「伊達エルフ政宗」全国編2【四国】

20160328date_elf_masamune政宗「4月のGA文庫新作『伊達エルフ政宗』本編ではまだ登場しない全国の武将を地域別にいくつかピックアップして紹介していくぞ」

 

 

 

 

 

20160328date_elf_yuuto幸村「今回は四国編です」

 

 

 

 

 

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■三好リリス長慶(本拠地:四国 阿波)

 使い魔の地位は一言で言って極めて低い。
 もし、召喚者の魔女が不要と判断すれば消されてしまう運命にある。
 たとえば、魔女の細川晴元(ほそかわはるもと)は三好元長(みよしもとなが)というリリスが死ぬように仕向けた。その使い魔が独立して力を持ちすぎる恐れがあったからだ。
 魔女に罪の意識はない。使い魔をどうするかは自分が決めることだ。事実、そのリリスの娘だって逆らうことなく自分に仕えているではないか。
 ――逆に言えば、魔女の力が弱ければ、使い魔に見限られることになる。
 リリスの三好長慶(ながよし)は主人の晴元を追放した。
 長らく勇者の政権にかかわってきた魔女、細川家の本家は実質、それでついえた。自分の能力を把握できず、強力すぎる使い魔を使役した結果だった。
 その後、三好長慶は三人の妹とともに急速に力を伸ばし、勇者政権を支配する者とすら呼ばれるようになった。本拠地も四国から畿内のほうに移している。
 ある日、長慶は三人の妹と私的な小さな祝宴を開いた。
 彼女のほかに三好実休(じっきゅう)、安宅冬康(あたぎふゆやす)、十河一存(そごうかずまさ)と妹たちが並ぶ。ほかの家に入った者もいるが、いずれもリリスの三好政権を支える実力者たちだった。
「母さんの敵討ちも終わり、ようやく私たちリリスにも春が来たようですね」
 普段は真面目な長慶も妹たちの前では相好を崩す。無数の裏切りと血なまぐさい争いを彼女も経験してきた。
「あなたたち妹も、私の使い魔も優秀です。しばらくは平和が続くでしょう」
 しかし、安宅冬康が渋い顔をした。
「その使い魔ですが、松永久秀(まつながひさひで)というイフリートははずしたほうがいいかと」
 あいつを見ていると気分が悪くなると冬康は続けた。
「まさか、彼女はなかなか優秀な使い魔ですよ。よく働いてくれています」
 長慶は取り合わなかった。
 ――数年後、リリスの政権は松永久秀に奪われていくことになる。
 使い魔が手に入れた天下はまたその使い魔に拾われるのだ。

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■長宗我部バハムート元親(本拠地:土佐岡豊(おこう)城 高知県南国市)

古来から中国では皇帝を竜になぞらえる。天子の顔を竜顔(りゅうがん)と表現するのはその一例である。かつて竜――ドラゴン出身だった皇帝一族がいたことに由来するのは言うまでもない。
さて、四国の小さな国衆だった長宗我部(ちょうそかべ)氏には一つの始祖伝承がある。それは長宗我部氏の祖先は秦の始皇帝だというのである。それの証拠に長宗我部が苗字で本姓は秦氏であり、ドラゴンの一種であるバハムートではないか、ということになる。
もはや時代が流れすぎてその証明はできないが、自分は出世して皇帝のような人間になるという野望が元親(もとちか)にもあった。彼は長宗我部氏歴代の中では珍しく男だった。
戦国時代の土佐は長らく荒れていた。西の中村という土地に一条氏という公家上がりの大名がいて、大きな勢力を持っている以外は、中小勢力が各地にいる程度だった。元親の祖父もその戦争で殺され、土地も追われ、一時は一族滅亡の危機にも瀕した。元親の母親だった国親(くにちか)も幼い頃は一条氏に庇護されて、そこで育ったほどだ。
バハムート族は本性の巨大な竜の姿と人間の姿を使い分けることができる。この変身能力は男より女のほうが強い。そのため昔から長宗我部氏は代々、女性が家をついでいた。
だが、元親は男であるものの、武勇にすぐれていたため、母親によって一貫して女として育てられた。彼もとくにそれを拒みはしなかった。自分は皇帝になる、そのためにはまずは家督を継がなくてはならないと考えていたからだ。
そして、母親が長宗我部氏の勢力拡大中に死に、当主となった元親は急速に土佐の支配を進める。ついには大恩のある一条氏すら吸収してしまった。
一条氏の家臣に、バハムートは恩を恩と感じないのかと責められたことがある、その時、元親はこう言い返したという。
「一条の先祖はたかだか摂関家ではないですか。だが、ボクの家は皇帝でしょう。摂関家が皇帝の復活に力を尽くすのは当然というものです」
以後、元親は四国の統一を目指して、北に動き出す。

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「伊達エルフ政宗」、どうぞよろしくお願いします。