気温どころか気圧まで乱高下する今日この頃。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
GA文庫K村です。
おかげで編集部の年寄りどもは体調を崩しまくって大変難儀しております。
ていうか、外の気温と関係なく、額に汗するほど高温のままの編集部ってなに?
雨に濡れた傘が、机の脇であっという間に乾いていくさまを見ていると、洗濯物を持ち込んだら怒られるかなぁ、とか思わずにいられない。
まあそれはさておき。
第2回GA文庫大賞の最終選考結果が発表となりました。
見事優秀賞となりましたお二人、おめでとうございます。
(https://ga.sbcr.jp/novel/taisyo/02/index3.html)
以下K村的感想など。
【優秀賞受賞作】
「イツカカカセオ!(「踊る星降るレネシクル」に改題)」 D(裕時悠示に改名)
※2010年4月刊行
すまるがかわええ。以上。
と言いたいところですが、それだけだとあまりにアレなので、しかたなく中身について。
K村は基本的に熱いバトルが好物です。
溜まりに溜まったうっぷんを、これでもか! と炸裂させるのが大好きです。
んで、本作はその熱いバトルと熱いギャグとかわいいすまるがこれでもか! とばかりに繰り出されるのですね。
とある事件がきっかけで、ヘタレになってしまった主人公。
コイツが、いろいろ悩みながら、傷つきながら、弟子のすまるとともに、前へ前へと進んでいく姿が実によい。
登場キャラクターのいろんな想いがぶつかり合い、全てを巻き込んで炸裂するラストバトルは必見ですぜ。
あ、もちろん着ぐるみちゃんのすまるもかわええです。
どんなに口では強がっても、本音がほっぺにだだ漏れ、というのが実にいい。
例えば打ち合わせの時、
「いいですね、この原稿。バッチリじゃないですか」
「……編集ちょ? ほっぺに“ボ・ツ”って書いてあるけど?」
「え? あれ? いや、そんなはずは。
あ、いやいやいや、違いますよ、これは、“ツ・ボ”。
ツボにはまっておもしろいなぁ、っていうことです。
最近は横書きを右から読むのが流行ってるんですよ、アラビア文字的に。
ご存じありません?」
「知らねーよ!
あ、今度は“ダメ・ぽ”って出てる!」
これは右から読んでもダメなんじゃね?」
「いやいやいやいやいや、やだなぁ、もう。
それはアレですよ、最近流行のテキスト入力ツール。
ほら、折りたたみのキーボードがカッコイイヤツ」
「それは“ポ・メ・ラ”(怒)」
とかなったらステキだと思いません?(編注:ダメです)
「善意の魔法」弐乃 りくと(海空りくに改名)
タイトルと中身のへだたりっぷりがステキな優秀賞受賞作。
作品自体は実に真っ直ぐな学園ヒロイン異能バトル。
きちんと考えられたストーリー、先が気になる展開、と全体の密度が濃く、非常に楽しめました。
特にK村が惹かれたのは、ヒロイン静馬が登場する、オープニングシークエンス。
オープニングは読者をつかむために一番重要なパートなのですが、そのオープニングでまさかの展開。
読みながら「をを! なんじゃこれは!?」と思わず声が出ましたです。
そのあとの主人公が事件に巻き込まれていく流れ、そこでの振る舞いと決意、隠されていた真相、とこちらも熱い話です。
主人公を遠ざけようとする静馬の真意とは!? 事件の裏に潜む謎の人物とは!?
いろいろ追い掛けていくうちに、怒濤のクライマックスに突き進むのがすごく快感。
ラストでは、ヒロインの静馬の心情がきれいな気付きとともに読み手に伝わってきます。
ちなみに、中身と隔たっている、と書きましたが、タイトルである「善意の魔法」にもちゃんと意味があります。
楽しく、熱く、ちょっとだけ悲しい、そんなお話。
【奨励賞受賞作】
「今日からファミリー(「ふぁみまっ!」に改題)」九辺ケンジ
※2010年4月刊行
メッチャかわいい妹が、宅配便で登場! という衝撃のオープニングで始まる本作。
ところがその妹がマフィアの殺し屋で、でもかわいくて、そこに幼なじみでクラス委員の女の子が絡んできて、というところから話は転がります。
もちろん最後は主人公が兄としてがんばって、という流れになるのですが、とにかく出てくる女の子たちがイキイキとしてかわいく、それだけで何杯もお代わりいけちゃうほど。
超弩級すっぱだか妹ラブコメ(命名:ねこぴょん)として完成度が高く、またその読み口の軽さも新鮮で魅力的でした。
ちなみに、サブリナが「すぃ」と言った瞬間、編集部で「これボクの!」と口走った生き物がいますが、それが現担当とは口が裂けても言いますまい。
「かんなぎ家のひとびと」冬木冬樹
人を幸せにせずにいられない座敷童子の遍(あまね)が、不幸になっている上級生の帯という女の子を自分の家であるかんなぎ家に引っ張り込み、不幸を取り除く、という話。
なんかシリアスっぽいと思ったあなた、大間違い。
なにしろ登場するかんなぎ家の面々というのが、
・どこまでも突っ走るブレーキの壊れたボケの超特急、一応長男の遍
・遍に振り回されつつ家族で唯一の突っ込み係、チワワで犬神でゴスロリメイドのハナ
・長女でいつも目を閉じていて、喪服姿の百目鬼めーちゃん
・唯一の人間なんだけど、戦闘力は妖怪以上の11歳、いつでも巫女服巨乳少女の珠樹
とまあ、何がなんだかわからないくらい混沌とした陣容。
このメンバーに、“孤独系不幸”の帯ちゃん、ボケをスルーされ続けて“徒労系孤独不幸”になってしまった愛ちゃんが絡んで、会話が大変な混沌っぷり。
いやもうね、読んでビックリしたのよ。
それまでの冬木さん作品と全然違ってて、会話会話会話、とにかくボケボケボケ、それに対するツッコミツッコミツッコミ。
そもそもK村の中の座敷童子っていうのは、おとなしくってかわいくって、目を向けるといなくなって、まあおかっぱ頭の女の子? みたいな影の薄い存在だったんですが、本作の遍は全然違う。
何というか、ここまでボケ倒す座敷童子、というのは初めての経験。
ボケとツッコミの勢いに流されて、気が付くと最後のページまで読み切ってます。
そして、この冬木冬樹さんですが、つい先日発表された第6回MF文庫Jライトノベル新人賞で、
「魔法少女☆仮免許」
「狐の百物語」
の2本が佳作を射止めました!
なんとW受賞。
しかもGA文庫大賞と併せて3本同時。
あちらとこちらで改稿やらなんやら忙しくなると思いますが、まずはおめでとうございます。
とまあ、こんな具合で個性際だつ4本が第2回GA文庫大賞で世に出ます。
既に刊行となっている作品も、まだこれからがんばる作品もありますが、みなさまぜひ読んでみてくださいませ。