受賞者インタビュー第四十三回 第5回GA文庫大賞《奨励賞》受賞作、11月15日発売「神託学園の超越者〈トランセンダー〉」 著者・秋堂カオルさんインタビュー
――よろしくお願いします。自己紹介をどうぞ。
第五回GA文庫大賞〈奨励賞〉を頂きました秋堂カオルといいます。よろしくお願いします!(カシュ!
――ちょっと待って下さい、それは何ですか?
何って……酎ハイです。ここは新人の公開処刑場なんですよね!? なら最期にお酒飲んだっていいじゃないですか! どうせ酷い目に合うんですから!!
――没収します。何飲もうとしてるんですか? 真面目にやって下さい!
大真面目です!「神託学園の超越者〈トランセンダー〉」を読んだ友人から「あれを新人賞に送ったの? ふざけてたの?」と驚かれましたが、ずっと真面目に生きてます!
――とにかくお酒は駄目です。今さりげなく取り出した2本目も没収します。そんな顔しないで下さい。……では気を取り直して、『神託学園の超越者〈トランセンダー〉』が発売しましたが、今の心境はどうですか?
《六行視》が読者の方々に予想以上に受け入れてもらえていて、とてもびっくりしているのと同時に、ほっと一安心してます。内容が変化球なだけに、受賞を聞いてからずっと不安だったので……。
――小説を書き始めたきっかけは何だったんですか? 創作はいつ頃から?
大学からです。漫画研究同好会に所属して絵を描いていたのですが、2年になって忙しくなり、描く時間が取れなくなりまして。で、物語を作ることに興味があったので小説に手を出しました。講義中にパソコンを開いて書いていても、真面目だと思われるだけでバレませんし……フフフ。当時は単位を千切っては投げ、千切っては投げして同好会用の原稿を中心に書いていました。本格的に書いて投稿を始めたのは2年くらい前です。
――なんだか悪い顔してます。GA文庫大賞への投稿のきっかけは何だったんですか?
偶然に締め切りが近かったことが一番大きな要因でした。GA文庫は自由な作品が多いというイメージもあったので、「こんな馬鹿やってる作品を真面目な顔して送ったらどんな評価シートが返ってくるんだろう?」という悪ノリ的な興味もありました。なので受賞の連絡が来た時は「やべぇ見つかった! 怒られる!」と思ったくらいです。ところで受賞しても評価シートって頂けるんですか? 頂けるのであれば欲しいのですが。
――それはまぁ追々。《六行視》はどういった経緯で生まれたんですか? 何故六行なんですか?
陰陽五行思想が大きなヒントです。文乃くんの力は世界を俯瞰するので、更にその上を行こう、ということで六行を入れた《六行視》となりました。
――ほほう、なるほど。そんな意味があったんですね。
あ、嘘ですごめんなさい。友人がカッコイイ感じに考えてくれたので、それを拝借しました。何だか凄くそれっぽいですよね!
実際は、文乃くんが結末まで物語を読めていたら面白くないので制限を設けようというところからスタートしました。確か十二行視くらいです。でも頭の中で十二行先まで展開しながら文章を書くという作業に私が音をあげまして、書けるギリギリの力量である六行に辿りついた感じです。
――さて、自業自得で締切が早まったところで、次の質問にいきましょう。
お、お酒返して下さい!飲まなきゃやってられないってんですよ!!
――飲ませませんのでどちらも頑張って下さい。質問ですが、改稿の際に気を付けたことはありますか?
もう止めたい……後半部分は少し手を加えましたが、担当さんと相談してなるべく投稿時の状態のままで行こう、と決まりました。ですが修正を加えなきゃいけない箇所もありました。行数がズレることによって容易く世界が破綻しかねないので、決まった行数の中で別の描写を入れる必要があって……それが大変だった記憶があります。あと《六行視》をどう読みやすくするかも悩みました。
――《六行視》は投稿時より読みやすく、特徴的になっていますね。
始めは《六行視》のマーカー部分は入れないで進めていました。で、結構ギリギリになって、分かりやすくするためにどうしようかという話になって。戻ってきた著者校正がマーカーで無残にも真っ黄色になっているのを見て、《六行視》にマーカーを引いちゃえ作戦を思いつきました。お忙しい中で担当さんには4パターン程作って頂き、その中から選んだ感じです。お世話になりました。もうしません。たぶん。
――最後にブレたのが気になりますが……《六行視》以外でも作品全体で気を付けた点などありますか?
《六行視》という突飛な設定を柱にしているので、全体の読みやすさには特に気を配りました。投稿時は《六行視》にマーカーが引かれていない状況でしたから、とにかく読みにくくて分かりにくい。なので、他の設定部分やお話を軽くしたり簡単にしたりして、《六行視》に集中してもらおうと気を配りました。
――何か特別な思い入れのあるキャラクターはいますか?
みんな書いていて楽しいのですが、主人公の文乃くんには特に思い入れがあります。彼が出てくると情報の出し方に制限が生まれたり、行数の計算が必須になったりと、作者との強制殴り合いイベントが発生するからですね。顔を顰めながら書いた記憶があります。そういった意味では文乃くんは生涯忘れられない喧嘩仲間になったと思います。拳で語り合う友情! あぁ素敵っ!
――てっきりヒロイン達の話になるかと思ったのですが、男臭くなりました。では最後に、GA文庫大賞の応募者へ一言どうぞ。
「受賞してやる!」という気合いも大事だと思うのですが、何よりも楽しむことが大事ではないかなと思います。自分が楽しんで書けていないものが、誰かを楽しませられるとは思えないからです。あとは外の世界をよく観察することでしょうか。何気ない一言、ワンシーンの中にもしかしたら、あなたの物語を鮮やかにする伏線が転がっているかもしれません。
――本日はありがとうございました。お酒飲んでもいいですよ?
やった!!ありがとうございました! (お酒を飲みながら)それで締切の件ですが……えっ、駄目ですか? そうですか……。
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