GA文庫TOP > GA文庫大賞 > 第12回GA文庫大賞(2019年)
GA文庫大賞AWARDS
第12回GA文庫大賞 優秀賞受賞者発表!
おかげさまで第12回GA文庫大賞は前期595作品、後期816作品、合計1411作品ものご応募を頂きました。多数のご応募ありがとうございました!
ここに第12回GA文庫大賞・優秀賞の選考結果を発表させて頂きます。
金 賞
ペンネーム | 作品名 |
宇佐楢春 | 忘れえぬ魔女の物語 |
小田一文 | 貴サークルは“救世主”に配置されました |
銀 賞
ペンネーム | 作品名 |
蒼機 純 | その商人の弟子、剣につき |
アマサカナタ | 竜歌の巫女と二度目の誓い (受賞作品「ヴィーヴル」より改題) |
西山暁之亮 | カンスト村のご隠居デーモンさん ~全てが終わったあとのスローライフ譚~ |
りんごかげき | 俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ! |
※敬称略・50音順
■総評
第12回GA文庫大賞の最終結果を発表いたします。
応募総数は前期・後期合わせて1,411作品で、第11回を上回る応募総数となりました。
みなさまの思いがたくさん詰まった作品をご応募頂き、本当にありがとうございます。
先日、通期最終選考会が行われ、入賞された6作品のうち金賞に2作品、銀賞に4作品が輝きました。
今回の受賞作は、ファンタジーからラブコメまで人気のジャンルが集いました。誰もが知っている定番のモチーフに新しい個性を織りまぜたそこにしかない面白さがあり、どれも編集部が惚れ込んだ作品達です。
金賞を受賞した「忘れえぬ魔女の物語」と「貴サークルは“救世主”に配置されました」は、ともに現代ファンタジーではありますが、作品が持つ雰囲気は実に好対照。令和最初のGA文庫大賞から生まれた、新たな時代を切り開く受賞作です。どうぞご期待下さい!
次回、第13回GA文庫大賞は前期の受付がスタートしています。応募規定を守ってさえいればジャンルは不問です。大賞&金賞はガンガンGAにてコミカライズ確約!
あなたの情熱を是非、作品にしてお送り下さい! 編集部一同、心からお待ちしております。
金 賞
忘れえぬ魔女の物語
PN. 宇佐楢春
【あらすじ】
今年の高校入学式が三回あったことを、選ばれなかった今日があることをわたしだけが憶えている。そんな壊れたレコードみたいに今日を繰り返す世界で……
「相沢綾香さんっていうんだ。私、稲葉未散。よろしくね」
そう言って彼女は次の日も友達でいてくれた。ありふれた普通の友達みたいにそばにいてくれる中、少しづつ縮まっていく距離に戸惑いつつ、静かに変化していく気持ち……。
「ねえ、今どんな気持ち?」
「ドキドキしてる」
それに気づいてしまった頃、とある出来事が起きて――。
恋も友情も知らなかった、そんなわたしと彼女の不器用な想いにまつわる、すこしフシギな物語。
【選評】
誰も知らない無数の今日を知り永遠に近い時間のなかで生きる少女が、初めて出来た友達と少しずつ関係が変わっていく物語。
等身大な少女たちの不器用で繊細な感情をうまく表現しており、まさに受賞作にあたる作品だと確信しました。
友情とは? 恋とは? 初めてできた友人に対して少しずつ芽生えていく「もっと近づきたい。もっと一緒にいたい」という綾香の戸惑いの感情は読んでいてもどかしくも感じ、愛おしく感じてしまいました。
最後はこの理不尽な世界をうまく生かしたオチとなっており、読み終えた後に誰かに感想を述べたくなるそんな作品です。
金 賞
貴サークルは“救世主”に配置されました
PN. 小田一文
【あらすじ】
「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」
自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが……
「えっ、二年間で六部だけ……?」
「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」
「一日三枚イラストを描いて下さい」
「生きた線が引けていません」
即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘厳しくない!?
「自信を持って下さい。きっと売れます」
同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!
【選評】
売れない同人作家のところにやってきた女子高生が、「あなたの手で世界を救ってください」と言い出し、なし崩し的に世界を救うために同人誌をつくることになる物語。
なんのことはない日常のシーンであっても、ページを繰る手をとめさせることのない、軽妙でテンポの良い主人公の語り口が魅力的な作品でした。健気でひたむきなヒロインのヒナも、その説得に徐々にほだされていく主人公も、読者が応援したくなるような等身大のキャラクターとして見事に描かれています。
同人用語など専門的な部分がわからない読者に対してもきちんと配慮されており、しかもその説明も面白い文章になるように考えられているのがよくわかりました。
ストーリー面でも、世界を救うために必要なことがわかってからのスピーディで駆け抜けるような展開に、ぐいぐいと引き込まれます。配置されたエピソードもラストに向かってしっかりと収束していき、読み応えも十分にありました。単なるクリエイターものにとどまらない、多様な魅力を持った非常に完成度の高い作品です。
銀 賞
その商人の弟子、剣につき
PN. 蒼機 純
【あらすじ】
欲には金貨を。願いには勇気を。
だが、金貨で刃は防げない――。
若き商人エドモンドは人外の剣に出会い、【彼女】を助けてしまう。
「吾輩は魔王の剣、ティフィンだ」
美しい女性になった魔王の剣は、商人エドとともに北へ向かう。
「吾輩は再び封印されなければならない。そうすれば魔王の復活を防げ、勇者をこの世界に生ませずに済むのだから……」
だがエドたちの前に現れる凄腕の傭兵少女、そして勇者とその剣……
魔王の剣が、世界の敵となる前に、エドは語り出す。
「俺は商人だ。ここからは楽しい話をしよう。互いが儲かる話を」
そんな、金貨と旅と世界の物語。
【選評】
商人が魔王の剣と自称する人外と出会って、旅をする話です。
妙に人なつっこい魔王の剣の様子に、「人外に関わるべからず」という世界の常識を破り、一緒に行動する商人のエドは街から街へと商材を運ぶ、若き行商人です。
道中で美しい女性の姿となった魔王の剣、ティフィンは永い眠りから覚めたばかりで、馬車にあった干し肉(美味い!)にも、到着した街にも興味津々。
そんな二人の目的は、彼女、ティフィンを封印する――終わりのための旅。
本作を読ませて頂いた時、冒頭から「あ、この作品はいいかも」という読み味を感じました。
キャラクターの細やかな心情描写、伏線を感じさせない巧みな展開と、非常に読みやすく、物語に没頭できる魅力のある作品でした。
ある街の金貨をめぐる商人らしい戦い、魔王の剣と対をなす勇者の剣とその持ち主、勇者との剣戟、いずれのバトルも魅力的な読後感のいいお話でした。
銀 賞
竜歌の巫女と二度目の誓い
(受賞作品「ヴィーヴル」より改題)
PN. アマサカナタ
【あらすじ】
「私を守ってくださいますか?」
かつて幼き騎士ギルバートと誓った約束は呪いへと変わり、竜歌の巫女は名もなき少女となり再びこの地に生を受けた。
少年に裏切られ、全てを呪いながら生涯を終えたこの世界。十二年の月日が経ち、生まれ変わった少女は奴隷として売られそうになっているところ、青年となった騎士ギルバートに拾われる……それは彼女にとって望まぬ再会。ルゼという名前を与えられ、やがて始まった彼の屋敷でのメイド生活。新鮮な日々、暖かい人たちとの触れ合いと久々に訪れた優しい時間は止まっていたルゼの時間をゆっくりと動かし――。
世界を呪った少女と英雄となった騎士。誓い合った二人が、輪廻を超えて再び巡り合う再会と約束の物語。
【選評】
過去と現在、誓いを違えた二人が数奇な運命をたどり再会する物語。
冒頭のシーンから「え? 最初にヒロインが民衆の前で処刑されてる? しかもヒロインの罪じゃないのに?」と物語への引き込まれ方が秀逸でした。
読めば読むほど深みが増していく話で、各キャラクターたちの抱える悩みや信念などが明らかになっていくと、誰も嫌いになれないし、思わず感情が込み上げてしまいました。
キャラクターの因果をうまく繋げて書いていて、演出力は非常に高い作品だと思います。
残酷だけど優しい、そんな美しい物語でした。
銀 賞
カンスト村のご隠居デーモンさん ~全てが終わったあとのスローライフ譚~
PN. 西山暁之亮
【あらすじ】
王都から遠く離れた霊峰の麓にある、古城が見下ろす小さな集落モント村。そこに”救国の国父”と謳われたデーモンの鍛冶屋がありました。
「マスター! ほら起きて下さい!」
のんびり屋のご隠居を叱るのはメイドのヨート。千年前の大戦が嘘のように人や亜人が仲良く暮らす村では、その色香で宮廷中を騒がせた魔女が薬屋を営み、聖獣を一刀両断したドワーフの酒場から名物のシチューの香りが漂っています。ここは伝説に語られる大英雄たちが秘密を抱えて集う「カンスト村」だったのです。
そこに流れ着いた美しき女騎士・アルブレアが見たものとはーー!?
完成(カンスト)のその先を描く心温まる英雄譚がはじまります!
【選評】
ファンタジーの定番の設定をベースにしつつ、穏やかな雰囲気を纏ったデーモンとメイドの少女がメインというところに目新しさがありました。なんといっても、メイドのヨートが可愛い! クールで時々甘えたがりな日常の表情と、ぞっとするような強さを見せる本来の姿どちらも魅力的でした。まわりの村人達も妖艶な魔女やアウトローな神父など個性豊か。それぞれの年齢感や考え方の違いが上手くストーリーに絡んでいて、書き分けのセンスが光ります。村がまるでひとつのキャラクターのように生き生きと描かれていて、本当に楽しい作品です。
序盤ののどかさから一変、村に危機が訪れ徐々に不穏な空気が立ちこめていく展開も、読者を上手く引き込んでいます。
ストーリーの鍵を握る女騎士・アルブレアが、村人達との交流を通して真の強さを求める一途な姿も、丁寧にエピソードが積み重ねられていて好印象でした。カンストは極めた者の証。でもそれは、決して”終わり”ではないのです。彼女が凜々しく笑うラストは、とても気持ちのいい読後感でした。
銀 賞
俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ!
PN. りんごかげき
【あらすじ】
「お前ッ!? いつからギンガちゃんの正体に気づいてた!?」
俺こと、南アズマは電脳アイドル『∞ギンガちゃん』の激推しフォロワー。そんなギンガちゃんの中の人は幼馴染の星夜アゲハなのだがーー
「お前じゃない!……西条院ロコよ」
もう一人の幼馴染・ロコもギンガちゃん推しと判明し、俺たち二人でこっそり応援しようと結託するが!?
「ふふ……心から、愛しあっている」
なぜかアゲハちゃんは俺×ロコが【恋人同士】と勘ちがいしちゃう!?
すれ違う幼馴染たちは本当の友達になり、ギンガちゃんをメジャーにできるのか? これはネットと現実が交差する、ぼっち三人組の交信録。
第12回GA文庫大賞<銀賞>作品。
【選評】
地方の片田舎を舞台にした、高校生三人組による爽やかな青春ストーリー。
小学生の頃から孤立した変わり者として、一括りに除け者扱いされてきた主人公アズマとロコ、アゲハ。彼ら三人のネットと現実での一風変わった交流がコミカルかつ感動的に描かれており、大変魅力的な物語でした。
「話が面白い人」と周囲に評価されたくて、電脳アイドル・∞ギンガちゃんになったというエキセントリックな少女アゲハと、そんな彼女を陰ながら応援するアズマとロコの関係性は大変ユニークに描かれています。その上で、幼い頃から犬猿の仲だったアズマとロコが反目しあいながらも、ギンガちゃんを推していく中で、どんどん距離が近づいていくという展開もキャッチーだったと思います。
現実の学校生活では、ギクシャクしている三人ですが、ネットでの交流は和気藹々とした楽しい会話が繰り広げられ、また現実のアゲハとは違った個性的なギンガちゃんの口調もいいアクセントになって、キャラの魅力を強化できていると思います。
また、単なる電脳アイドルものに留まっておらず、三人が共有している子供の頃の記憶や場所が大切な要素となっており、その思い出がちゃんと三人の心を一つに繋げているという演出も感動的でした。
欲をいえば、アズマたちがギンガちゃんを好きになったシーンや、アゲハが懸命にコンテスト用の動画を制作するシーン、アズマとロコがアゲハにカミングアウトするシーンなど、もっと丁寧に描いて欲しい箇所もありましたが、全体的には共感性が高く感動的な良作だったと思います。