受賞者インタビュー第三十八回 第4回GA文庫大賞《奨励賞》受賞作3月15日発売「ごはん食べたい!―なんでもしますから?―」 著者・天乃聖樹さんインタビュー
――まずは、この作品を書こうとしたきっかけからお聞かせください。
この作品の前にGA文庫大賞で最終落ちした作品が、自分のすべてをぶつけたものでした。テーマとかキャラの心理とか、『自分が書きたいもの』を全身全霊で叩き込んで完全燃焼しちゃいまして。じゃあ今度は羽を伸ばして、徹底的に『自分が読みたいもの』を書こう! と思いました。つまりハーレムです。
――それでは、GA文庫大賞にご応募した動機は?
ここと某社と某社しか選考を通過しなくてですね……まあそんなことはいいじゃないですか! 今日も宇宙は平和ですね!
――平和ですね! ところで、GA文庫で受賞する前から、ずっと文章のお仕事に携わっていらっしゃったそうですが?
はい。十九歳のときから、IT関連の英和翻訳をさせていただいていました。海外のパソコンソフトのローカライズを行う産業翻訳です。それと、二年前からプレイバイウェブのゲームマスターのお仕事をさせていただいています。
――興味深いです、もうすこし詳しく教えてください。
株式会社フロンティアワークス様のプレイバイウェブ『蒼空のフロンティア』でゲームマスターのお仕事もさせていただいています。プレイバイウェブというのは、TRPGやPBMをウェブ上で遊べるゲームのことですね。
――ライトノベル作家さんにはTRPGやプレイバイウェブ、PBM出身の方が結構いらっしゃいますね。
ですね。『人類は衰退しました』の田中ロミオ先生や、『フルメタル・パニック!』の賀東招二先生もそうだと聞き及んでいます。私がプレイバイウェブに興味を持ったのも、そういった影響が強いです。
――そうした経験のなかで培ったものなどありますか?
『蒼空のフロンティア』では膨大な数のキャラを動かす方法や、そこから大きなストーリーを編んでいく技術など、随分と鍛えていただきました。
――なるほど。それでキャラクターひとりひとりが自然に書き分けられている感じがするのかもしれませんね。それでは、続いて受賞作についてお聞きします。刊行にあたって応募原稿から変更されたポイントはありますか?
元々は序盤で明らかになっていた重要な情報が、物語の終盤で分かるようタイミングが変わりました。
――たしかに、そこは大きなポイントですね。それから、応募原稿の執筆で苦労したことなどあれば聞きたいです。
特にありません。なんだか神がかり状態になっていて、悩むことなく二週間で書き終わりました。
――おお、すごい! 犬のレベッカにハチミツ塗りたくってハフハフ言いながらむしゃぶりつくところとか、なにかが降りてきている感じですものね。ところで、原題の『ご飯食べたい』ですが、かなり挑戦的というか、異様なオーラのあるタイトルですよね。これはどうやって決めたのですか?
普通のタイトルでは埋もれてしまうと思ったので、世に出ているラノベのタイトルを分析しました。○○の○○系、四文字タイトル、長文タイトルなどが主なところでしょうか。私の知る限り、登場人物の欲求や気持ちを短文でストレートに訴えるタイトルはありませんでした。それで、『ご飯食べたい』に。
――ストレートな欲求……ご飯食べたい……たしかに! 登場人物の気持ちがストレートに出ていますね。それでは、ちょっと趣向を変えて、好きな作家さんや作品は?
人生を変えた作品は『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』です。読む前まで真面目だった私ですが、物事の見方が完璧に変わりました。角度を変えて見れば、この世界はギャグの宝庫です。たとえ日常生活でも、面白いことはいくらでも見つかります。ライトノベルでは『人類は衰退しました』が一番好きです。童話風のメルヘンチックな世界と、随所に隠れたブラックユーモアがたまりません。
――キャラを生み出したきっかけを教えていただけますか?
ネガティブも突き抜ければギャグになるんじゃ、と思って生まれたのが小雨です。主人公はヒロインと対になったほうがいいので、ポジティブな晴斗が発生。小雨は自尊心が非常に低いキャラなので、対になるよう、自尊心が非常に高い鈴音が誕生。鈴音も小雨も清純派なので、お色気要員としてお姉さんを入れました。
――ほほー、小雨ちゃんを起点として、対照的なキャラを配置していった結果なんですね。あれ、でも、そうすると太郎は……?
太郎は……よく分かりませんね。気付いたらそこにいたというか。え、君……誰? 誰なの……?
――コワイ! えー、お気に入りのキャラはいますか?
鈴音です! お嬢様は至高にして崇められるべき存在なのです!
――イラストレーターの『めがりす;』さんのことはどう思いますか?
こ、ここで言っちゃっていいんですか!? 一目惚れです/// あ、いや、恋愛的な意味じゃなく! 担当さんが候補として挙げてくださったときに目を惹かれたのです。その優しくて可愛らしくコミカルな画風が『ごはん食べたい!』の世界にぴったりだなーと思い、「この方がいい! この方がいいんだい!」と駄々をこねました。
――こねられました(笑) さて、作品のアピールポイントやこだわった点などはありますか?
とにかく『軽く・明るく・読みやすく』を心がけました。普段は漫画をメインで読んでいらっしゃる方や、文章を読むのが苦手な方でも楽しめるように、表現を分かりやすくし、文章量も極限まで切り詰めています。
――素敵なこだわりだと思います。それでは、続けて読者様へのメッセージもお願いします。
『ごはん食べたい!』はギャグとイチャラブを追求したストレスゼロの作品です。後味の良さは保証つきですので、『のんのんびより』や『ゆるゆり』などが好きな方は是非読んでいただけると……! 私も大好きです! 『ごはん食べたい!』は百合ではありませんが!
――GA文庫大賞への応募者さんに一言どうぞ。
長編をコンスタントに仕上げられる方なら素質はあります。『諦めなければ夢は叶う』という言葉は事実です。何年諦めなければ叶うのかは人によって違いますが。私は六十歳、百歳、二千歳になっても応募し続けるつもりで書いておりました。
――どれだけ長生きするつもりだったのか気になりますが、この辺で。ありがとうございました!
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