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GA文庫大賞AWARDS

結果発表

第15回GA文庫大賞 受賞者発表!

おかげさまで第15回GA文庫大賞は前期743作品、後期877作品、合計1620作品ものご応募を頂きました。多数のご応募ありがとうございました!
ここに第15回GA文庫大賞の選考結果を発表させて頂きます。


大 賞

ペンネーム 作品名
志馬なにがし 透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。
(受賞作品「東京夜花」より改題)

銀 賞

ペンネーム 作品名
鏑木ハルカ ドラゴンズロアの魔法使い~竜に育てられた女の子~
(受賞作品「ドラゴンズロアの魔法使い」より改題)
零 雫 不死探偵・冷堂紅葉 01.君とのキスは密室で
(受賞作品「君と最後のキスをする」より改題)
織島かのこ ビューティフルワールド
泰山北斗 路地裏のシアンエラン

※敬称略

■総評
 お待たせしました。第15回GA文庫大賞の最終結果発表です。

 前期・後期あわせて応募総数1620作と多数の応募をいただきました。皆さまの力作をGA文庫大賞にご応募頂き、誠にありがとうございます。
 さて先日行われました通期選考会にて、応募作1620作品の中より、《大賞》1本と《銀賞》4本の受賞作品を選ばせていただきました。

 今回は「東京夜花」が《大賞》を受賞し、第11回の「処刑少女の生きる道(バージンロード)」以来、じつに4年ぶりの《大賞》作品になります。

 栄えある《大賞》を受賞した「東京夜花」は、東京を舞台に大学生活での出会いを描いた青春小説。大学生の主人公が新入生歓迎会で出会った、とある秘密を持ったヒロインと関係を深めていく物語を描いた本作は必ず読者の皆様の心に残る一作となると思います。
《銀賞》作品の4タイトルはファンタジー、ミステリ、学園アクション、青春ラブストーリー等ジャンルも様々でバラエティに富んだラインナップとなっており、飽きさせないことをお約束します。
《大賞》作品はもちろんですが、どのタイトルも読者の皆様にご満足いただけるよう制作、改稿作業を進めておりますので、ぜひ発売まで楽しみにお待ちください。

 次回、第16回GA文庫大賞は前期の受付がスタートしています。リニューアルに伴い様々な施策をご用意し、GA文庫大賞にとっても飛躍の年となります。
 応募規定を守っていただくのはもちろんですが、王道のファンタジー、ラブコメなどそのほかのジャンルも縛りはございませんので、多種多様な作品を求めています。
 皆さまの「一番」を凝縮した作品を編集部一同、心からお待ちしております。

大 賞

透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。
(受賞作品「東京夜花」より改題)

PN. 志馬なにがし

【あらすじ】

「打上花火、してみたいんですよね」
 花火にはまだ早い四月、東京の夜。
 内気な大学生・空野かけるはひとりの女性に出会う。名前は冬月小春。周りから浮くほど美人で、よく笑い、自分と真逆で明るい人。話すと、そんな印象を持った。最初は。
 ただ、彼女は目が見えなかった。
 それでも毎日、大学へ通い、サークルにも興味を持ち、友達も作った。自分とは違い何も諦めていなかった。
 ――打上花火をする夢も。
 目が見えないのに? そんな思い込みはもういらない。気付けば、いつも隣にいた君のため、走り出す――
 ――これは、GA文庫大賞史上、最も不自由で、最も自由な恋の物語。

【選評】

 何度も読み返したくなる――そう強く心に焼き付いた、4年ぶりの《大賞》受賞作品です。
 舞台は東京・月島。東京湾に注ぐ隅田川に近い海辺の街。主人公・空野かけるが大学の新歓コンパで冬月小春という目の見えないヒロインと出会うシーンから始まります。
 大学生らしい飲み会のガヤガヤした雰囲気は、導入としては定番ですが、実際に自分がその場にいるかのような臨場感溢れる筆致で描かれており、読者を一気に物語に引き込む力を持っていると感じさせます。
 また、実在する東京の風景が解像度高く、色鮮やかに捉えられていました。自分が知らない街でも、まるでそこに吹く海からの風の匂いやぬるさまで肌身で感じられるような、想像力が掻き立てられる文章です。季節とともに移りゆく景色のなかで、変化していくキャラクターの関係性や心情がより魅力的に映りました。
 そして、本作を評価するうえで絶対に外せないのがヒロイン・冬月小春の存在です。目が見えないというハンディキャップを背負いつつも、明るく自由奔放に生きる彼女の姿に非常に心を打たれました。さらに、最初に目が見えない彼女を見たときの主人公のリアルな心情に、殴られたかのように感情を揺さぶられました。「大変そうだ」とどこかで勝手に決めつけて考えてしまう自分がいて、それに気が付き自己嫌悪に陥る――もし自分が主人公の立場だったらどうだろう……と痛いほど感情移入してしまいます。
 解像度の高い描写のなかで、キャラクターの心情変化を繊細に捉えつつ、クライマックスにもしっかりとエンタメ的な仕掛けが用意されており、一つの物語としてもレベルの高い作品です。
 ただ、編集部で大きく意見が分かれたのも事実です。ライトノベルとして相応しいのかという議論から始まり、15年という歴史を紡いできたGA文庫大賞のなかで、異色の作品となることは間違いなく、決して満場一致で《大賞》に選出されたというわけではありませんでした。ですが、この作品だからこそGA文庫大賞として新しい挑戦ができ、それに耐えうるエンタメ性をも備えた作品であることには間違いがない、と何度も議論を重ねた結果、今回《大賞》に選出されました。
「ダンまち」、「処刑少女」に続く、“ファンタジー”ではない“恋愛小説”として初の《大賞》受賞作品。
 発売まで楽しみにお待ちください。

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銀 賞

ドラゴンズロアの魔法使い~竜に育てられた女の子~
(受賞作品「ドラゴンズロアの魔法使い」より改題)

PN. 鏑木ハルカ

【あらすじ】

 人外魔境の地でドラゴンに拾われ、すくすく育った女の子ティスピン。
 精霊魔法の習得のために王都の学校へ通うことになるのだが……
「二人ともついてきちゃうの!?」
 父ラキ。世界最強の滅界邪竜。母スピカ。創世神の御使い竜。
 過保護すぎる親ドラゴンたちは、可愛い娘ティスピンと一緒に人間の街へお引越しです!
 でも、破格のドラゴンに育てられたティスピンですから、心配ご無用の最強少女に仕上がっちゃってますよ?
「魔獣を一撃で……!」 「何者だ、あの娘!?」 「人前で竜気を放っちゃだめよ?」
 王都で様々な出会いを経験し、誰よりも優しい『ドラゴンズロアの魔法使い』になっていく。
 これは大きな竜の小さき愛し子ティスピンがめぐりゆく、勇気と成長のドラゴンファンタジー!

【選評】

 ドラゴンに育てられた女の子が精霊魔法習得のために人間の国に行く――ただし、過保護で娘大好きな親役のドラゴンたちもいっしょについてきちゃって!? というユニークな導入に引き込まれたかと思ったら、流れるようにつながっていくイベントの数々に引っ張られてあっという間にクライマックスまで楽しく読めてしまう。そんなリーダビリティの高さと主人公ティスピンの可愛らしさが光る秀作ファンタジーでした。
 強すぎるドラゴンとしての力をおさえつつ、文化も習慣もちがう人間の世界に平和的に溶け込んでいこうとするカルチャーギャップの物語としても楽しめ、異種族の相互理解を自然と応援したくなる、やさしい読み味も魅力でした。
 世界最強のドラゴンにたっぷり愛されて育てられた、竜の愛し子ティスピンの物語にぜひご期待ください。

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銀 賞

不死探偵・冷堂紅葉 01.君とのキスは密室で
(受賞作品「君と最後のキスをする」より改題)

PN. 零 雫

【あらすじ】

 謎の美少女・冷堂紅葉が転校してきた高校二年生の夏の日、クラスメイトが体育館で殺された。密室殺人だった。
「私たちで事件を解決しましょう、天内くん」
 文芸部に所属する俺・天内晴麻は、なぜか転校生の彼女に事件の調査を依頼される。
――ミステリ小説の主人公みたいだ、と俺は思った。
 そして冷堂も殺された――はずだった。誰にも解かれることのない究極の密室で。
「私を殺した犯人を見つけて下さいね――探偵さん」
「……冷堂の方が俺なんかよりよっぽど探偵らしいよ」
 不死探偵と“普通”の相棒。奇妙な二人は時に推理し、時に死にかけながら真相に迫っていく。
 再現不可能な殺人事件に挑む学園ミステリー、開幕――!

【選評】

 不死身の転校生・冷堂紅葉と、その相方に選ばれたとある特殊能力を持つ主人公・天内晴麻。奇妙な関係性の二人が密室殺人の謎を解く学園ミステリです。
 粗削りながらも、ライトノベルの文脈で真っ向からミステリに挑戦した内容であり、選考時には最後まで目が離せず一気に読み終えました。
 本作の探偵である主人公達は他の人にはない能力を持っています。一歩間違えれば推理で興覚めする危険性がある設定も、物語を面白くするスパイスとして活かした所はお見事。
 また、ミステリアスな美少女と学校生活を共に過ごすことになった晴麻を羨ましく思いつつ、事件解決に向けて協力する中で距離が縮まる過程が丁寧に描かれていると感じました。
 特別な二人だからこそ出来る謎解きも、二人の特別ではない青春も堪能できる作品です。
 読者の皆さまも不死探偵と一緒に疑い、検証し、時にはドキドキしながらお楽しみください。

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銀 賞

ビューティフルワールド

PN. 織島かのこ

【あらすじ】

 京都のボロアパートに住む冴えない大学生・相楽創平。彼の家の隣には、やたらと目立つ美人の女子大生が住んでいる。同じゼミ所属のキラキラオシャレ女子・七瀬晴子。創平の高校の同級生である彼女には、創平だけが知る秘密があった。それは――大学デビューに成功したすっぴん地味女だということ。
「好きでやってるんだけど。でも、たまに申し訳なくなる。本当のわたしはこんなんじゃないのになあって」
 秘密を共有するうちに自然と距離が近づいていく二人。しかし、文化祭で大事件が起きて――?
 ありのままではいられない? 冴えない地味男と養殖キラキラ女、等身大の二人の青春ラブストーリー!

【選評】

 創平と晴子、二人の遠いようで近い関係性が絶妙で、読んでいて甘酸っぱい気持ちになる作品でした。
 本作の強みは、なんといっても心理描写のリアルさ。とにかくメイン2人のキャラ立てのうまさが際立つ作品なのですが、とくにヒロインの晴子にまつわる描写の解像度の高さは特筆もの。年代が大学生ということもあってか、思考にいい意味で生々しさがあり、そこが共感ポイントとしてうまく機能していました。ライトノベルの従来のヒロイン像から一歩踏み出した、新たな価値観を感じさせてくれるキャラクターに仕上がっていたように思います。
 また本作は、メイン2人以外にも多数登場するキャラクターたちに無理のない動きをさせながらも、読者が期待するであろう展開もしっかりと押さえてある、全体的な完成度の高さが光る作品でもありました。各種設定を無駄にせずに自然なかたちで展開に組み込むことに成功しつつ、きちんと読者のほうを向くことを忘れず、エンタメ感ある物語としてまとめることができていたように思います。さじ加減を間違えると読者の反感をかいそうなシーンでのヘイトコントロールにも長けており、高いレベルでバランスがとれた、著者のたしかな力量を感じさせてくれる作品でした。
 京都の街を舞台に、大学生たちの一筋縄ではいかない青春模様が描かれる本作、どうぞご期待ください。

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銀 賞

路地裏のシアンエラン

PN. 泰山北斗

【あらすじ】

 地図にも載らない部外者立ち入り禁止の埋め立て島に存在する特殊職業訓練学校・紫蘭学園。そこは行き場を失くした訳ありの少年少女が集められる防衛省特殊作戦軍の秘匿組織であった。
 潤は付き従うマスターの護衛役として、海外でのテロ鎮圧作戦に加わっていた。手際の悪い上層部に業を煮やして単独でテロを鎮圧するが、その結果として紫蘭学園への左遷を言い渡されてしまう。
「オーダーとあらば、戦場だろうと学園だろうと何処へだって行ってやる。それが一介の道具であるオレの役割だ」
 そんな彼の前に待ち受けていたのは、腕は確かだが性格に一癖も二癖もある少女たちで――。
 最強のエージェント×問題児少女たちが送る、新時代の学園ヒロイックアクション! ここに開幕!

【選評】

 マスターの道具として戦場を渡り歩いてきた少年が、複雑な事情を抱える少女たちが集う学園に編入することから始まる学園アクション。
 この作品の最も特筆すべき点を挙げるとするなら、主人公の格好よさでしょう。
 射撃や格闘技など、戦闘において無類の強さを誇りながらも、戦場で生まれ育ったためにどこか常識が抜けている潤。
 彼のキャラクターがとにかく魅力的で、その活躍に熱く引き込まれながら物語を読み進めることができました。
 また舞台とされている特殊な学園の設定、三者三様の個性的なヒロイン、軽妙な会話劇など、学園ものとしても心躍るものとなっており、現代の読者の求めているものをしっかりと提供している作品であったと思います。
 新しい時代のヒーロー・潤の、学園での活躍にご期待ください。