受賞者インタビュー第五十一回 第六回GA文庫大賞《優秀賞》受賞作、2月15日発売「路地裏バトルプリンセス」 著者・空上タツタさんインタビュー
――ではまず自己紹介からお願いします。
どうもーお初にお目にかかります、空上タツタと申します。
読み仮名はカラアゲでもクウジョウでもどうぞ御随意に。
――「ソラウエ タツタ」です。ひねった読みだと書店員さんがソ行に置くかカ行に置くか迷うって話したでしょうが。
あぁ、頭文字Dがア行に並べられちゃう感じの……ハイ、というわけで空上でございます。よろしくお願い致します。
――はい、変なテンションのご様子ですがよろしくお願い致します。ではさくさく進行していきましょう。『路地裏バトルプリンセス』ですが、どのような動機、きっかけから執筆を始められたのでしょうか。
さかのぼること昭和初期、
――さくさく答えろって言ったでしょうが。大体アンタ平成生まれだし昭和の話題出す必要絶対ないだろ。
せっかちだなぁゆとりがないなぁ。
――私昭和生まれなので。
いやん、鋭い切り返し。好き。
――そうですか。私は空上さん、好きでも嫌いでもないです。
口ではこう言ってますけどこのひとが私と私の作品猛プッシュしてくださったこと、他の編集さんに聞いてますからね私。
――……だれだ喋ったの。いや犯人探しはあとでいいです。いい加減作品に触れなさい。本作は格闘とコスプレが主軸のお話ですが、特にどういった部分を大事になされましたか?
えらい早口で話題変えようとしてますよこのひと……。エー、元々戦闘シーン書くのが好きでして、投稿サイトなんかでもよく異能バトルとか書いてたんですね。で、そんなある時空手をやっていた知り合いに、リアル格闘における攻防のアレコレを聞く機会があり、「アラ、格闘戦って私の書く異能バトルと結構近いわ」なんて思いましてね。戦闘などを特に気を遣って仕上げたのがこちらの品になります。
――異能バトルと格闘戦が近い……ですか? ファンタジー路線とリアル路線といった感じで、だいぶちがう気もしますが。
それはそうなんですが、いろんな『制限』がある点、それにより発生する読み合いとかは似通ってると感じたのですよ。
たとえば魔法バトルでの「呪文詠唱が隙になる」「属性での優劣関係」みたいに、「零距離でしか使えない」「この構えのときしか打てない」……これは創作的アレンジが大きく入ってますが、極端な言い方すれば格闘でもそういう『制限』があるわけです。この前提をいかにして乗り越えて相手に攻撃するか? そういう観点が面白いんじゃないかとね。
――なるほど。戦いの組み立てが似ていたわけですね。しかし零距離でしか使えないといえば本作主人公・日月とヒロイン・來未の使う必殺技ですが……寸勁というか、なんというか。
そういや選考中のツイッターで、ある編集さんが「どこの陸奥○明流だコレ」って言ってたのを見ましたけどアレやっぱこの作品についてだったんですかね。
――他にも通背拳とか無間もあがっていましたね。
やっぱりですか。そういった零距離パンチの印象からなんとか抜け出ようともがいた結果が、表紙絵でも來未がポーズとってる「銃を模した手の構え」だったんですけどね……絵的なイメージが違えば少しは、と思いまして。
――そういえば霊丸も零距離で撃つのがありましたよね。
あっなんか担当さんがじわじわ削ってくる。……でもなんにせよ一打必倒零距離攻撃というのは物語のロマンとして外せないなーと思った次第でして。
小兵が巨漢を制すというか、ジャイアントキリングというか。
――主人公の日月は身長一六〇足らずで体重も四十八キロですもんね。
あんまごついと女装がね。コスプレっていうのが、格闘に並んでこの話を書くきっかけになった題材なので。
――単なる男の娘スキーな欲望を満たすための要素ではなかった、と。
その通りです。『自分を変える』がこの物語のテーマでして、それを書くため必要に思えたのが格闘・コスプレの二つの題材、ひいては女装主人公の日月だった「だけ」です!
――おお、真面目ですね。そんな理性的な思惑があったとは。
ええ。……ですが、正直平つくねさんの描いてくださったコスプレ日月見てるとたまんないですね。
――え。
テーマとか題材とか明後日の方にブン投げて欲望に全力疾走したくなりますね。
――おい。
他二名のヒロインと人気が割れるんじゃないですか、コレ!
青少年たちはこのイラストで道を踏み外すんじゃないですか、コレ!!
――欲望全力疾走なのはアンタでしょうが……。話を戻します。テーマが『自分を変える』という事でしたが、そこに格闘要素やコスプレ、加えて主人公の日月どう絡むのでしょうか。
えー、イラストの話をしたいんですが……はい、わかりました話しますからその目やめてください。
えっと、つまり……強くなるための格闘術と外見を別物にするコスプレはどちらも『自分のなにかを変える』という点が重なるので描きたいテーマへと焦点を合わせる一助となると考え二つの題材を引き立たせるようなギャップを念頭においたキャラが「小柄ゆえに力なく」「異性のキャラへコスプレする」日月朋昌という少年ですハイ終わり。イラストの話に戻ります。
――大事そうな部分を早口で流さないでください。
いや大事な部分ですよイラストは。初対面の印象は外見七割って言いますし、ライトノベルなら外見イコールイラストじゃないですか。大事な部分は語っておきたくなりますよ。
――これどういうインタビューかわかってます?
私が刊行するにあたってなにを大事にしていたかでしょう?
――いやそうなんですけども……。その前、最初にひとつ質問してたことがありますし、いい加減そっちを語ってください。
最初の質問……? あー、あれですね。そういえば先を語ってなかった。
――ではどうぞ。
さかのぼること昭和初期、
――戻んな。
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