■1月xx日
 元旦。お年玉をあげてから新人賞の原稿読み。
 二日。雑煮を食べてから、新人賞の原稿読み。
 三日。ひたすら新人賞の原稿読み。
 四日。ひたすら新人賞の原稿読み。
 五日。仕事始め。ひたすら新人賞の原稿読み。
■1月xx日
 黙々と口絵・挿絵指定テキストを作る。
 本作りにおいて、悩みのない行程は何ひとつないわけですが、この指定作業もなかなかに悩ましいものがあります。
 特にライトノベルは通常の小説より、絵の力に負うところが大きいわけですからなおさらです。
 どのシーンをピックアップするか、そのシーンをどう見せるか、全体としてバランスの良い指定になっているか、キャラが偏っていないか……などなど。
 細心の注意を払って、最終的な指定をまとめあげていきます。
 ですので、残念ながらクー子増量といったような恣意的なご要望にはお応えしかねます。あしからず。
 そして指定作成の間隙を縫って新人賞の原稿読み。
■1月xx日
 路上で正座しながら携帯で話すスーツのお兄さんを見かける。
 泣きそうな顔で何度も土下座してもいるよ。
 よく電話口でお辞儀する人は見かけるけど、土下座は初めてだね。
 ……いったい何があったんだろう、か……。
 そんなお兄さんの横を通り過ぎながら新人賞の原稿読み(※携帯に転送して読んでます)。
■1月xx日
 今月の新刊告知用のバナーを作る。
 バナーというものは、たとえばこんな感じの物ですね。
 そう、できることはなんでもやる。
 それがGA文庫編集部員の心意気というものです。
 もちろん新人賞の原稿も読みますよ。
■1月xx日
 打ち合わせ帰り、昼過ぎのけだるい空気をまとったガラガラの電車に乗る。
 車両には自分と、向かいの席にいるおじいちゃんのみ。
 と、突然おじいちゃんがすごい形相で私を睨み始めます。
 目は血走り、歯ぐきをむき出しにしてすごい威嚇行為です。
 ……え? ごめん。俺、なんかした? ここ、おじいちゃんの縄張りかなんか? 俺に? 俺にだよね? 他に誰もいないもんね?
 私の戸惑いをよそにますます威嚇行為をエスカレートさせるおじいちゃん。
 お前はエイリアン4かというぐらい歯ぐき出てます。このまま食われそうです。
 そして次の瞬間。
 入れ歯がゴトリと電車の床に転がりました。
 …………。
 単に入れ歯がとれそうだったのね、おじいちゃん。
 そしてブログネタをありがとう、おじいちゃん。
 あわあわと入れ歯を拾うおじいちゃん、あんた今、最高に輝いてるよ。
 そして最高に輝いている新人賞の原稿読み続行。

   

PW-M800の冒険

 バスで電子辞書落としました。
 直前に「遺失」なんて言葉をひいたのがまずかったか。言霊め……!
 それはさておき、ないと非常に困る代物なので、ダメモトでバス会社のお客様センターに電話してみると……。
 あったよ、ママン!
 感動の再会だよ、ジョニー!(誰?)
 いやー、まだ拾ったものをきちんと届けてくれる人がいるんですね。殺伐としたニュースの多いこの世知辛い世の中、なんだかほのぼの暖かい気持ちになってしまいましたよ。
 ありがとう、拾ってくれた心優しいお姉さん。妙齢で美人のお姉さん。そしてもちろんツンデレで実は魔法少女なお姉さん!(※妄想モード発動)。
 ちなみに現在私が使っているのはシャープのPW-M800という電子辞書です。リーズナブルで、かつ非常にコンパクトな辞書なので、かなりお気に入りです。
 そのコンパクトさといったらポケットに入れておいても、持っているのを忘れるぐらいの113g(電池含む)!(※だから落としても気がつかないのはしょうがないよね! ……まぁ、もともと「ランドセル落としちゃった」とか平気で言う子供でしたが、私は)。
 ところで1日に20回以上は確実にお世話になるこの辞書ですが、一箇所だけ気になるところがあるんですよ、シャープさん。それは起動後0.5秒ぐらいキーを受け付けない時間がある、というところ。ちょっと待てば良い話なんですが、毎回だとちょっとしたストレスも「ちりつも」なんですよね。だから後継機では直しておいてくださいね~。まぁ、それ以外はほぼ完璧な仕様なのでこれからも愛用させていただきますが!
 ちなみに広辞苑に「男一匹」って言葉が載ってるのって皆さんご存知でした? びっくりしますよね。他にもいろいろ「えー」と思うような言葉があるわけですが、それはまた別ネタで!

   

■12月xx日
 第2回GA文庫大賞(後期)への多数のご応募、本当にありがとうございました! この中にきっと将来のGA文庫を担う才能が眠っているはず……! そう思うと今から原稿を読むのが楽しみです!
 ……それはさておき、山と積まれた封筒を前に、思わず「全部で480本だから一人あたり70本弱読めば……」的な計算をうっかりしそうになってやめました。やめましたよ!
 だって、長い階段の先を見てしまったら心が折れて登れませんからね。足許の一段一段を丁寧に踏みしめて登れば、おのずと頂上への道はひらけるものなのです……!
 ……それにしても70本弱か……。1本あたり2時間として合計で140時間≒6日強……(だから計算したらいかんて!)
■12月xx日
 編集部の惨状は先日アズラエルちゃんが報告した通りなので皆様もご存知かと思います(※ちなみに私の机もしっかり激写されてました……まぁ、きたないからね……)。
 しかしあれからひとつだけ変わったことがあります。地滑りがありました。雪崩とも言います。本や資料や原稿が、見事に混沌状態になりました。どこに何があるのか判りません。助けてニャル子さん!
 これまでは「片付いてないように見えても、どこに何があるかはちゃんと把握している!」と強弁してきた私ですが、最低限、物理的被害は招かないようにすべきだと激しく学習しました。それはこの歳になって学習すべき事項なのかというツッコミは受け付けません。
■12月xx日
 流行りのTwitterなるものを始めてみました。
 なるほど、気軽に書き込めるのは確かにいいかも。キーワード検索でリアルタイムのつぶやきを眺めていると、ブログでは見えてこない情報の流れが見えてきて面白いし。
 ただ「考えずに書いている」人が多いせいか、無意識のうちに本音を吐露したり、自分でも気がついていないであろう生活習慣・考え方をご開陳している方も多数いらっしゃったりして……。これは「気軽さ」の生む「怖さ」だなあ、とも感じました。ご用心ご用心。
 とりあえずTwitterで季語なし俳句をつぶやき続けている人がいたら、おそらく私なので捜さないでください。
■12月xx日
 早くも忘年会のお誘いがちらほら……。そうね。忘れたいことなら山ほどあるよね。ふっ。
■12月xx日
 みなさんは年末進行って聞いたことありますか? 食べ物じゃありませんよ。
 年末年始、印刷所さんが休みに入るので、必然的にいつもより進行が巻き巻きになる地獄のイベントのことです。他にもお盆進行、GW進行がありますが、年末進行の破壊力は「まじぱねぇ」のです。現に今その破壊力に、リアルに破壊されかけている私がいます。いつもより1週間早い進行なんてありえねえよ……。
 生きていたら、また来年お会いしましょう。
(続く)

   

■11月xx日
 各所に原稿の催促。ひたすら催促。まだまだ催促。ディ・モールト催促。今日の業務の80%はこれ。
 それにしても〆切って不思議ですね。確か「10月末までには絶対アップしますんで!」と約束したはずなのに、電話してみると「あんなスケジュールでできるわけないじゃないですか!」とか「え、まだ10月35日ですよね?」とか言われるんですよね。なぜでしょう? どこかで時空が歪んでいるのでしょうか? それとも私の心が歪んでいるのでしょうか? 
 ハハキトク スグゲンコウオクレ
 みたいな電報を打ったほうがいいんでしょうか? あるいはもっと根本的な(――以下、過激な内容を含むため削除――)ってなんだよ! なんなんだよ! ……はあはあ。
 おっともうこんな時間だ。残り20%、電話のつながらない先生のお宅にうかがわねば……!
■11月xx日
「編集という名の病」の巻。
 症状:電車の中吊りなどをぼーっと見ていると、見出しの内容より誤字脱字がないかの方が気になってしまう。
 診断:なんでも校正してしまう病。
 対処:症状が悪化すると飲み屋のメニューの誤字脱字まで、酔った勢いで店員つかまえて指摘するようになります。最悪です。人としても酒呑みとしても恥ずかしいです。
 普通の人はそんな事は気にしないでも生きてゆけるものです。まずはもっと大らかな気持ちでいきましょう。
 症状:小説・漫画・映画・芝居……鑑賞中にどうしても「●●のキャラをもっと●●した方が面白いじゃ?」とか「●●の出会いと、●●の出会いのシークエンスは入れ替えるべきだよな」とか「あれ●●の伏線、回収されてないんじゃない?」などと考え込んでしまって素直に楽しめない。
 診断:いつでも評価シート病。
 対処:素直に楽しみましょう。世の中のエンタテイメントはそのために存在しているのですから。笑うときは笑い、泣くときは泣く。それでいいじゃない。人間だもの。
 なおこの症状が悪化すると、頼まれもしないのに評価シートを書いて相手に押しつけるという、コミュニケーション上とても致命的な行動に出ることになりますので、お早目の受診をお勧めします。
 わかっちゃいるけど、今日も中吊りで一箇所誤字見つけちゃったよ……赤入れたい……。
(続く)

   

 そろそろ熱燗の美味しい季節になってきたので、マイお猪口磨きに余念のない編集Tです。剣菱最高。神亀最高。だけど神亀はちょっと高くてなかなか呑めない……不況め……!
 それとはまったく関係ないのですが、ライトノベルの編集っていったいどんな仕事をしてるんだろう? と興味のある向きもいらっしゃるかと思いますので、私の日常を日記形式でメモってみました。好評だったら続きます。続かなかったら察してください。
10月xx日
 11月新刊用オビのコピーを一生懸命考える。この作業、内容を端的に現していて、しかもキャッチーなものを……ということで毎月大変悩みます。
 1日考えて何も決まらない時は「コピーライターの人ってすごいよなあ……」と素直に感嘆です。
 言霊というものはなかなか宿らないものなのですよ……。
10月xx日
 AdobeのInDesignでひたすら組版作業。やれやれようやく終わるぞ、というところでInDesignがフリーズ。
 ……わりと本気でAdobeに殺意を覚える……。
10月xx日
 「くれは×リミテッド!」の橋村先生と2巻の打ち合わせ。プロット、大まかな流れを決めて、詳細を詰めたものは後日……ということでいったん終了。
 1巻の時にやった5時間耐久トライアスロン的な打ち合わせに比べるとかなり平和に終了した感触。まぁ、初稿があがってきたらまたいろいろやりあうわけですが……!
 ちなみに目下、一番の悩みは1巻のカバーイラストを超えるためにはどうすべきかということだったり!?
10月xx日
 編集部油部(※メンバーは編集部員全員)による恒例の焼肉大会。
 美味い肉を肴にビール呑みまくり、そして決して口外できないような話題で盛り上がりまくり! しかし酒の効用で「聞いたことを3秒で忘れるモード」に入っている私は何も覚えていないので何も問題ないのです。何も問題ないのですよ!(※大事なことなので2回言いました)。
 ……えーと、本当に何も覚えてないですよ? ●●先生の△△が××だとか、●●編集部の△△さんが実は××したとか!(※自主規制)
10月xx日
 地獄の校了週を前に発熱。寝込む。新型インフルでなかったのが不幸中の幸い。
 最近週末になると体調を崩しやすくなっている気がする……やっぱり歳?(悲哀)。
(続く……のか?)