「世界樹の迷宮3」が行き詰まってもにょもにょ、という話を前に書きましたが、そしたらそれを読んでいた某新人くんがなんとっ! 「世界樹3雷竜攻略」なるステキなファイルを送ってくれました!
 聞くところによると、彼はもうすでに雷竜を倒してしまったとのこと。
 ファイルを覗くと、そのときのパーティ構成とかお役立ちスキルがみっしり。
 やったぁぁぁぁぁぁあ! これで勝つる!
 レベル上げるぜぇぇぇぇ!
 というわけで、賞を受賞したばかりの新人さんにゲームの攻略を教わる、という大変アレな日々を送っている今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 GA文庫K村です。
 実のところ「世界樹の迷宮3」は諦めかけて、「ドラゴンクエストモンスターズジョーカー2」に逃避していたんですが、これでもう一度あっちのダンジョンに潜ろうか、という気になりましたですよ。
 ありがとう!
 それはさておき、第3回GA文庫大賞前期の締切が終わったところで、応募者のみなさまに、軽くレクチャーであります。
 いや、もちろん
「こんなの分かり切ってるじゃん!」
という人もいるでしょうし、
「それ、おかしくね?」
という人もいるでしょう。
 スタイルの問題、というのもありますし、以下が絶対である、とは言いません。
 まあひとつの指針というか、こういう考え方もあるよ、くらいに捉えてもらえれば。
 さて本題。
 今回は“演出意図”について。
“演出”とは、あるシーンを表現するにあたって、それを効果的に見せるための工夫、であります。
 言い換えると、そのシーンが受け手に与える感情や印象を制御したり、またはそのシーン全体の雰囲気をコントロールしたり、ということになりますでしょうか。
 例えば、必殺技が炸裂するシーンにおいて、その技がいかにすごいかを受け手に見せたい!
 という目的があるなら、そこを目指して原稿は書かれます。
 それがうまくいっていれば、受け手はそのシーンを読んで「すげぇ!」となるでしょうし、失敗すれば「なんかツマラン」となる。
 ここで大切なことが2つあります。
 まずひとつめ。
 演出とはすなわち、受け手の印象を操作することです。
 そして、現象と印象は無関係ではありませんが、本質的に別のものです。
 すなわち受け手の印象は、描かれている現象と必ずしもイコールではありません。
 これを理解してください。
 言い換えると、すごい現象が発生しているからといって、受け手がそれを“こりゃすげぇ”と受け取ってくれるとは限らない。
 書き方を間違えると、実際にはすごいことが起きているんだけど、読んだ印象としてはたいしたことが起きているようには取れない、ともなりかねない。
 逆に、客観的に見るとなんてことのない現象しか発生していないのだけれど、受け手にはそれがすごいこととして見える。
 こういうことが普通に発生します。
 その意味では書き手の力量がいちばん発揮される部分ではあります。
 次が、こうした演出意図について、常に意識的でなければならない、ということ。
 そりゃそうです。
 だって、起きている現象と受け手の印象がイコールじゃない以上、書かれているシーンにとって大切なのは、そこで発生している現象ではなく、その現象やキャラクターの反応から導き出される受け手の印象、となるわけですから。
 現象や事実は、物語を進める上での必要情報です。
 そこから導き出される印象は、受け手が感じ取る感情そのものです。
 おもしろいと感じることができるのは、情報ではなく感情です。
 大ざっぱに切ってしまいましたが、この違いを肝に銘じてください。
 事実だけなら年表やフローチャートで十分。
 それをあえてキャラクターを立て、ドラマを作り、小説となす。
 その意味を考えてください。
 ところが、応募作に関して言うと、この2つができていない原稿が多い。
 なんでかというと、そこで起きていることを書かなければシーンはできませんが、演出意図がなくても文章としてのシーンは書けてしまうから。
 このへんが、文章だけで全てをやらなければならない小説と、コミックやアニメなどのビジュアル媒体との違いです。
 例えばマンガなら、演出意図がなければおもしろいネームが書けません。
 仮にキャラクターが登場するシーンがあったとします。
 ではそれが4段ぶち抜きなのか、小さなコマなのか、どんなポーズ、どんな表情で出てくるのか。
 そのときに重ねる背景処理は、擬音は、まわりのリアクションは。
 そうしたもろもろの要素が全て演出という一点に集約します。
 どういう風に見せたいのか、が問われるわけですね。
 なので、ネームを見ればそのシーンがどういうシーンになるのか、おもしろいかどうか、そういったことがわかってしまう。
 ところが小説では、全てを文章でやれてしまうがゆえに、ネームを切る、とか絵コンテを切る、といった演出を意識するようなステップが作業上存在しない。
 ここがデッカイ落とし穴。
 その結果、先の例で言うと、キャラクターを出す、という物語上の都合に意識が集中してしまい、“どんな風に出したいのか”“どんな風に見せたいのか”がおざなりになることがある。
 こういう原稿は、新人賞で言うとなかなか上に進めません。
 文章は書けているから、1次は突破する。
 ストーリーも流れているから、2次くらいはいくかもしれない。
 でもそこから先になかなか進めない。
 そんな人は、この演出を意識してみるといいかも知れません。
 具体例で言うと、ヒロインを最後に死なせる話があるとします。
 大切なのは、ヒロインを死なせるという事実ではなく、ヒロインの死によって受け手にどんな感情を与えたいのか、のはず。
 泣かせたいのか、それを受けて主人公を怒らせたいのか、余韻を残して終わらせたいのか。
 そういった感情的な効果を目指してヒロインを死なせるはず。
 そこを忘れないでください。
 さて、それではこの落とし穴に落ちないためにはどうするか。
 よほど細かくシーンを刻んだプロットでも作らない限り、原稿を書く前の段階でいちいち設定するのは難儀です。
 もちろん、絵コンテのように枠を切り、シーンごとに演出意図を書き込んだ“字コンテ”を作成、それに沿って書く、ということも可能ですが、恐ろしく手間がかかるうえ、書き手のスタイルによってはまったくうまく行かない可能性が高い。
 であれば、書きながら意識するしかない。
「このシーンはどうあるべきか。何を読者に与えるシーンなのか」
 そういったことを常に意識する。
 そして大切なのは、書き上げた後。
 読み返しながら、それぞれのシーンが情報の羅列になっていないかチェックしてみる。
「あれ? このシーンでやりたいことってなんだったっけ?」
という疑問が出てきたら、埋もれてしまった演出意図を掘り起こし、それがちゃんと受け手に伝わるように修正を施す。
 場合によっては、シーンごとザックリ削除してみることも大切です。
 長々と書いてしまいましたが、この“何を書いているのか意識する”というのは、小説を書く上で意外と重要だったりします。
 今回は演出についてですが、物語ってなに? とかおもしろいってなに? とかそういうもっと大きなところにまで踏み込んで考えてみるのもいいでしょう。
 きっと原稿のレベルが上がると思いますよ。

 前巻の「戦塵外史 四 豪兵伝」から、約2年半。待望の戦塵外史シリーズ最新刊「戦塵外史 五 ―戦士の法―」がいよいよ6月に発売となります!
 物言わぬ大男と、過酷な運命を背負った少女の、奇妙な旅の結末は……!?
 重厚かつ骨太でありながら、人間の機微を穿つような繊細な描写も同居する……そんな花田ワールドをぜひぜひ心行くまでご堪能ください。
 今回は戦塵外史シリーズ初の長編書き下ろしで、読み応えもばっちりですよ。
 そしてこれまでのシリーズでもおなじみの、あのキャラクターの登場も!? あ、これは読んでからのお楽しみですね。
 さて今回は「戦塵外史 五 ―戦士の法―」の発売を記念して、メインキャラのデザインラフを特別公開! 廣岡先生の手によって生き生きと命を吹き込まれた彼らを、ぜひじっくりとご鑑賞ください。

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 5月25日に大迫先生が逝去されてから、一週間が経つ。
 レーベル立ち上げの時からずっと担当させていただき、
いろいろなことを教わってきた。
 読ませていただいた原稿のひとつひとつが、自分にとって勉強だった。
 改稿のたびに原稿がブラッシュアップされていく、
その様子は驚きの連続だった。
 まだ自分のなかでも気持ちが整理できず、言葉がでない。
 ここに、GA文庫での足跡を記し、深く哀悼の意を表するばかりである。

GA文庫における大迫純一先生の著作一覧
●神曲奏界ポリフォニカ ブラックシリーズ
神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック 2006年6月刊行
神曲奏界ポリフォニカ サイレント・ブラック 2006年8月刊行
神曲奏界ポリフォニカ プレイヤー・ブラック 2006年12月刊行
神曲奏界ポリフォニカ トライアングル・ブラック 2007年3月刊行
神曲奏界ポリフォニカ レゾリューション・ブラック 2007年7月刊行
神曲奏界ポリフォニカ ペイシェント・ブラック 2007年10月刊行
神曲奏界ポリフォニカ メモワーズ・ブラック 2008年2月刊行
神曲奏界ポリフォニカ リライアンス・ブラック 2008年7月刊行
神曲奏界ポリフォニカ アイソレーション・ブラック 2008年10月刊行
神曲奏界ポリフォニカ リベレーション・ブラック 2009年1月刊行
神曲奏界ポリフォニカ アドレイション・ブラック 2009年5月刊行
神曲奏界ポリフォニカ プロミスト・ブラック 2009年8月刊行
神曲奏界ポリフォニカ アドヴェント・ブラック 2009年11月刊行
●ゾアハンターシリーズ
ゾアハンター 2007年9月刊行
ゾアハンター2 2007年12月刊行
ゾアハンター3 2008年3月刊行
ゾアハンター4 2008年6月刊行
ゾアハンター5 2008年9月刊行
ゾアハンター6 2009年2月刊行
ゾアハンター7 2009年6月刊行
●神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクターシリーズ
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 2007年11月刊行
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター2 2008年5月刊行
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター3 2008年11月刊行
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター4 2009年4月刊行
●神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・ゴールドシリーズ
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・ゴールド 2009年10月刊行
●神曲奏界ポリフォニカ まぁぶるシリーズ
神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる
※ブラックシリーズ書き下ろし短編収録
2007年1月刊行
神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる2
※ブラックシリーズ、レオン・ザ・レザレクターシリーズ書き下ろし短編収録
2008年1月刊行
●GAマガジンVol3 特別付録
神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる すぺさる
※ブラックシリーズ書き下ろし短編収録
2009年12月刊行

雨だとやる気がマイナス200%な えむもと です。
たぶん前世はカメハメハ大王なんだ!<偉そう。
もっとも晴れていたらいたで、室内で仕事に励むのが虚しくなってきたりするので
雨降りの時は引きこもって、おとなしく仕事していればいいのかもしれませんが。
そんな訳で、これから来る梅雨を思うと気が滅入る日々です。
あー。常春の国に住みたい!
長雨の無いところに住みたいっ!!
(でも砂漠はいやだな……<わがまま!)
……とダメダメな気分を吹き飛ばすための気晴らしは、
ここのところもっぱら映画鑑賞です。
レンタルDVDを借りる……って手もあるんでしょうが、
自宅で観ていると、どうにも落ち着かないし雑念が入っちゃうので、
可能であれば映画館で観る方が集中できて好きです。
ということで、手当たり次第、気分次第で観賞中。
最近だと
「かいじゅうたちのいるところ」
「シャーロック・ホームズ」
「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」
「アリス・イン・ワンダーランド」
「ダレン・シャン」
「TRIGUN」
「劇場版TRICK」
「仮面ライダーTHE MOVIE 超・電王トリロジー」
……あとなんか観た気もしますが……忘れた。
我ながら統一感が、あるような、ないような。
まぁでも偏ってはいますよね。ええ。
個人的には「ホームズ」が大変面白かったです!
2回も観に行っちゃいましたから。
原作ファンは怒りそうな大胆なアレンジが、むしろ新しくて良かったと思います。
頭脳派じゃなくて、肉体派になってましたからねー。
モリアーティ登場の次作も今から楽しみではありますが、脚本が違う方なんですね。
そこの所だけ、ちょっと気になりますが。
そして、大胆アレンジと言えば「アリス」。
基本のお話は誰もが知っている「アリス」ベースなのでありますが、
そもそものヒロインが「少女」というにはちと厳しい年齢のアリスでいいのかっ!?
ルイス・キャロル先生が生きていたら絶対却下だろうなぁ。
……なんて思っちゃいました。
だって、幼少時のアリスを演じた役者さんが、なんというか「超美幼女」だったんですよ!
こっちの「アリス」で良かったんじゃないのっ!?
っていうか、こっちの子でむしろ観たかったよ?
いやまぁ自分的はジョニー・ディップ好きなので観に行ったようなものなので、
どっちでも良いと言えば、良いのですがね――。
あと、ベリーソースを口に付けたカエルがめっさ可愛くて愛おしかった――!
しかし、最後のバトルは取って付けた感がどうにもありましたなぁ。
「ホームズ」にしろ「アリス」にしろ新しい解釈で、有名な物語を描いている作品は
「あーこういう切り口にしたんだ!」と、ちょっぴりドラマづくり(!?)というか
作品の味つけの仕方というか、そんな勉強にもなりますね。
――と自分だけ気分をリフレッシュした所で、原稿読みに戻ります。

「神曲奏界ポリフォニカ ブラックシリーズ」「神曲奏界ポリフォニカ レオンシリーズ」「ゾアハンターシリーズ」などの著作で活躍されていた作家、大迫純一氏が、病のため5月25日に逝去されました。
多数の作品で読者を魅了し続けた故人のご冥福を、深く心からお祈り申し上げます。

GA文庫編集部