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GA文庫TOP > GA文庫大賞 > 第9回GA文庫大賞(2017年)

GA文庫大賞AWARDS

結果発表

第9回GA文庫大賞 優秀賞受賞者発表!

おかげさまで第9回GA文庫大賞は前期621作品、後期666作品、合計1287作品ものご応募を頂きました。多数のご応募ありがとうございました!
ここに第9回GA文庫大賞・優秀賞の選考結果を発表させて頂きます。


優秀賞

ペンネーム 作品名
串木野 たんぼ 犬が星をみる話
中野 Goodbye to Fate ーグッバイ トゥ フェイトー
山和 平 ダブルワールド・OX

奨励賞

ペンネーム 作品名
朝日乃ケイ 魔法使いにはさせませんよ!
【世界一】とにかく可愛い超巨乳美少女JK
郷家愛花24歳【可愛い】
君と夏と、約束と。
冬空 こうじ 勇者保険のご加入はブレイヴカンパニーへ!

※敬称略・50音順

■総評
 第9回GA文庫大賞の結果発表であります。
 今回応募総数1,287通ということで、まずはご応募頂きました皆さま、ありがとうございます。
 今流行の異世界ファンタジーから学園もの、さらにはどシリアスなドラマと様々な作品が集まりました。そうした中での全体傾向としては、実はどうにもならないアカンレベル作品というのはあまりなくて、文章、構成、キャラクター全てにおいてある程度のところまでは書けている作品、というのが多い印象でした。ただそこから技術的に、または熱量的に突き抜けた作品というのがなかなかなく、コメントを書きながらも「もっと基礎力を! もっとキャラクターに熱を!」ともどかしく思うことがあったのも事実です。
 そうした中で、今回優秀賞になりました3作品ですが、いずれもキャラクターの気持ちや著者の目指す面白さがきちんと文章に表れており、最終選考でもそこが高く評価されました。
 奨励賞含め、今回受賞となった作品達が、読者の皆さまにどんな受け止められ方をするのか、今から楽しみでなりません。
 第10回GA文庫大賞も、前期の募集が既に始まっております。まだ見ぬ世界へ飛び込むため、皆さまのご応募をお待ちしております。

優秀賞

犬が星をみる話

PN. 串木野 たんぼ

【あらすじ】

「もったいねえ! 俺なら試合捨てて散り演技《ロール》したね。堂々と斬られりゃ観衆の拍手独り占めだ。そうすれば英雄へ近づく道もある」
「お客さんは俺たち『歩兵《ポーン》』の散り様より、颯爽と駆けつける『英雄《メサイア》』が観たいんです」

 完成されたエンターテインメントを標榜し、集団戦でポイント(観衆からの声援)を競い合うプロスポーツ『マスラオ』。
 戦いの強さよりも『場の盛りあがりやドラマ性が最も重要視される』この競技において、六道昴哉は前代未聞の大活躍を果たしてしまう(・・・・・・・)。
 ――見事すぎる命乞い演技《ロール》によって。

 昴哉は天性の献身癖で、味方、そして観衆の笑顔のために自己の犠牲を厭わずしてしまう人間だったのだ。  それは、戦場の中心に仁王立ちし、己のわがままとプライドを貫き通す戦場のエンターテイナー『英雄』とは真逆の道。
 歩兵《やられ役》として沸き立つ己の名――憧れの英雄から遠ざかる道を歩んでしまう自身に葛藤する昴哉。

 そんな彼はある日――スポーツではない本職の戦闘集団、『武家』を飛びだしてきた家出娘・長船すばると運命の出会いを果たす。
 奔放な彼女は早速マスラオに参入。未経験ながら昴哉の隣に立つことになってしまい――!?

 社会を影で支え、規律を大事にする家に育つも、飛びだしてきたサムライ少女と、
 社会のスポットライトを浴び、奔放であることをこそ良しとする英雄を志すも、伸び悩む少年が出会う時、
 マスラオ界に新たな伝説が生み出される!!
 人々の光り輝く星となれ! 劇場型エンターテインメントバトルアクション!

【選評】

 大規模ショーバトル『マスラオ』の世界。幼き頃に見た《英雄》の活躍に憧れ、マスラオに参入するも伸び悩む主人公・昴哉が、ヒロインであるサムライ少女・すばると出会い、彼女を助けることを通してマスラオの真の英雄へと至る物語。
 マスラオの『強さよりも場の盛りあがりこそが大事』という特異な設定と、その活用方法は見事。多人数バトルにありがちな、トップ層数人の力のぶつかり合いに陥らせない、ポイント制や兵種の意義を産みだし、かつハイテンポな戦闘を演出しています。
 また親友で、陰に日向に昴哉を英雄へと引っ張り上げようとしてくれるチームの大黒柱・カイや、幼き昴哉とカイがマスラオを志す切っ掛けとなり、今なおマスラオ界に君臨する姫騎士聖命(ひじり みこと)、本物の職業軍人でマスラオを忌避しているすばるの父・輝虎といった登場人物との、戦場の内外での激しいぶつかり合いは、それぞれの背景と相まって濃い人間模様を形成、共感して楽しむことができる熱い作品です。

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優秀賞

Goodbye to Fate ーグッバイ トゥ フェイトー

PN. 中野

【あらすじ】

「出て行ってください。英雄様がお戻りになる前に」
世界を滅ぼす7匹の魔人を倒すために、英雄と旅をするウィズは、そのパーティから追放されてしまう。
神託を受けた他の仲間たちと違い、英雄の幼馴染みにすぎないウィズにはもとより荷が重い旅だったのだ。

「見ててびっくりしたわ。あなた、てんで弱いんだもの」
失意のなか放浪していたウィズは、野盗に襲われている少女アーロンを何とか助け出す。
アーロンは生まれ故郷に戻るため、たった一人で旅を続けているのだという。

「弱くてもいい。わたしは、あなたがいいの」
なぜかアローンはウィズに懐いてしまい、旅の護衛をしてほしいと懇願する。
しかたなく引くけたウィズはアーロンと旅をすることに。
ときを同じくして、魔人復活の予兆を感じた英雄一行も、『少女』に擬態しているという魔人の追跡を始めていた。

ウィズとアーロンの旅は順調に進むが、だんだん二人の周囲で不可思議な事件が起き始める。そしてアーロンの身体にも変化が……。
「だいじょうぶよ、まだ、時間はある……。自覚症状もないし……わたしは化け物なんかじゃない」
旅の目的地、アーロンの故郷が近付くなか、アーロンの体調は悪化するばかり、そしてついに英雄一行が現れ、アーロンが魔人であると断言する。
アーロンに旅の目的を遂げさせる為に、ウィズはかつての仲間、神に選ばれし英雄一行と対峙するが……。

正邪を越えて宿命に抗う少女の、ささやか過ぎる願いと小さすぎる慟哭に、「選ばれなかった少年」と「選ばれし英雄」が出した答えとは?

【選評】

 世界を滅ぼす魔人になることを定められた少女アーロンと、英雄になれなかった少年ウィズが、ある「目的」のために共に旅をするファンタジー作品。「神に選ばれなかった少年」「神に見放された少女」が互いを支え合いながら、様々な苦難に立ち向かう熱いストーリー展開に引き込まれます。
 アローンの『いつか自分は魔人になる』という運命に抗い、最後まで人として生きようと足掻く姿と、アローンを守ろうと奔走するウィズの真っすぐな気持ちには心を強く揺さぶられました。
 また、魔人復活を阻止しようとアローン達を追う、「神に選ばれた」英雄達一行にも様々な思惑があり、また、ウィズと浅からぬ因縁があって、物語に深みを与えてくれます。
 テンポよく進む展開に加え、コミカルなシーンや熱い展開のバトルシーンも巧みに描かれており、読み手をストーリーにグイグイと引き込んでくれる完成度の高い作品でした。くわえてラストバトルからエピローグまでは、感情を一気にMAXまで揺さぶってくる素晴らしい結末になっていると思います。

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優秀賞

ダブルワールド・OX

PN. 山和 平

【あらすじ】

「ようこそ、『ダブルワールド・オーバークロス』の世界へ」
「なんじゃこりゃあああああああっ!?」

高校生のアキカはゲーマーである妹のリオに勧められ、最新のVRMMORPG『ダブルワールド・OX』のプレイを開始する。だが、サービス開始時に全プレイヤーから十人しか選ばれない『魔王』に選ばれてしまい、更に外見も女性のキャラクターになってしまう。

もともと生産職プレイをするつもりでいたアキカだったが、一般プレイヤーに狙われる立場になったこともあり、他の魔王達と同盟を組んでレベル上げや装備の強化などを行っていく。お忍びで一般プレイヤーの街に出向き、自作のポーション販売なども成果が出るようになっていた。仲間とともに隠しクエストもこなしてひとまず安心かと思った矢先、アキカはゲーム内の対人戦イベント『魔王討伐クエスト』で一般プレイヤー達の対戦相手に祭り上げられてしまう。

 魔王へ挑戦しようとする熟練プレイヤーの中には、妹のリオの姿もあった。果たしてアキカは、魔王を続けられるのか!?

【選評】

 10人の魔王プレイヤーが存在するVRMMORPGを舞台に、平穏に過ごしたいはずの主人公が魔王になってしまい、挑戦してくる一般プレイヤーを魔王の仲間たちと迎え撃つ物語。個々の要素だけ見るとけして目新しいものではありませんが、組み合わせ方やキャラクターの配置が的確で、バランスのとれた面白さを出せているのが印象的でした。ストーリーも序盤では舞台となるゲームの情報を提示しつつ、伏線の積み上げなども丁寧にされています。中盤から終盤に向けたバトル部分やキャラクター描写的な盛り上がりも用意されており、安心して読むことができます。
 本筋ではありませんが、合間に挟まれる現実世界での食事描写も大変楽しいものでした。VRゲームの世界との対比にもなっていますし、妹との交流も読んでいて楽しいものでした。

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奨励賞

魔法使いにはさせませんよ!

PN. 朝日乃ケイ

【あらすじ】

異世界からの侵略獣によって人類が脅かされている現代社会。
八草陽夜は侵略獣に対抗する「魔法使い」の候補生だった。

――男児は齢30まで貞操を守りぬくと魔法使いになれるという

つまるところ人類を守るため「清い身体」でいなければならない陽夜なのだが、
そんな禁欲的な生活を送る彼のもとに、美少女の「刺客」が送り込まれてくる。

うるうると涙目の上目遣いで迫ってくるのは
薄紅色のネグリジェを身にまとった美少女・白啾なしろだった。
「陽夜さんに、わたしの初めて、捧げたいんです……」

なしろの誘惑を鉄の意志で撥ねのける陽夜だが、
見目麗しい「刺客」は引き下がらなかった。

「手を出してくれないんじゃ仕方なし、ですよね。プランBに移行しましょう」
胸元に押し付けられる、柔らかな感触。鼻をつく女の子特有の香り。
彼女は陽夜に実力行使をしかけてくるのだった……。

この刺客こそ、人類側の別組織「魔法少女」のメンバー。

「魔法少女」もまた侵略獣に対抗できる人類の切り札なのだが、
ともに人類を救うはずの「魔法使い」の候補生を亡きものにしようと、なぜか陰謀を張り巡らしている。

外側からは「侵略獣」、内側には「魔法少女」。
まさに内憂外患。

2つの脅威(?)に挟まれて懊悩悶絶する魔法使い候補生の姿を描く、
人類の存亡を賭けたハチミツトラップ活劇!

【選評】

 清純派のヒロインが全力で這いよってくる姿が印象的なハニートラップ系ラブコメ。
 「人類存亡の危機」という局面を舞台にしつつ、突き抜けて明るいラブコメを描くというギャップが対照的。ギャップという点で見ると「清楚なのにハニートラップ仕掛けてくる」「外敵と戦うはずの組織同士が対立」「まだ魔法使いになれてないのに主人公そもそも強い」などなど、ありがちな要素にヒネリを加えて使いこなすことで賑やかかつ独自の作風に仕上げてある。
 メインヒロインである「なしろ」はトリックスターでもあり、そのハチャメチャな誘惑言動のおかげでコミカル要素は高め。その巧みな誘惑トークでグイグイ引っ張られながら、なしろさんとの嬉しいコンタクトがアレコレ楽しめるところが本作の魅力。

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奨励賞

君と夏と、約束と。

PN. 【世界一】とにかく可愛い超巨乳美少女JK郷家愛花24歳【可愛い】

【あらすじ】

深夜の駅前にたたずむ少女は、
かつての恋人……いや、今もまだ恋人のはずの葉月だった。

あの日、何の前触れもなく消え去り、そして今、突然現れた葉月。

再び現れた彼女は、中学二年生のままだった。
かたや七年の歳月を過ごしてきたヒナタ。

同級生だったはずの二人に生じた七年のズレ。

約束を果たせないまま葉月が消え去ってしまい、
輝きを失った日常を無為に過ごしてきたヒナタだったが、
再び葉月と巡り会えたことで、止まったままの時間が再び動き始めた。

七年という歳月を隔てても変わらぬ二人の想い。
年の差を超えて気持ちを通わせていく二人だったが、
なぜか葉月が消えていなくなるまでの
「一緒に過ごした期間」の記憶には微妙な違いがあり……。

ふとヒナタの心に疑問が浮かぶ。
目の前にいる葉月は、かつて恋人だった葉月なのか?

それは、葉月もまた同じだった。
葉月はおびえた目でヒナタに問いかけてきた。
「あなたは……誰、なの?」

【選評】

 同級生同士で「年の差恋愛」というアイデア自体がパラドックスな一作。いわゆる「ラブコメ」ではなく「恋愛小説」にカテゴライズされる作品ながら、軽妙で「深刻になりすぎない」読み味のバランスがちょうどいい。
 重くなりがちな主人公の心象風景を描きつつも、明るくライトな後輩女子大生ちゃんでフォローしていて、なおかつメインヒロインである葉月の純真な可愛さで魅せる。しっかりとポイントを押さえた配役でスッキリと短くまとめてあり、スピード感をもって読める構成も好印象。「はかなくて」でも「心やすらぐ」心地よい読書体験が楽しめる一作でした。

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奨励賞

勇者保険のご加入はブレイヴカンパニーへ!

PN. 冬空 こうじ

【あらすじ】

「ええと、『勇者認定番号89 リック・ガーランド』。……契約者の死亡確認」

魔獣の森でヒカゲは冒険者のなれの果てを確認する。
目的は安否調査。彼は冒険者が加入する保険『勇者保険』の調査員であった。

調査員の業務内容は、対象者を発見し遺品があれば回収。生存していても冒険は手伝わない。但し撤退であれば援助する。
隠密行動を良しとするシーフの彼にぴったりの仕事である。
顧客も様々。常連冒険者はもちろん、ルーキー、時には強い冒険者、そして――詐欺を目論む悪人も。

そんな保険業が人気あるはずも無く、今やブレイヴカンパニーは社長とヒカゲの二人きり。
今日は王様直々の斡旋で、新しい調査員がやって来るはずだったのだが――。

「私はいずれ王位を継ぐのよ、どんな厳しい環境に置かれようと決して屈服しないわ!」

やってきたのは、次王への修行と放り込まれたお姫様だった!?

あっという間に彼女――デルフィの教育係に据えられてしまったヒカゲ。
世間知らずな彼女に仕事を教える事になったのだけど――。

「そもそも冒険者が死んでしまったかどうかは、どうやって調べるのよ?」
「確認しに行くんだよ、魔王領に。君も」

シーフな少年とお姫様のドタバタ保険ファンタジー!

【選評】

 ファンタジー世界で保険業を営む会社に勤めるシーフ・ヒカゲと、父王の試練でそこにやっかいになる事になった世間知らずの王女様・デルフィの物語。シーフらしく落ち着いて冷静沈着なヒカゲと、お転婆で世間知らずなデルフィの対比は好印象。掛け合いやドタバタを上手に利用して盛り上げ、物語をテンポ良く楽しむことができます。
 また駆け出しの冒険者をこっそりフォローしたり、先走り過ぎた冒険者と共に強力な魔族から逃げ回ったり、勇者保険を悪用した詐欺事件を解決したりといった多彩な展開は、ファンタジー世界の保険業を上手に作品に馴染ませていました。