受賞者インタビュー
第十二回 5月15日発売「無限のリンケージ ―デュアルナイト―」 著者:あわむら赤光さん インタビュー
――小説を書き始めたきっかけは? いつごろから書いているのか、投稿歴など教えてください。
小説モドキは中学生のころから書いてました。当時、ちょうど角川さんの「ロードス島戦記」ブーム真っ盛りでして。ほんと~~に素晴らしい作品なのですが、ただ刊行ペースが今だとありえないくらい遅かったんですね。
で、「ロードス島戦記」はメディアミックスが盛んでしたので、小説として発売されるより先に、色んな情報が小出しにされてたんです。主要キャラの結末がわかってたりとか。
これがまた、僕たち読者の妄想をかき立てるかき立てる。続きが出ない、でも半端に情報がある、もう生殺しでした(笑)。だから待てなくて、その先行情報を元に続きを自分たちで書いてみたり。で、実際に続きが刊行されると、(当然のことですが)自分たちが妄想してたものより一億倍すごいものが読めますから、ますます心酔するという。ヒマをもてあました学生時代だからできた、贅沢な楽しみ方ですよね。今にして思うと。
それが僕の物書きとしての原点です。他社作品の宣伝になってしまって、申し訳ありません(笑)。
――いえいえ、大丈夫ですよ(笑)。
投稿歴の方は五年です。始めたのは二十七の時ですから、相当遅いかもしれません。
最初の三年は箸にも棒にもひっかかりませんでした。四年目に某賞で初めて一次選考突破をしたのを皮切りに、以後ずっと、ある程度はひっかかるようになりまして、多少は実力がついてきたんだな、と大喜びしました。それまでは暖簾に腕押しって感じで、虚しかった(笑)。僕の頑張りって意味あるんだろうか、って。
ネットとかでよく言われるんですよ。一次突破くらい簡単にできないようじゃ才能ないから、投稿諦めろって。あと、三十歳すぎたらもうダメとか。僕自身何度諦めかけたことか(笑)。けど、やめなくてよかったです。ですから、もし僕と同じような思いをしたことがある方がいらっしゃいましたら、絶対やめないで欲しいですね。
――継続は大事ですね。ちなみに、応募作品を書こうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
プロデビューしたくて(笑)。
いや、冗談です。えー、まー、そのー、編集部に怒られそうで怖いんですが、ヨソ様の賞に投稿する作品を書いてたんですね? で、友人に批評してもらったんですが、「×××を■■■■した方が面白くなるよ!」ってアドバイスしてくれたんです。
――えー、ただ今、重大なネタバレが出たので、編集部により伏せ字とさせていただきました。
フォローありがとうございます(笑)。ただ、僕はそれに対して渋い顔したんですよね。読み手として×××の■■■■テクニックは好きなんですが、書き手としてはずっと避けてた部分があって。安易に小手先のテクニックを使うと読者様を混乱させるだけで、効果薄しってなりかねないんで。
ところが、その友人があんまりしつこく「修正しろー」「修正しろー」と言うもんですから、夢にまでうなされるようになってしまいまして。妖怪かよって(笑)。「んなら、メタメタにやったらア!」って逆ギレして書いたんです。読んでもらった作品とは全然別の新作を(笑)。
それがこの「むげりん」というわけです。
ちなみに問題の作品の方は、結局修正しないまま投稿しました。落選しました。友人のアドバイスは素直に聞くべきっていう好例ですね。これ、格言にしたいなあ。
――なるほど。受賞作はヤケクソの産物である、と(笑)。ところで、実際に作品を書き上げてみて、どうでしたか?
こいつは傑作だ、と(笑)。自画自賛かっこ悪いですか? すいません。
よく聞く話なんですが、「頭の中では誰でも傑作が作れる。しかし、書いてみると凡作になる」というニュアンスのお話があるんですね? 実際そうだよな~とヘコむことしきり。
ただ、本作に関してはかなりイメージ通りに書けたという、手応えがありました。さっきお話しした通りなんですが、友人のアドバイスがきっかけになって、強烈なインスピレーションを得ることができたんです。おかげで本作は二十日で書き上げることができました。自己ベストですよ。普通は長編一つ二ヶ月くらいですから。もうびっくり。そういう勢いもあって受賞できたのかもしれません。
――ちなみに、GA文庫大賞になぜ本作を応募しようと?
えー、またも編集部に怒られそうで怖いのですが、正直に申しまして、僕はライトノベルと名のつく(?)レーベルさんには片っ端から投稿しておりました。GA文庫大賞に応募したのもその一環といいますか(ゴニョゴニョ)。
――うーん、怒られないですむような話もお願いします。
では、この場を借りて言い訳させていただきます(笑)。ライトノベルってめちゃくちゃ面白いじゃないですか。どちらのレーベルさんでも、素晴らしい作品がたくさんあるわけですよ。というか、素晴らしい作品のないレーベルなんてあるわけないんですよね。資本主義に反してる。潰れてます。
ですから、僕的には好きなレーベルさんしかなくて、デビューさせていただけるならもうどちら様でも嬉しいしハッピーというわけでした。そして、幸運にもGA文庫に認めていただいたという次第です。
「なぜ、応募しようと?」というご質問に敢えて答えるなら、「そこにGA文庫大賞があったから」ですね。おお、なんか、かっこよくまとまりましたね(笑)。
――刊行にあたって、応募段階から特に変わったところなどはありますか?
タイトルが変わりました! 以上です! ……と言いたくなるくらい、あんまり変わってません。「主人公の年齢が十歳下がって十八歳になった」とか、些細な変更がいくつかあったくらいです。
些細ですよね?
――(笑)。
実は担当編集に、最初に「主人公、十代に変えない?」ってぶちまけられたんです。でも僕はそれに対して、「俺は編集部の犬じゃない! 主人公はヒゲのオッサンじゃないとダメだ! どんなキャラクターを造形するかは作家の正当な権利! その侵害には断固として戦う!」とかっこよく反論し、信念の元に応募原稿を手直しし、完成したら主人公が十八歳になってたんです。不思議ですね。
以来、僕は「不思議パワーで、朝起きたら十歳若返ってないかなー」って、ワクワクしながら布団に入るようにしてます。残念ながら、まだその兆候は現れませんが。
まあ、まじめな話、担当編集に誠実に説得されたんですね。
「三十二のあわむらさんから見れば二十八の男なんて、まだまだ人生半ばの若輩だってわかってるでしょうが、メインの読者様である中高生から見れば、二十八といったら大人も大人、人間として完成されてないとダメなんですよ。二十八のオッサンの悩む姿なんて、見苦しくて誰も見たくないんですよ」って。
僕は焦りましたよ。「ヤッベ、俺、中高生のハートつかんでねえ……」って。
勿論、キャラの造形次第では二十八どころか三十代だってOKなんでしょうけどね。ハードボイルドものとか。ただ、「むげりん」の主人公は十代にした方がぐっと面白くなった。だから変更したという次第です。
変更してよかったなあとしみじみ思ったのは、せんむさんの表紙カバー絵が完成した時ですね。ヒゲのオッサンだったら、この最高の絵柄は無理だったなあと(笑)。完成絵を拝見した時、担当編集と二人で大喜びしました。
――そんな感じで些細(?)な変更もあった本作なわけですが、あわむらさんの中で、特にお気に入りのキャラなどはいますか?
投稿前に友人たちに読んでもらってたんですが、その時の感触だとベックスが大人気でした。ちょっとマテや、と。主人公とヒロインはどうした、と。
でも、担当編集にもベックスは褒められたんで、皆の目は正しかったんでしょうね。
僕個人としては出てくるキャラ出てくるキャラ、皆好きですよ。外見描写のないモニカやケディラにすら愛がこもってますよ(笑)。
それが本音なんですが、こういうのつまんない優等生的インタビューの典型ですよね。わかります。
敢えてもうちょっと突っ込みます。んー、主人公のチームのコーチなんか最近お気に入りですね。1巻で登場しませんけど(笑)。つまり、あれです。さっきお話した、「ロードス島戦記」と妄想の関係について、それと同じですよ。読者様にはぜひ、2巻に出てくるコーチについてたくましく妄想していただきたい! 1巻にほんのほんのちょろっとだけ、伏線入ってます。で、2巻を見た時、「やっぱなあ」とか「こう来たかあ」とか「ナナメ上すぎwww」とか楽しんでいただきたい!
問題はまあ、2巻が出るのかよって話なんですが……。
ぶっちゃけ1巻の売り上げ次第なんですが……。
聡明な読者諸賢には僕の言いたいこと、わかっていただけますよね?
よね?
――おお、俄然2巻も楽しみになってきました。さて、作品にこめられた思いなどもありましたら、教えてください。
プロデビューしたいなあって念じながら書きました(笑)。
半分冗談です。残り半分は本音です。
――なるほど(笑)。
まじめな話、いかに審査員さん、ゆくゆくは読者様に喜んでもらえる作品を書くか、それにはこだわりました。ただ書きたいものを思ったままに書き散らしたんじゃなくて、どうやったらもっと面白くなるか、色々考えながら書いたってことです。さっき「勢い」だの「二十日で書いた」だのお話ししましたが、だからといって妥協はしてなかったです。
ところが、賞をいただいてからこっち、担当編集には叱られっぱなしですよ。「漫然と書いてんじゃねえ!」「テメエ、どういうつもりでこんなセンテンス書いた!?」「この台詞にどんな効果と意味があるんだ!? 言ってみろ!?」「何度同じこと言わせりゃ気がすむんだよぉ? あん?」……とまあ、そんな具合ですね。多少脚色してますけど。ええ、多少(笑)。
僕としては注意して工夫して書いてるつもりでも、全然足りないってことです。プロの世界は本当に厳しい。でも、やりがいがあります。
そういう思いをこめて書いた作品ですから、一人でも多くの読者様に一言「楽しかった」と言っていただければもう、これに勝る幸せはないです。報われます。
――作品の見所・アピールポイント・こだわったところなどありましたら教えてください。
ライトノベルでスポーツものって少ないですよね? 表現のしにくさとか、読者様のニーズとか、色々障害があるんだと思います。僕自身、野球ものやサッカーものを書くのは難しいと思いますし。
でも、「スポーツっぽさ」それ自体はかっこいいモチーフだと思うんです。捨てるには惜しい。種目そのものではなく、スポーツにまつわるあれこれディティール的なもの、ウンチク的なものを、ライトノベルの主流であるバトルものと融合させると、よりかっこいいんではないかと。しかも、意外とそういう作品は少ないんではないかと。
だから、「スポーツっぽさ」にはこだわりましたし、「スポーツっぽいバトルもの」ってのが本作のアピールポイントですね。
あくまで「スポーツっぽい」ですから。王道バトルものですから。あとちょい恋愛風味。ほら、王道(笑)。だからスポーツものは苦手って人も大丈夫です。バッチこいです。むしろ、お願いしますから読んでください。「プロスポーツ選手ってお肉食べられないんだ……」とか色々発見もあると思います。そういうとこ、見所の一つです。
――最後に読者に一言おねがいします。
まずは本屋でお手にとってくださいませ。
どうぞ、立ち読みなさってくださいませ(店員さんにハタキで叩かれないようにね☆)。
で、お気に召したら、お買い上げくださいませ。ぜひぜひ、よろしくお願いします。
ただ、パラパラーっとめくって読むのだけは勘弁してください。話の構造上、色々台無しになります。最初から1ページずつ読んでいっていただけると、幸いでございます。
あ、あとがきは先に読んでくださってけっこうです。僕も「あとがき読んでから購入決定」派です(笑)。
「バファ○ン」と「むげりん」の共通項は、半分優しさでできてることです!
――残り半分は?
勿論、営利主義でできております。
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