GA文庫TOP > GA文庫大賞 > 第5回GA文庫大賞(2013年)
GA文庫大賞AWARDS
第5回GA文庫大賞 優秀賞受賞者発表!
おかげさまで第5回GA文庫大賞は前期586作品、後期701作品、合計1287作品ものご応募を頂きました。多数のご応募ありがとうございました!
ここに第5回GA文庫大賞・優秀賞の選考結果を発表させて頂きます。
優秀賞
ペンネーム | 作品名 |
アダチアタル | MURDER COMPLEX |
有賀一善 (夜塚若紫よりPN変更) |
装甲少女はお好きですか? そうです! フォルムとか最高です! (受賞作品「安心と信頼の全裸率-18%」より改題) |
奨励賞
ペンネーム | 作品名 |
天乃聖樹 | ごはん食べたい! ―なんでもしますから?― (受賞作品「ご飯食べたい」より改題、好評発売中) |
秋堂カオル | 放課後プルーフリーダー |
稲波翔 | ボッチの帝王学 ―経営学を極めた俺様が女ばかりの異世界では家畜扱いなんですけど!?― |
おつかい | 魔王と姫と卑猥図書 |
数原文 | 聖人君子のラブコメディ |
※敬称略・50音順
■GA文庫編集部編集長 北村州識より
第5回GA文庫大賞の最終発表となります。
前期後期合わせて過去最高となる1,287本の応募作品の中から選抜された7本の奨励賞受賞作品。今回はそこから2本の優秀賞作品を選ばせて頂きました。まずはおめでとうございます。
全体的な印象としては、いかにも書き慣れていないような作品が目立ったにもかかわらず、レベルとしては底上げされたように思います。また、作品のテーマもいわゆる流行りモノ的な作品よりは若干定番的な落ち着いたモチーフのモノが目立ち、良くも悪くもそつのない、悪く言うと小さくまとまった作品が多かったように思います。
個人的には、もっと突き抜けたオリジナリティのある、自分だけのおもしろさを最大限詰め込んだような、流行りに迎合するのではなく、先頭切って流れを生み出すような、そんな作品を望みたい。
デビュー前だからこそ書ける、この時期にしか生み出し得ない、そんなパワーあふれる作品をぶつけてもらえれば、と思います。
さてその中で今回優秀賞を射止めた2作品ですが、それぞれ方向性が違うとはいえ、どちらも主人公たちはのっぴきならない状況に追い込まれ、そのなかであがき、戦い、そして勝利します。どちらも書き手の「これでもか!」という熱い思いが原稿という形に吹き出したもので、GA文庫編集部としても自信を持って世に送り出せる作品でした。
優秀賞
MURDER COMPLEX
PN. アダチアタル
【あらすじ】
「罪深き『赤猫』を抹殺せよ。成功したものには『死者をひとりよみがえらせる権利』を授けよう」
ある日、無貌の男・ロストマンは5人のジンクス使いを集めてそう宣言した。
ジンクスとは、それぞれに異なる条件を満たした時に、相手の命を問答無用で奪い取り、自分を含めたほかの人間に分け与えることができる能力のこと。ジンクス使いは、いわば見えない武器を持つ殺人鬼だ。
「ちょっと待て。真奈……たとえば植物状態の人間はどうだ? そいつを目ざめさせることはできるのか?」
「よろしい。では、どんな人間でも健やかなる状態で目ざめさせることを約束しよう」
5人のひとり【バジリスク】のジンクスを持つ少年・蒼馬は、目覚めぬ最愛の妹・真奈を救うため、同じ学校のミステリ研究会の少女・有栖川國子を頼り、誰よりも早く世間を賑わす焼殺魔『赤猫』を見つけ出そうと意気込むのだが……。
互いにジンクス発動の条件がわからないままで突如始まるデス・ゲーム! 果たして赤猫の正体は!?
【選評】
常にジンクスという不可視の能力に晒されることによるほどよい緊張感と、「果たして赤猫は誰なのか」という縦軸を基に、推理要素を配置していくことで読み手の興味を引っ張る作り、そして最後まで気を抜けない展開を演出し、ストーリーで読ませる秀逸さが評価されました。また、そんな物語世界に生きるキャラクターそれぞれのジンクス、背景がしっかりと考え込まれており、ややもすれば悪意ばかりが先行しそうな設定の中で、優しい登場人物たちが信念を持って生きる様は共感して読むことができます。
優秀賞
装甲少女はお好きですか? そうです! フォルムとか最高です!
(受賞作品『安心と信頼の全裸率-18%』より改題)
PN. 有賀一善(夜塚若紫よりPN変更)
【あらすじ】
落ち着け、落ち着くんだ俺。 ……今、俺こと子守山タツルの目の前には装甲姿の謎の美少女がいる。
よく見たら『装甲少女ルナルナ』のヒロインにそっくりだ。
よし、とりあえず触ってみよう――ってあれ?
「ふえええええ、死ねえええええ! 」
今度は裸になっちゃった!?
少女の名はスピカ。
なんと彼女は宇宙人のお姫様で、《完成体》の使命として地球に許婚を探しにきたという。
でもって、なぜにその候補が俺!?
さらにスピカを連れ戻すべく、最年少《三天元》ユマも動き出す!!
「…………姫と《原初体》を壊す」
【選評】
ちょっとえっちな要素から、ラブコメ要素、バトル要素、旬な要素まで、作者が書きたいであろう様々な要素をぎっしりと詰め込んだ、とてもパワフルな作品でした。それでいて話の軸となる、主人公・タツルとメインヒロイン・スピカの描写は非常に丁寧に描かれており、安心して物語の世界観に入ることができます。また、その他わき役である執事のベルゼゴレや悪友のサタケなど、GA文庫大賞の受賞作にしては珍しいほど男キャラたちの存在感があるのも好印象でした。
奨励賞
ごはん食べたい! ―なんでもしますから?―
(受賞作品「ご飯食べたい」より改題、好評発売中)
PN. 天乃聖樹
【あらすじ】
「ご、ご飯……ください」
自らを『運命を司る貧乏神』と称する超ハラペコ少女・小雨と、
「私は空腹になんかなりませんわ!」
『妖精女王の末裔』であると主張し、クラスで浮いちゃってる少女・鈴音。
深刻な空腹に悩む貧乏少年・晴斗は
『お腹いっぱいご飯を食べたい』
という切実な共通点で結ばれた二人と共に、学内で何でも屋のお仕事を始めることに(報酬は食べ物可!)
そんな彼らの最初の依頼人は、全裸の犬……いや、全裸の美人お姉さん!?
「服着ろよ!」「断る!」
僕と彼女のシャレにならないハラペコ事情!?
《GA文庫大賞受賞》のお悩み大解決ラブコメディ登場!!
【選評】
小雨、鈴音、レベッカなど個性的なヒロインの魅力がたっぷり詰まった作品で、キャラクターの活き活きとした描き方が高く評価されました。また、日常のささいな綻びから、だんだん異常なシチュエーションがエスカレートしていくというコメディとしてのセオリーをふんでいて、次に待つイベントが起こってほしいように起こる、安心感のある構成も大変よかったです。
奨励賞
放課後プルーフリーダー
PN. 秋堂カオル
【あらすじ】
【美景原高校の全校生徒に、我の力をたった今分け与えた】
約一年前に突如投げかけられた謎の言葉。
後に『宣言』と呼ばれる様になったこの言葉により、美景原高校の生徒たちは、全世界から以下の略称を与えられえることになる。
《超越者》=人の範疇を超越した能力を備える、神に選ばれし存在、と。
「よっしゃあああああぁぁぁぁ! 昨日の決着をつけるぞ!」
「望むところだ! 勝つのは俺だぁぁぁぁ!」
「ちょ、ちょっとあんたたち、いい加減にしなさいよ!」
「くそ……卑怯だぞ委員長! いや、《衝撃姫》! 俺はもうとっくに負けてるじゃないか!」
「そんなの知らないわよ《暴風域》! デリカシーとか考えなさいよ!」
教室のあちこちから飛び交うのは、拳大の火の玉。か細い稲妻、そして雹の嵐。これが今の、美景原高校の放課後。そんな超越者達の能力自慢を前にして、《六行視》渡良瀬文乃は姿の見えない神に問いかける。
「答えろよ……聞こえてんだろ! 神サマ! 俺たちを、この世界をどうする気なんだ!?」
世界に、神に、迫るとき──本当の【物語】は動き出す!
異能バトルin放課後ファイトクラブ、ここに開幕!
「終わらせよう、始めるために」
【選評】
十人十色、多種多様の能力者たちがこれでもかというほど、バトルシーンの爽快感を演出してくれる、迫力のある作品でした。特に主人公・渡良瀬文乃の能力である《六行視》=小説として書かれているこの世界の六行先を読む、という発想は、小説というメディアだからこそ最大限に活かされる設定であり、読み手としてかなりの衝撃を受けました。無能力者であるヒロインの杏奈と協力して闘うという構図も、共感がもてて非常に良かったです。
奨励賞
ボッチの帝王学 ―経営学を極めた俺様が女ばかりの異世界では家畜扱いなんですけど!?―
PN. 稲波翔
【あらすじ】
「何で女しかいねえんだ!? ハーレム築き放題じゃん!」
ファンタジー色豊かな街並みには、見渡す限り女女女!
夢は希代のハーレム王、高校生にしてそんな夢をみていた近江帝羅にとって、ある日飛ばされた異世界は、一見この世の楽園に思えたのだが――、
「男性がハーレム? それは不可能。女性は男性を所有できるが、逆はありえない」
実は極端に女尊男卑な世界だった!?
おまけに――。
「胸を触られた……。私は彼と婚姻しなければならない」
「こんなキショイのを種にするの? エレミヤだったら、もっといい種選び放題なのに!」
「賢者は理を破らない。大丈夫。知能レベルは高い……はず。餌代くらいは働くかもしれない」
「仕方ないわねー。じゃ、とりあえずはペットってことで」
エレミヤに魔法(行使術というらしい)で脅され連れてこられた商会では、幼女に種馬兼ペット扱いまでされて!?
「男なめんなこらあああああああ! お前らちょっと、いや、だいぶかわいい顔してるからって調子のりやがってええええ」
「悔しかったら金貨の一枚でも稼いでみなさいよ」
地球の英知と男気で女を見返せ! 怒濤のハーレムファンタジー!
【選評】
異世界に紛れ込んだ帝羅が直面する世界間のギャップ、女尊男卑ながらも男が希少、という要素を経済ネタを上手に利用して盛り上げており、スピーディな展開もあってテンポ良く読むことが出来ます。また、時にはイジられながらも、逆境を次々に撥ね除けて這い上がっていくドラマ、特に中盤から終盤に至る盛り上がりには評価が集まりました。エレミヤを初めとした、舞台となる商会のヒロインたちも、それぞれの立ち位置や設定に無駄が無く、共感できる形になっていると思います。
奨励賞
魔王と姫と卑猥図書
PN. おつかい
【あらすじ】
やりがいのない職務に飽き飽きしていた魔王の下へ、一人のお姫様がさらわれてきた。
見目麗しく、清純可憐な東国一の美姫。遂に魔王の人生に初めての春が訪れるか――と思いきや、
「私、趣味で漫画を描いておりまして。自費出版らしきこともやっていますの」
「……は?」
彼女は魔王も閉口するエロ同人誌作家(汁多め)だったのだ!!
「体位やアングル、汁の量、あらゆる面で直に殿方のご意見を――」
「なあ嘘だと言ってくれ……これは、お前が描いたわけではないんだよな?」
残念すぎるお姫様に惚れてしまった魔王が挑む、世界征服より困難な野望とは――?
「よかろう。俺がお前を矯正し、まともな女にしてやる……っ!!」
「それは性的な意味で、ですか?」
純情魔王とオタクのプリンセスが織りなす、いまだかつてないファンタジックコメディ開幕!
【選評】
オーソドックスなファンタジー世界に同人誌制作という異例のモチーフを持ちこむという強烈なインパクトが選考の決め手でした。エッチな描写やギリギリな笑いを豊富に盛り込んだ、ややメタな世界観の中で、ひたむきに創作に打ち込む姫様の魅力が見事に表現されていました。また彼女に振り回されていく悩める魔王の、どこか嬉しそうな反応も見所のひとつで、大変楽しい作品になっていました。
奨励賞
聖人君子のラブコメディ
PN. 数原文
【あらすじ】
「実はわたし、殺し屋さんを更正させたいんですっ!」
ある日夕暮れ時の教室で出会った神秘的な女の子。
「《ひじりびと、きみこ》です。聖人君子(せいじんくんし)と書いて、聖人(ひじりびと)君子(きみこ)っていいます」
それが――。
「君子(くんし)ちゃんって、呼んでください」
全ての始まりだった。
どんな展開になってもバッドエンドにならない、幸せが詰まっているラブコメの世界を至高のものとする苗代葉人。彼が出会った女の子は、そのラブコメでもって3人の殺し屋を更正させるため、手を貸して欲しいと言うのだが…。
「えーっと。殺し屋さん達を、ラブコメで攻略するんだよね」
「は、はい。そうすれば、みなさん、更正してくれるはずですよねっ」
そう言って宣言する君子ちゃん。
「わたし、頑張ってみなさんを攻略しますっ!」
確かに殺し屋達は女の子ではあったけれど、
「《苛烈刀(レツドサークル)》、紅霧(あかぎり)円(まどか)でござる」
「《梟姫(ナイトロウ)》、金敷(きんじき)ソティスですわ」
「……《狙撃人形(スナイプドール)》、蒼家(あおうち)エフなのだ」
殺気みなぎる腕利き揃いだった!
健気な君子ちゃんと超絶能力を持った殺し屋達のラブコメ的攻略バトル、レディ! ゴー!
【選評】
ラブコメ至上主義の若干アレな主人公と、純真無垢を通り越しちゃった君子ちゃんの存在感が抜群の作品でした。普通なら主人公が攻略する殺し屋ヒロインズを、主人公の指示で君子ちゃんが攻略する、というのが第一のひねりどころ。殺し屋ズと君子ちゃんのズレた会話に特に評価が集まりました。また、そうした読み口だけでなく、君子ちゃんが殺し屋達を更正させようとした理由や、君子ちゃんの正体など読み進めるための縦軸もしっかり入れ込んであり、そうした構成力の高さも評価のポイントとなりました。
読み終わったあと、みんなが優しかったんだな、とわかるようなそんな素敵な作品です。