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受賞者インタビュー
第十三回 8月15日発売「魔法の材料ございます」
著者:葵東さん インタビュー



――まずはじめに、小説を書き始めたきっかけを教えてください。

 小説を書き始めたきっかけは、15年前図書館での運命の出会いです。「小説工房」という本でして、小説は読むより書く方が楽しいと銘打っていました。当時主流だったパソコン通信のNIFTY-Serveで、プロ作家の指導の元に小説の修行をする人達の奮闘がつづられていました。

 読み終えた僕はすぐにNIFTY-Serveに入会、小説工房に登録し「10年で本を出す」と大風呂敷を広げて修行をはじめました。好評だった作品がPDAの小説文庫に登録されるなど、それなりの成果もあげました。

 小説工房が活動を終えてからしばらく、あまり作品を完成させない時期が続きました。このままではいかんと、初心に帰りました。僕は子供の頃から本が好きで、特に少年時代に胸をときめかせた冒険小説が忘れられません。それまで一般向け小説しか書いた事のない僕でしたが、現代の少年達にも夢を、と一念発起してライトノベルを目指す事にしました。

 一般向け小説とライトノベルとの差は大きく、後で編集さんに指摘されたことですが、僕はライトノベルをろくに知らずに目指してしまったのです。そのためGA文庫大賞に応募するまで3年ほど、鳴かず飛ばずの投稿時代が続きました。

――なるほど。一念発起して15年とは随分かかりましたね。また、一般向け小説とライトノベルの差が大きかったということですが、ライトノベルを書く際に「魔法の材料」をテーマにしようと考えたのはなぜでしょうか?

 ファンタジーの学園漫画で、魔法使いが魔法を披露した際に触媒を使ってしまい、次の授業に支障を来すというネタがありました。それで魔法使いがいる世界なら、触媒を売る商売が成り立つと思いつきました。触媒は、化学では「化学反応を引き起こすがそれ自体はなくならない」性質がありますので、消費してしまう物質は別の名前が良かろうと、「魔法材料」という言葉をひねりだしました。あとはもう、魔法材店で何が起きるか考えるだけだったので、すらすらとストーリーは出てきました。すらすら出るあまり、今では壮大な大河小説にまで発展してしまいました。まさか単発ネタがここまで育つとは、本人が一番意外です。

――「壮大な大河小説」ですか(笑)。続刊にも期待したいところですが、気になる一作あたりの執筆期間はどのくらいですか?

 当時は半年で二作を同時進行で書いておりました。ちなみにもう一作は「魔法の材料ございます」の前日譚で、主人公と相棒の剣士との話でした。平均すると一作3ヶ月ですね。プロットで2週間、初稿で1ヶ月、頭から打ち直すこと2週間×2回で、残る2週間で細かい推敲です。小説工房で習った手法ですが、書いた作品をプリントアウトして朱ペンでチェック。そうしたらまた頭から打ち直すことをしています。それを2回ほどやって、全体の形ができあがります。非常に迂遠ですが、今のところは時間的余裕があるので、そうしています。

――初稿に1ヶ月ということで、プロ作家としてはよいペースでないかと思います。担当としては今後もそのペースでお願いしたいところです。さて、それではGA文庫大賞に応募しようと思った理由を教えて頂けますか。

 なにより第一回ということで「レーベル色」が無かったことと、まだ中世ファンタジーの代表作が無かったので、ねらい目だと思いました。また、希望者には評価シートがもらえる点もありました。たとえ落ちても次に繋げられる、と。某氏と同じく結局もらえませんでしたけど。

――評価シート……送ります。それはさておき念のため聞いておきましょう。「GA文庫に応募してここがよかった!」という点はありますか?

 応募して良かった点は、それはもう奨励賞を頂けた点に尽きます。GA文庫編集部は見る目があります!

――だそうですよ全国の投稿者のみなさん! 玉稿お待ちしております。「ここが悪かった!」点はあえて聞かなかいことにして、続いては採用されたときの思いと、地獄(?)のような修正作業の感想を聞かせてください。

 採用された時はもう飛び上がりましたね。留守番電話に入っていた「奨励賞に決まりました」を何度も何度も聞き直しました。

 修正は地獄じゃなかったです。直すたびに作品の完成度があがっていくので、楽しみでもありました。え、ボツの苦しみ? そういう嫌な過去はすっきり忘れる機能を搭載しておりますので、今では良い思い出しか残ってません。流した涙も乾けばミネラルです。

――10回近く書き直してもらいましたからね(笑)。今後もビシビシ行きますよ! さて、ミネラル満点の「魔法の材料ございます」ですが、作中で特にお気に入りのキャラクターなどいますでしょうか?

 ストーリーを紹介してくれているサシャも捨てがたいですが、ここはリア=メイで。今はまだ恋に恋する少女ですが、大器の片鱗を見せてくれます。主人公との掛け合いも楽しく書かせてもらいました。もしシリーズ化されるなら、主要3人のなかで一番成長するのがこの子でもありますし。まあ、一番子供ですからね。しかも素晴らしいサービスショットまであります。必見です。

――リア=メイはいろいろな意味で成長が期待できそうですね(口絵参照)。金髪にするか赤髪にするかで揉めたことも今では良い想い出です。そのほか、キャラクター以外でこだわったところ、アピールポイントなどがありましたら教えてください。

 ネタバレしないようアピールするのは苦しいのですが……後であっと驚かせる仕掛けがあります。そこに至るまでの伏線とか、キャラクターの言動とかにこだわりました。あとは魔力の強弱が、勝敗の決定的要因ではないこととか。相手を上回る超々破壊力の魔法で勝つ流れに、思い切り逆らったのがこだわりです。

 とりあえずアピールポイントは、イラストです(笑)。もう、蔓木鋼音先生のイラストには一目惚れです。

――確かに。カバーのサシャを気に入って頂けた方は、ぜひ「2枚」めくってリア=メイのイラストも楽しんで頂きたいです。ということで、キャラクターと物語について聞いてみましたので、今度は好きなライトノベル作品を聞いてみましょうか。

 他社様の作品でも可ですか? ……助かりました。ポリ赤の他は傾向を見るため新人デビュー作くらいしか読んでないもので。

――たったいま編集部一同の評価がストップ安、監理ポスト行きになった気がしますが、それについてはまた後日小社ビル裏にて話し合うということで、続けてどうぞ。

 ……はい。完結したシリーズでは「ロードス島戦記」と「スクラップド・プリンセス」、「イリヤの空、UFOの夏」です。

 刊行中なら「フルメタル・パニック」と、「バカとテストと召喚獣」、それと「這いよれ! ニャル子」さんです。

――最後ニャル子を入れてバランスを取ったつもりか! ということで、最後に投稿者のみなさん、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

 投稿者のみなさんへ。他社さんの事は知りませんが、GA文庫の編集さんはとても親身になってくれます。デビュー先でお悩みならば、お勧めです。

 読者のみなさんへ。読む時間を割いただけの価値はあります。ぜひご一読ください。

 また、作家の中には著作を図書館で読まれるのを不本意とされる方もいらっしゃるようですが、僕はそうではありません。僕も図書館を大いに利用している口ですから。化学物質過敏症なため、新刊はインク臭が飛ぶまで手を付けられないのです。既に人の手で開かれ、インクに含まれる有害成分が揮発している図書館の本は、安心して手にとれます。

 ですから地元図書館に「魔法の材料ございます ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚」を購入希望してくださると、大変嬉しく思います。

 そして最後にGA文庫編集部のみなさんへ。そろそろ増員した方がよろしいのではないでしょうか? 今後新人が増えていきますし、ねえ。

――ふふふ。編集部増員については「魔法の材料ございます」が100万部売れたらきっと成し遂げられることでしょう。みなさんどうぞよろしくお願いします!

 

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