白いんじゃないかなと感じました。自分がこの作品で書きたい要素と、読者が楽しめる要素が合致してるように感じられて、受賞とまではいかなくても、これならある程度いいところまではいくんじゃないかな、と。
とはいえ、コメディ以外の部分が物凄く荒かったので、GA文庫に投稿するまでに幾度となく書き直しを繰り返しました。初期の作品と投稿時の作品を見ると、ほぼ別物と言っていいぐらいですね。
――まさに「信長討ち取ったり!」ですね。ちなみにGA文庫大賞に本作を応募しようと思ったキッカケはなんだったのでしょう?
ある日夢枕に土蜘蛛が現れて「GA文庫の賞を取ってGAの意味を解き明かすのが貴方の使命です」と告げてきたのがきっかけです。嘘です。今捏造しました。個人的にGAはジャガイモアタックの略だと思ってます。嘘です。今適当に考えました。
真面目に答えると、応募した一番の理由は評価シートの存在です。
「オルキヌス」が面白いと感じたのは確かですけれど、あくまで主観ですから。
他の投稿作品がしばらく鳴かず飛ばずだったこともあって、自分の感性に対する客観的な評価を知りたかったんです。それでその時期に丁度GA文庫大賞の前期募集があったので、応募しました。
結局シートはもらえませんでしたけれど。もらえませんかね。もらえませんか。もらえませんね。
――うーん「直接会ってあれだけコメントしたではないか」と担当者が言ってますので、もらえないみたいです(笑)。ところで本作については、刊行にあたって応募原稿から結構変わったところもあるということですが?
そうですね。むしろ変わって無いところの方が少ないです。物語の根本的な方向性を除けば、ほぼ全てのシーンを改稿しましたし、大幅な加筆もしました。
特に主人公の考え方や行動についてはかなり苦戦しながら直しましたね。投稿時はかなりブレのあるキャラだったので、違和感が出ないよう重点的に修正しました。
他にも一部のキャラクターの出番が異様に増えたりしてます。投稿時はチョイ役だった土蜘蛛がどうしてあんなにフィーバーしてるのか僕も不思議でなりません。何かの呪いでしょうか。
――それはやっぱり土蜘蛛の……。ちなみに、キャラ名や設定のきっかけとなったものがあったら教えてください。
主人公の名前である稲朽深弦ですが、これは中性的な名前にしようとしてつけたものです。
ですが、それ以外のキャラクターや地域の名前などは割と適当です。幻獣の通称をオルカ、舞台となる島をオルキヌスと名付けたことについても、何か良い名称が無いかと思っていたら、たまたまシャチの学名に当たったのがきっかけですから。
設定については、会話で解決するというコンセプトを補強する形で決めていきましたね。その結果生まれたのが武力の通じないオルカという存在と、オルカと対話する調停員という役職になります。
――なるほど。作中には個性豊かなオルカ達がたくさん登場しますが、特にお気に入りのキャラなどはいますか?
キャラ的にはグラ子ちゃんこと土蜘蛛です。深弦と会話させると勝手に数ページ埋まります。
イラスト的にはハーピーのモブ子ですね。可愛すぎて死ねます。死にました。死んでます。
作者的にありがたい位置にいるのは深弦のサポート役ともいえるオリーブですね。数少ない抑え役なので居てもらうととても助かります。
深弦も好きですけど、あの子の性格は僕には眩しすぎる……。
――そんなキャラ達が活躍する本作にこめられた思いを教えてください。
広がる貧困。消えぬ差別。枯渇する資源。低迷する経済。終わらない戦争。破壊される地球環境。それら一人の人間が解決するにはあまりにも大きく、しかし全ての人類が直面している問題に対して、この作品で一つの答えを指し示す!
などといった思いは全く込めず、ひたすら気楽に楽しんでもらえるように書きました。
――込めてないんですか。
ええ、全く。
――なんて力強い断言……ちなみに「楽しんでもらえる作品」とするために、特に意識したところなどはありますか?
見どころはやはりキャラクターの掛け合いですね。
そこで強く引き込めなければ誰も読んでくれないと思ったので、いかにして面白い掛け合いをしてみせるかは、全てのシーンで徹底的にこだわりました。
電車の中で読めない作品を作る、が個人的な合言葉です。
――確かに、掛け合いのクオリティの高さは本作の大きな魅力だと思います。さて、最後に読者に一言お願いします。
まだまだ未熟者ですが、これからもより面白い物語を作れるように精進していきます。
どうぞ、末永くよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
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