一問一答 その7

 コタツで熟睡するのが幸せ満開な今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。GA文庫K村です。
 とは言え、コタツでガチ寝するとノドと鼻がかぴかぴになりますので、よい子のみなさんはあまりマネしない方がよいと思われます。
 インフルエンザも流行ってるしね!
 というわけで、久しぶりの一問一答。ついにその7まで来てしまいました。
Q:応募作を書くとき、整合性をきちんと見せるために設定を全部出しておきたいのですが、「話が終わっていない」「続編ありきに見える」などと言われてしまいます
 出さない方がいいのでしょうか
A:実はこれ、似たような質問をいくつか頂いています。
 まあ結論から言いますと、
“設定を出しきっていてもそうでなくても、読者が最後まで楽しんで読めればOK”
というだけなのでありますが。
 例えば作品を読み終えたとき、読者が楽しんでいたとすれば、
・設定をすべて出しきった
 → 世界観や背景などが過不足なく説明されている
 → 満足
・設定やキャラクターに見えていない部分がある
 → この先が気になる or あのキャラクターがどうなったのか知りたい
 → もっと読みたい!
などとなるはず。
 それがそのように取ってもらえず、
・設定をすべて出し切った
 → 興味のない設定話をたんまり読まされた
・設定やキャラクターに見えていない部分がある
 → 話が尻切れすぎて満足感がない
 or
 → どうしてこうなったのはさっぱりわからない
などとなるのであれば、それは失敗。
 大切なのは、
・書き手としての自分が“書いておきたいから書く”
ではなく、
・読者が楽しむために書く
or
・読者を楽しませるために書く
という目的意識です。
 ここで勘違いしないで欲しいのは、
・読者が楽しむために書く
は決して
・読者が楽しむために“必要だからその設定を”書く
ではない、ということです。
 例えば設定に関しては、作中で起きている現象やキャラクターの行動に合理的な説明を付けるための必要情報、という定義をすることができます。
 当然書き手としては、まずそこを理解してもらった方が、そのあとの物語展開が楽。
 すなわち、
・読者が楽しむためにこの情報は必要なんだ
 → だから書かねばならぬ
というロジックです。
 でもこれって言い換えると、
・この物語を楽しむために、みなさん予習してください
って言ってるのと同じなんです。
 予習をしないと楽しめない物語ってあまりよろしくないと思いませんか?
 それを読者に強いるのって、よろしくないと思いませんか?

 もちろん作品やジャンルによっては、設定を読み解く楽しみがメインとなるものもあります。
 むしろキャラクターを動かすより、設定を書いた方が楽しんでもらえる読者層、というのも存在します。
 その場合は、堂々と設定を書き連ねるべき。
 キャラクターを動かしたりイベントを起こす前に、設定をバリバリ書くべき。
 または、設定をさらりと書くことで、
「を、じゃあここから何が起きるんだ」
と興味をかき立てる。
 実はうまい人は、そのへんをナチュラルにやってのけます。
 が、応募者のみなさんには、ぜひキャラクターを動かすことを大切にして欲しい。
 まずキャラクターを動かして、
「お? これは何が起きているんだ?」
と読者を引きつけたい。
 説明はそのあと。
 逆にキャラクターとその行動に興味を持ってもらえれば、その背景にだって興味が湧くはず。
 そこでうまく設定を入れるようにすれば、
「あ、なるほど」
と思ってくれる。
 または、キャラクターの会話や行動から設定がわかるようにうまくこなしていく。
 そのへんにきちんと注意を払って書かないと、なかなか読み手に満足感を与えることはできないんじゃないかなぁ、と思うわけなのであります。
 ちなみにこれはK村の個人的な感触なのですが、応募者のみなさんの中には、キャラクターを動かすより、自分の中にある設定や情景描写を書く方が楽だし楽しい、というケースがあるように見えます。
 つまり、設定や情景の描写は、頭をそれほど使わずにすらすら書ける、だから書いていて気持ちいい、というパターン。
 ところがこれ、書いている方は気持ちいいかもしれないんですが、受け手がそれを読んで面白いかどうかは、全然別。
 応募原稿で言えば、冒頭がこうした情景描写や設定の説明で始まっているものが結構目立ちます。
 でもこれ、書き手が雰囲気に酔っているだけだったり、書きやすいところから書いているだけなんじゃないかなぁ、と思うことがあるんですね。
 冒頭は、読者を作品に引っ張り込むためにもっとも大切な場所です。
 ここでメインキャラクターを出してとにかく動かす。
 そのアクションで読者に
「を!? これは!」
と思わせる。
 そのうえで、必要であれば説明を加える。
 この順番であれば、そこで書かれた情報は“読者が知りたいと思っていた情報”です。
 であれば、読んでくれる。
 むしろ読者の“知りたい”が満たされるのであれば、それはおもしろい、に通じます。
「をを、なるほどそういうことか」
というヤツですね。
 でも、興味があるかどうかわからない情報を先に読め、と言われたらそれは苦痛。
「なんだよこれ、興味ないよ」
と思われたらアウト。
 その一カ所のせいで、作品全体に対する興味がなくなってしまうかもしれません。
 もちろんケースバイケースですし、同じような流れでも書き方によって読者に与える印象は変わってきます。
 でもどちらにしても大切なのは、
“全てのパートにおいて読者を楽しませようとする”マインド。
 自分の作品に向かうとき、少しだけそのへんを考えて頂けると幸い。
 というわけで、今回はこのへんで。
 さあ、応募原稿の山に戻るぜ~~~~~。