GA文庫TOP > GA文庫大賞 > 第11回GA文庫大賞(2018年)
GA文庫大賞AWARDS
第11回GA文庫大賞 優秀賞受賞者発表!
おかげさまで第11回GA文庫大賞は前期593作品、後期766作品、合計1359作品ものご応募を頂きました。多数のご応募ありがとうございました!
ここに第11回GA文庫大賞・優秀賞の選考結果を発表させて頂きます。
大 賞
ペンネーム | 作品名 |
佐藤真登 | 処刑少女の生きる道(バージンロード) |
優秀賞
ペンネーム | 作品名 |
小林湖底 | ひきこまり吸血姫の悶々 |
奨励賞
ペンネーム | 作品名 |
阿樹 翔 | ロード・オブ・キャッスル |
有澤有 | 帝国の勇者 |
高町京 | 小泉花音は自重しない 美少女助手の甘デレ事情と現代異能事件録 (受賞作品「雲蒸竜変 黙シテ語ラズ」より改題) |
筑紫一明 | 竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― |
徳山銀次郎 | 【配信中】女神チャンネル! え、これ売名ですの!? (受賞作品「【夕立朱人】 タナトスキッズ 【売名中】」より改題) |
※敬称略・50音順
■総評
第11回GA文庫大賞の最終結果発表をお届けします。
今回の応募総数は、前期・後期合わせまして1,359作品。前回を上回る応募数となりました。ご応募いただきましたみなさま、本当にありがとうございます。みなさまの情熱がこもった作品を拝読し、編集部の選考も非常に盛り上がりました。
それら1,359作品のなかから、前期後期で選出された7作の奨励賞作品。先日行われました通期の最終選考会議の結果、そのうち1作品が大賞、1作品が優秀賞として選出される運びとなりました。
なんとGA文庫大賞で大賞作品が出たのは、じつに7年ぶり、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」以来となります。
大賞に選出された「処刑少女の生きる道(バージンロード)」と優秀賞に選出された「ひきこまり吸血姫の悶々」。いずれもファンタジー作品ではありますが、シリアス寄りの前者とコメディ寄りの後者で、読み味は大きく異なります。
その中でも2作品に共通していたのは、キャラクター、とくに主人公の個性が非常に強い作品になっていたこと。
主人公が何をしたいのか。
主人公が目的のためにどう動くのか。
そこを明確に設定してあり、先が気になるストーリーに仕上がっていました。選考でもこの2作品の評価は圧倒的に高く、編集部が自信を持っておすすめできる作品となります。発売を楽しみにしていてください。
また、奨励賞となった5作品につきましても、前期受賞作につきましては、7月、後期受賞作につきましては、1月の刊行を目指して担当編集とともに作業を進めております。
いずれも読者の皆さまにオススメできる良作ばかり。ぜひ刊行を楽しみにお待ち下さい。
さて、第12回GA文庫大賞、前期の募集も既に始まっております。進化したGA文庫大賞は、大賞&金賞がガンガンGAにてコミカライズ確約!
もちろんファンタジー以外にも、学園、ラブコメなどなど、各ジャンルの応募作品をお待ちしております。
ぜひ、あなたの“おもしろい”が詰まった作品をご応募ください。
みなさまの作品が読めることを、編集部一同、心から楽しみにしております。
大 賞
処刑少女の生きる道(バージンロード)
PN. 佐藤真登
【あらすじ】
この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。
そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」
妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。
――これは、彼女が彼女を殺す旅。
【選評】
読み終えると同時に受賞を確信した作品でした。本当に面白かった……。
主人公のメノウをはじめ、キャラクターがとにかくすばらしく魅力的でした。登場人物は数は多くないながら、どのキャラクターもいくつもの顔を持った複雑なキャラ造形になっていて、物語をぐいぐい引っ張っていく力を備えていたように思います。随所に挿入される過去回想も感情を揺さぶるもので、キャラクターに深く感情移入させることに成功していました。けして明るくない世界観であるにもかかわらずエンタメ感溢れる物語に仕上がっているのは、キャラクターのセリフに切れ味があったからこそだと思います。シリアスなアクションシーンとコミカルな会話パートでメリハリが効いていて、読んでいてまったく飽きることがありませんでした。
「導力」や「純粋概念」といった要素をベースに、世界がしっかりと設定されているのも見逃せないポイントです。世界をかつて滅ぼしかけた4つの脅威がなお残存するという世界観には、非常に想像力を刺激されました。魔導詠唱にも利用される「教典」の文言などが作りこまれているのもすばらしい。魔導詠唱文を読むだけでだけでわくわくするという久しくなかった体験をさせてもらいました。言葉選びに非凡なセンスを感じます。そして、単純にバトル描写がうまい! スピーディーかつハッタリが効いていて、お見事でした。
ストーリー面では、よくあるパターン……と見せかけて読者の予想を裏切る序盤の展開が強烈。最初の数十ページで一気に物語に引き込まれました。そのあとも、王道ながらノンストップでラストまで一気に駆け抜ける物語になっています。そして、エピローグ。完全にネタバレになってしまうので内容には触れられませんが、今後の展開が非常に気になる構成になっているということは間違いないでしょう。今後メノウたちの話がどう動いていくのか、いち読者として楽しみでなりません。
7年ぶりの《大賞》作品。ぜひ発売を楽しみにしていてください。
優秀賞
ひきこまり吸血姫の悶々
PN. 小林湖底
【あらすじ】
「……ふぇ? な、なに?」
引きこもりの少女テラコマリこと「コマリ」が目覚めると、なんと帝国の将軍に大抜擢されていた! しかもコマリが率いるのは、下克上が横行する血なまぐさい荒くれ部隊。
名門吸血鬼の家系に生まれながら、血が嫌いなせいで「運動神経ダメ」「背が小さい」「魔法が使えない」と三拍子そろったコマリ。途方に暮れる彼女に、腹心(となってくれるはず)のメイドのヴィルがに言った。
「お任せください。必ずや部下どもを勘違いさせてみせましょう!」
はったりと幸運を頼りに快進撃するコマリの姿を描いたコミカルファンタジー! 引きこもりだけど、コマリは「やればできる子」!?
【選評】
引きこもりの吸血鬼であるコマリが、つかぬことから帝国の将軍になってしまい、しかも率いるのが最も危険な奴ら……というギャップが楽しいコミカルファンタジー。
コマリのことを溺愛し、将軍職への斡旋に奔走した父親や(コマリから見れば余計なお世話)、忠実なんだか失礼なんだかわからない専属メイドのヴィル、自身も美少女である皇帝陛下(コマリに対してセクハラ三昧)、そして血なまぐさい脳筋な部下たち(コマリの実力を信じて疑わない)といった具合に、ひきこもりのコマリを取り囲む面々との対比が明快で、その掛け合いがじつに楽しい。
全体としてコメディとしてまとめていながらも、ストーリーも骨格がしっかりしていて、中盤以降のシリアス度が増していく展開の中でコマリのキャラ特性がキラリと光る。ダメダメな引きこもりに見えて……じつは! というカタルシス演出も見事。
コマリの特性やメイドのヴィルとの関係など、伏線の張り方も巧みで、最後まで読み手の心を捉えて放さない。緊張感があって、痛快で、しかも感動できるという、各要素が高い次元で融合された笑って泣ける優れた逸品。
奨励賞
ロード・オブ・キャッスル
PN. 阿樹 翔
【あらすじ】
「僕の将来のクラン・メンバー、家族になってくれない?」
魔導兵器やモンスターが『ぷろぐらむ』によって守り続ける天人の遺産・古城。
それを攻略し、所有する集団――クランの設立を夢見る少年・レオンはある日、天才だけど落ちこぼれで『味方殺し』な魔導士の少女・リシアと出会う。
「家族って、こ、公私ともに?」
「いや、僕のクランはハーレムにしたいし」
「アンタ割かし最低ね!」
そんな軽いノリで組み始めた凸凹なコンビはしかし、
大型の古城を支配する竜人姉妹や、有名クランと率いる獣人王と出会い戦っていく中で、
彼らだけの城、彼らだけの最高のクラン(家族)を創り上げていくのだが――。
GA文庫大賞《奨励賞》受賞の、古城攻略ファンタジー!
【選評】
世界に無数にある古城を『ぷろぐらむで動いている古代の軍事遺産』と置くことで、探索の場=ダンジョンとしてだけで無く、(ぷろぐらむの改竄によって)占有している城持ち冒険者集団=クラン同士による駆け引きや抗争の舞台として活用する――そんな物語設定がユニークで目を惹きます。
駆け出しの少年レオンと天才魔導士の少女リシアが、古城攻略の中で互いを相棒と認め、城主とその相方(ぷろぐらまー)として、クラン(家族)として大切なものを培っていくというドラマは大変熱く、心躍るものがありました。
また、彼らをとりまく――猛き獣人王ヴェルナーとその軍師ルチアや、オリヴィアと付き人であるミネットの竜人姉妹といった各クランの面々も、それぞれの立ち位置や設定に無駄が無く、古城を巡って争う後半の展開は非常に読み応えがあり、その結末に強いカタルシスを感じました。
奨励賞
帝国の勇者
PN. 有澤有
【あらすじ】
「〈勇者殺し〉はどこだぁぁぁぁ!!」
ベルカ帝国が誇る無敵の異能兵士、【帝国の勇者】が反乱軍に殺害された!? 事態を重視した帝国は、勇者カイムを報復のため派遣するが……。
「……まるで、死んだシオンに……」
カイムの前に現れた標的は<勇者殺し>に殺された仲間のシオンだった!!
しかも、古の英雄が振るった伝説の聖剣を掲げ、帝国の殲滅を宣言!?
「俺はすべてを捧げて、お前を救う」
聖剣に支配されたシオンを救うため、カイムは〈勇者殺し〉こと、蘇った英雄に挑むが苦戦。力量差を覆そうと、最後の切り札を使う――。
「――ゆくぞ〈リンドブルム〉!」
第11回GA文庫大賞奨励賞。英雄の理想と少年の誓い、勝ち残るは!?
【選評】
まずタイトルの「帝国の勇者」で強く興味を惹かれました。「帝国」といえば悪いイメージですが、そこにいる正義の象徴「勇者」とはどんな存在か? そう思って読み出しましたが、まさにタイトルから期待する内容で冒頭から最後まで楽しませていただきました。
第一次世界大戦をモチーフにした戦場を舞台に、人工的に生み出された「勇者」と呼ばれる超兵士カイムが、敵国の姫エリーゼを護衛しながら、蘇った「伝説の勇者」と戦う物語で、敵役も含めキャラクターを大変魅力的に描かれていました。味方も敵もそれぞれに正義や理想を持っており、その衝突が物語に深みを与えています。
また、戦闘描写はとてもよく書き込まれており、それぞれのキャラが特徴的な能力を披露しながらも、スピード感あふれるバトルシーンを描けています。さらに、敵となる復活した勇者を「聖剣に支配されたヒロイン」とすることで、カイムが懸命にヒロインを取り戻すため戦うという、熱い物語に上手く仕上げられていると感じました。
最後の決着シーンは、ド派手な異能バトルで戦闘シーンを熱く描きつつ、お互いの譲れない感情を台詞に落とし込み感情的にも大きく盛り上がる、素晴らしく感動的なラストシーンでした。
最後に個人的な意見ですが、ミリタリー世界観の銃剣つきライフルとファンタジー世界感の聖剣でチャンバラするのは、ビジュアル的にも面白くなるのではと思っています。
奨励賞
小泉花音は自重しない 美少女助手の甘デレ事情と現代異能事件録
(受賞作品「雲蒸竜変 黙シテ語ラズ」より改題)
PN. 高町京
【あらすじ】
突然変異によって生物に異能力が発現するようになって40年。俺は幼馴染の小泉花音とコンビを組んで、異能犯罪を取り締まるフリーランスの捜査官をしている、のだが……
「さあれー君、一緒にお風呂しよう。大丈夫、なんにもしないから!」
俺はなんでこんな変態とコンビ組んじゃったんだろうなぁ……
発電能力を操る花音は当代随一の能力者。俺たちの元には面倒な事件が次々やってくる。街の平和のため、そして因縁深いとある能力者を捜すため、俺たちは今日も街を駆ける!
「だってれー君、一人じゃ何にもできないんだから!」
ウザヒロイン×異能の現代バディアクション開幕!
【選評】
ユニークな設定とヒロインのウザ可愛いキャラクター性が非常にうまくマッチして、エンターテインメントとしてたいへんよく出来ている作品でした。
異能使いとしてヒロインとタッグを組み、同じく異能使いが起こす犯罪を取り締まっていく現代異能もので、ストーリーはオーソドックスなものですが、軽妙な掛け合いでテンポのよい読み味の仕上がりとなっています。
それぞれの特殊能力や制限も明快かつよく考えられており、バトルでも的確に使用されていて読み応えがありました。能力者をめぐるハウンドドッグ、ストレイドッグといった体制についてもきちんと成立させていて、物語を邪魔しないように描きすぎることなく描かれています。
ストーリーの終盤はそれまで溜めてきたものを一気に開放するかのごとく、痛快で派手なバトルが繰り広げられ、異能バトルものとしても爽快で読後感良く読むことができるものでした。
奨励賞
竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から―
PN. 筑紫一明
【あらすじ】
「この杖、直してもらいます!」
半人前の魔法杖職人であるイクスは、師の遺言により、ユーイという少女の杖を修理することになる。
魔法の杖は、持ち主に合わせて作られるため千差万別。とくに伝説の職人であった師匠が手がけたユーイの杖は特別で、見たこともない材料で作られていた。未知の素材に悪戦苦闘するイクスだったが、ユーイや姉弟子のモルナたちの助けを借り、なんとか破損していた芯材の特定に成功する。それは、竜の心臓。しかし、この世界で、竜は1000年以上前に絶滅していた――。
定められた修理期限は夏の終わりまで。一本の杖をめぐり、失われた竜を求める物語が始まる。
【選評】
雰囲気作りがすばらしかったです。重さや長さ、材質に至るまで設定が詰められている魔法の杖の製作過程や、人種、宗教が細かく設定された世界観など、想像力をかきたてるユニークなファンタジーでした。バトルの一つもなく、それでいてなお面白いという稀有な作品です。
物語の題材は魔法の杖の修理という地味なものながら、非常に“読ませる”話になっていました。なにより、杖職人というニッチな職業に焦点を当てたのが面白いですね。絶滅したはずの竜を探して竜の伝承を辿っていく物語も、ファンタジーで民間伝承ものをするという珍しい手法が、上手く機能していたように思います。竜探しという大規模になりそうな物語を、杖の修理という小さな話に落とし込んでいるところが非常に面白いバランスでした。
不器用なイクスとまっすぐなユーイとのやりとりもほほえましく、楽しんで読むことができました。終盤で明かされる竜の真実、そしてそこからつながるラストが美しいのもポイント。静かで、小規模で、しかし壮大。矛盾するようですが、そんな物語でした。
奨励賞
【配信中】女神チャンネル! え、これ売名ですの!?
(受賞作品「【夕立朱人】 タナトスキッズ 【売名中】」より改題)
PN. 徳山銀次郎
【あらすじ】
『【動画】東京タワーがやばいw』
高校生、朱人(あかひと)は「ドラゴン襲来」の話題に乗り遅れていた。そんな彼の田舎にもドラゴンが襲来。
人気動画配信のチャンスと近づく朱人だったが、美しいエルフに襲われてしまう。異世界の奴らは侵略者だった!
そんな朱人の危機を助けたのは、異世界の女神!?
彼女によれば、異世界転生が女神たちの間で流行り、それを、うっかり話したことで、エルフが攻めてきたのだという。
女神は手を差し伸べる。「一緒に、この世界を救いましょう!」
朱人は叫ぶ。「だいたい、お前らのせいじゃねーかよっ!!!!!」
GA文庫大賞《奨励賞》受賞作、異世界からヤバい奴らがやってくる!
クズと女神のハイテンション・コメディ!
【選評】
ネット配信をする、引きこもりの高校生が主人公。この少年が異世界からやってきた女神と一緒に、女性エルフたちの日本侵略から戦うコメディ作です。
投稿作を読みはじめた時、「こういう作品苦手なんだよなー。あれ? 主人公のクズっぷりはちょっと面白いかも」と思いました。
読み終わってから「……困ったな、面白かったぞ。どうしよ!?」という印象。
数年前にもあったんですよね、こういうの。
「……タイトルから時代小説の気がする。……やっぱかー、ガチじゃんこれ……」と、読み始め、
「……困ったな、面白かったぞ。時代小説テイストだけど」という流れが。
そんなこんなで担当させて頂きました。異世界転生が流行った世界から、女神やエルフやドラゴンなんかがやってくる本作は、ファンタジー世界のコメディが好きな読者層に楽しんで頂けると思っております。
徳山銀次郎先生にお会いして応募の経緯を聞きました。
「○○○文庫さんに人が死ぬガチシリアスの異世界からの侵略ものを書いたら、評価シートで『コメディ作が向いてる』と書かれたのでコメディに書き直しました」
とのこと。(※普通、そんなジャンルごと変える改稿は、しないと思います)
それで受賞した訳ですから、やりますね、○学館さん!
そんな作品が「【配信中】女神チャンネル! え、これ売名ですの!?」。
異世界から女神とエルフとドラゴンなどが日本にやってくるコメディをどうぞ、よろしく!