政宗「4月のGA文庫新作『伊達エルフ政宗』本編ではまだ登場しない全国の武将を地域別にいくつかピックアップして紹介していくぞ」
幸村「今回は関東・東北編ですが……本編の舞台でもあるため、関東南部と、東北北部の紹介になります」
■里見ライカンスロープ義頼(本拠:館山城 千葉県館山市)
ライカンスロープは日本語に直訳すると狼男とでもなろうか。
そのため、里見家の家中も屈強な男たちが揃っている。
この里見家はサキュバスの北条と領地を接しているので昔から仲がぎくしゃくしているが、それは里見義頼(さとみよしより)もそうだった。
彼の場合は妻がサキュバスだったにもかかわらず、北条攻めに舵を切っている。
だが、現代人が当時の勢力地図を見ると不思議に思うことが多い。
領地だけを見れば、里見の土地は半島に押しこめられている。こんなの、北条はすぐに滅ぼせるのではないかと思ってしまうのだ。
しかし、それは海の道を見ていないがための落とし穴である。
「ガウガウー! また海を渡るガウー!」
義頼は部下たちに出陣を要請する。
「ガウ!」「ガウ!」「ガウ!」
「犬かきでサキュバスの土地を荒らすガウー!」
「ガウ!」「ガウ!」「ガウ!」
そう、地図を見ると、たとえば館山あたりから海を渡るとサキュバスの支配する三浦半島は相当近い。もうちょっと頑張って泳げば小田原にも行ける。
この狼男の海からの攻撃は対処がしづらいので、サキュバスは手を焼いていたのだ。しかもライカンスロープの精鋭は犬かきが速い。船で来たなら沈めようもあるが、群れで泳いでこられると対処できない。
結局、北条は全然里見をつぶすことができなかったのだ。
■南部ノーライフキング信直(本拠地:三戸城 青森県三戸郡三戸町)
「また、殺されかけましたよ……」
南部信直(なんぶのぶなお)は体に矢が刺さったまま帰城した。
城の周辺を散歩に出たら、何者かに攻撃されたのだ。なのであわてて帰った。
といっても、彼女にとっては日常茶飯事である。
彼女は当主になる前からとにかく命を狙われ続けた。もともと南部家当主の養女のような形で後継者扱いをされているところに、当主に実子ができた。となると、彼女の存在が邪魔になる。そこまではよくあることだ。
問題は当主が死んで、その子供も直後に死んでしまったことだ。おそらく暗殺だろうが、別に信直は何もしてない。だいたい、暗殺したところで南部家中でも信直派なんてたいしていないのだから、当主になれないだろう。
そのつもりだったが重臣会議で信直に任せようということになったのだという。
現在の岩手県と青森県をほぼ支配している大領主となった信直だが、反対派も多く、今でも命を狙われているという有様だ。というか、先代の葬儀に出た帰りにも殺されそうになったのだが。そんな時ぐらい許してほしい。
「まあ、死んでないからいいですけどね」
そう言いながら、刺さった矢を引き抜く。
よく見ると、彼女の顔は変に青白い。
ぶっちゃけ、彼女はすでに死んでいるのだった。だが、彼女の後援者たちが秘術を使って生き返らせたのだ。いや死んだまま動けるようにしたといったほうが正しいか。たんなる再生ではどうせすぐに暗殺されてしまうからだ。
「なんか、私が当主になってからアンデッドぽい家臣が増えた気がするんですけど、まあ、気のせいですよね」
ただ、本人はあまり気づいてないが。
「ところで、北のほうで起こってる大浦為信(おおうらためのぶ)の反乱、どうしましょう? たくさん土地を奪われちゃいそうなんですけど」
■安東アンズー愛季(本拠地:湊城 秋田県秋田市)
アンズーというのはあまり聞き慣れない種族だが、獅子の頭と鷲の羽を持つとされている獣人である。まあ、猫耳と派手な翼が混ざった種族と思えばそんなに間違っていない。
安東(あんどう)氏はこのアンズーの一族である。戦国時代にはいくつかの分家に分かれていた。
その中で、愛季(ちかすえ)は簡単に安東氏を統一することに成功した。
彼女の最大の武器は一言で言うと、その耳だった。
アンズーの中では耳は大きくとがっていればいるほどいいのだが、彼女の耳は付け耳じゃないのかというほどに美しくぴんと立っていたのだ。
これで分裂していた諸氏も彼女を安東の旗印とすることでひとまず落ち着いたのだ。
――とにかく自分を神格化させていくことで支配を保っていくしかない、にゃん。
それが彼女の基本理念だった。
――そのためには何だってする、にゃん。
なお、キャラ作りのために語尾に「にゃん」をつけようとしているが、よく忘れる。
「そうだ! ……にゃん」
名案を思いついた。
「どこかのタイミングで、苗字を愛季にゃんにぴったりのかっこいいのに変えるにゃん。安東では安東氏の上には立てないにゃん」
将来的には秋田に改姓しようと考えている愛季だった。
「伊達エルフ政宗」、どうぞよろしくお願いします。